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緒沢タケル編14 冥府の王ハデス 暴かれた秘密

それは唐突に。


朝になった。

朝日が昇る・・・というシチュエーションが存在する地下世界ではないが、

擬似太陽が輝きを増すにつれ、気温が上がり始める。

それまでの冷たい空気が暖められて、辺りに霧が発生しているようだ。

ここに至るまで何回か見た現象である。

その霧の中を、何台もの馬車の一団が駆け抜けてゆく。

いわずと知れたスサの一団である。

ヘファイストスのテメノス、パキヤ村には、

彼や村人たちの手による馬車が何台も作られており、

それを牽く馬などの家畜も豊富だ。

そのヘファイストスを助けに行くというなら、村人たちは助力を惜しむはずもない。

もっとも、これらの馬車もいつまでも乗り続けているわけにもいかない。

目的地、ハデスのテメノスであるメタパは、

高低差の激しい丘陵地帯となっていて、

馬はともかく馬車が乗り入れられるのは大通りまでだ。

それでも、ここまで徒歩で行軍を続けていたスサにとってはありがたい。

特にカラダを酷使しているタケルにとってはなおさらだ。

 

 

 「タケルさん、足の具合はどう?」

途中、泉がわいている場所があったので、馬たちを休ませるのと同時に、

スサのメンバーも馬車から降りた。

タケルの傷を心配してマリアが寄ってきたのだ。


 「ああ、昨日から冷やしてましたからね、

 どってこたぁないよ。」

他にも火傷や切り傷が無数にあるはずなのだが、

タケルにとっては戦闘に影響しないと判断したのだろう。

膝を痛めていることについても、

長期戦にならなければ問題ないとタケルは考えていた。

 「大体、今度の場所はハデスって奴が治めてるんだろ?

 どんな能力かわかるかい?

 冥界の支配者っていったって、何のことだかわからねーよ。」

 「そうですね、サルペドンなら少しは・・・。」

と、言いかけてマリアは口をつぐんだ。

彼女の視界に、招かれざる訪問者が映っていたからだ・・・。

 

 

 「俺が教えてやろうか?」


不意に聞こえてきたその声と、

マリアの視線によって、タケルは敏感に後ろを振り向いた!

いや、正確には真後ろではない、

それは木の上から・・・。


 「おまえは・・・! ヘルメス!!」

相手が少年の姿をしているとは言え、

タケルよりも年上のそのオリオン神群は、

相変わらず人をなめきった態度でタケルたちを見下ろしていた。

それどころか、

いきなりシャリシャリと、どこかからか持ってきていたリンゴを食べ始める。

 「よぉホ、久しぶりラな、

 シャリ、まさか、こホまで来れるとはな、ング、

 ・・・それでも随分、人数減ったんじゃぁん?」


タケルが警戒して、その右手の天叢雲剣を手にすると、

周りからも、サルペドンはじめスサの成員たちが集まってくる。

そして周りのことなどお構いなしにタケルは凄む。

 「何しに来たんだ?

 待ち伏せ・・・というならこっちもそのつもりで対応するが・・・。」

 

 

だがこの生意気な少年神はどこ吹く風だ。

 「シャリ、・・・ん?

 やラやラ、野蛮人はこレだから・・・シャリ、

 さっきも言ったろう? ンッグ!

 オレはお前らにいい事を教えに来てやっただけだぜ?」

 「ハデスの能力のことか?」


そこでヘルメスは、

「やっ」っと木の上から一回転して飛び降りる。

なるほど、確かに身軽そうだし、「こういう事」が好きそうだ。

 「・・・よいっしょ!

 ん、そうそう、ハデス様の事、教えてもいいんだけどさ、

 もっと面白いこと知りたくはない?」


 もっと面白いことだと?

 少なくとも戦意はなさそうだな・・・。

タケルがその武器を持つ手から力を抜くと、

ヘルメスは辺りを見回し・・・

なんとサングラスをかけたサルペドンを見つけたのである・・・。

 

 

 「へっへぇ~、いたいた!

 そこの色眼鏡をかけたおじさん、

 あんた・・・、その眼鏡の下はどうなってるんだい?」


 「「!!」」

サルペドンとマリアに緊張が走る!

 まさかっ!?


そして彼ら二人以外には、当然何のことかは分からない。

何故、サルペドンの顔の事なんか気にするのだ?

あのサングラスの下には、

かつて戦争だかなんだかで付いた傷があるとしか・・・。

サルペドンはひたすら動揺を隠しながらも、冷静に答える。

 「眼鏡の下だと?

 そんなものを気にしてどうしようというのだ?

 別に面白いものが隠れているわけではないぞ?」

 「まったまったぁ、とぼけちゃってぇ?

 ・・・そうだ?

 ボサボサ髪のあんちゃん、

 なぁ、アンタだろ?

 この集団で一番偉いのは?

 アンタはあの眼鏡の下ぐらい見たことあんだろ?」

 

 

ヘルメスが目先を変えたのは、言わずと知れたタケルにである。

いきなり話を振られたタケルに、話の筋が見えるわけもないが、

タケルもサルペドンの傷は見たことがある。

何の躊躇いもなしに記憶にあるがままの答えを言う。

 「サングラスの下だろ?

 ただ・・・昔の戦いでついた傷があるから目を隠してるだけ・・・。」


 ・・・終わりだ・・・。

サルペドンは全てを覚悟した。


そしてヘルメスはニッコォリ! 

・・・と満面の笑みを浮かべたのである。

 「そうか、やっぱりアンタなんだね?

 ここにいる地上の人間達をずっと騙してきたのかい?

 ええ?

 俺たちの同胞・・・そして裏切り者、

 大地を揺する者・・・ポセイドン・・・!」

 




そして混乱。

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