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第12話

ここからいよいよメリーと「赤い魔法使い」の探索です。


既に時刻は夜になっていた。

レッスルは、

伊藤の隣に座っている麻衣に目を向けた。

 「さて、お嬢ちゃん?

 いよいよ、君の出番じゃぞ。」

 「何すればいーの?」 

麻衣は不安そうにつぶやく。

 「危険な事はないでしょうね?」 

伊藤も静観してはいられない・・・、

父親として、その心配は当然だ。

 「・・・むしろ、逆じゃな、

 このままじゃと、娘さんは危険なのでな、

 その対処法を教えとくわい。」

 「えっ・・・?

 危険? 何故です!?」

 「・・・お嬢ちゃんには予知能力がある。

 さっき初めて会ってみて確信したよ。

 この先、

 その能力が弱くなっていくなら問題は無い。

 じゃが、その能力が発達していくと、

 とんでもないことになる。

 ・・・見たくもないものが見えてしまったり、

 聞きたくもないことが聞こえてくる、

 メリーと同じようになってしまうのじゃ・・・。

 勿論、

 ・・・例えば心や感情が『欠落している』者には何の影響もない。

 だが、繊細な精神を持っている『人間』にそれは耐えられない。

 心が壊れてしまうのじゃ・・・。」

 


ブレーリー・レッスルが暗にほのめかしているのは、

世界各地でしばしば猟奇殺人を行っているある種族の事だった。

しかし、

この場にはそれに気づく者はいない。

 「そ、そんな事が!?」

 「じゃから、そうならないように、

 本人にコントロールする術を覚えさせとくのじゃよ、

 ・・・すまん、

 お嬢ちゃんとパパを除いて、

 みんな離れといてもらえんか?

 お嬢ちゃんの気が散るような事は控えるのじゃぞ?

 伊藤さん、

 あんたはお嬢ちゃんの後ろで安心させてやってくれ・・・。

 さて、お嬢ちゃん?」

 


老人は腰を曲げ、麻衣に視線を合わせる。

そして、

杖の先端を床に軽く叩き始めた。


・・・コツ、コツ、コツ・・・。


 「お嬢ちゃん、よぉーくお聞き。

 お嬢ちゃんには他の人には見えないものが見える、

 未来の事が分ったり、

 遠くの事が見えたりする。

 じゃが、

 それらは『心』を持ち始めておるお嬢ちゃんには有害なんじゃ。

 では、どうすれば良いか?

 この音が聞こえるな?

 今はとりあえず、

 この方法を使うが、お嬢ちゃんの得意なものでよい・・・、

 条件をつけるんじゃ・・・、

 この音を鳴らしたときだけ、

 遠くのものが見えるようにする・・・、

 心にこのイメージを描いた時だけ、

 未来を予想する事ができる・・・、

 真っ白なノートに、

 この記号を描いた時だけ能力が使えるようになる・・・、

 そうやって、

 自分の力を使う時を区別する習慣をつけていくのじゃ。

 そうすれば、こんな力に振り回されなくて済む・・・。」

 

音は継続的に、

一定のリズムで鳴らされる。

 「さて、お嬢ちゃん、

 昨日、メリーの夢を見たね?

 ゆっくり思い出してご覧?」

麻衣は目をつぶる・・・。

彼女の脳裏に、

閉ざされた空間でウロウロしているメリーの姿が浮かび上がる。

 「・・・見えたかね?」

 「うん、見える・・・。」

 「よし、

 ・・・ではメリーを見たまま後ろに下がるイメージじゃ。

 最初は一歩、二歩・・・、

 そしてその場からどんどん遠ざかってみるのじゃ・・・。」

 「・・・メリーさん、見えなくなった・・・。

 白い霧みたいなものがある・・・。」

 「結界じゃな・・・、

 それを突き破って彼女の姿を捉えるとはたいしたものじゃ・・・。

 霧は気にしなくて良い・・・、

 もっと離れてみるのじゃ・・・。」

 


・・・コツ、コツ、コツ・・・。


 「暗いとこ・・・、

 周りは濡れてて、天井から固いものが垂れ下がってる・・・。

 地面からも生えてる・・・。

 あ、外に出た・・・。

 樹がいっぱいある・・・。

 おっきな山も見える・・・。

 富士山・・・?」


伊藤が反応した。

 「富士山? 樹海? ・・・鍾乳洞ですかね?」

レッスルはニヤッと笑った。

 「・・・よし! ある程度特定できたようじゃな。

 お嬢ちゃん、もういいんだよ・・・、

 こっちへ帰っておいで・・・。

 ゆっくりとな・・・。」

そういって、

杖の叩く間隔をどんどん長くしていき、

最後には、

床に杖の先端を固定したままにする。

 「帰ってこれたかの?

 では、目をあけてごらん?」


パチクリ! 

麻衣はゆっくり目を開いた後、

二、三回瞬きをする。

 


自分の能力に、

嬉しくも戸惑っているのだろう、

父親の顔を見上げて複雑な表情を見せる。

目が覚めている時に遠隔透視をしたのは初めてなのだ。

伊藤も驚いてはいるが、顔には出さない。

優しく麻衣の頭を撫でただけだ。

老人はゆっくり立ち上がり義純を見る。

 「さて、

 これでどこへ向かえば良いか分ったかね?」

 「は・・・はい、とりあえずは・・・。

 さっそく準備を。」

マーゴの驚き振りが激しい。

 「うわぁ~!

 凄いわねぇ! 初めてESP能力見たわぁ!!

 大きくなったら『ウチ』にスカウトするべきね!」

老人はそれを制する。

 「やめとくのじゃな、

 さっきも言ったように、この能力は危険を伴う。

 この能力を捨てたり封印するのが、

 本来ならベストじゃ。

 ・・・ま、それを決めるのはお嬢ちゃんじゃがの・・・。」

 


義純は丁寧に伊藤達父娘の世話をする。 

「ではこれから、富士方面に向かいますね、

 麻衣ちゃんは、

 今のうちに寝てもらった方がいいかもしれませんね。

 ・・・それと伊藤さん、これ暗視ゴーグル。

 麻衣ちゃんの分もありますけど、

 サイズが難しいと思うので、

 場所にもよるでしょうが、

 この子はおぶっていかれた方がいいかもしれません。」 

伊藤は初めて見るミリタリーグッズに興味津々だ。

麻衣と二人で面白そうに観察する。

 「・・・凄いですねぇ。

 探偵さんてこんな装備も使うんだ・・・。」

もちろんそんな筈もない。

・・・ライラックが心配して義純に話しかける。

 「この人はルポライターだろう?

 ある程度、釘を刺しておいたほうがよくないか?」

 「・・・そうだな・・・、

 この先、派手に暴れる事もあるかもしれないしな・・・。」

義純は再び伊藤に近づいた。

 「伊藤さん・・・。」

 「はい?」

 

 「私の依頼元・・・そこにいる彼らの事ですが、

 あなたとあの老人の目的はメリーの救出・・・、

 そして彼らの目的は、

 小伏晴臣こと『赤い魔法使い』の捕縛です。

 理由はお分かりかと思います・・・。

 あなたが先程の老人の話に怒りを覚えたように、

 彼らもその男を許す事ができない・・・、

 個人的な話ではないのは確かですが・・・。」

 「なるほど、よく分ります・・・。」

 「それで・・・、

 こういうことは彼らの仕事の一環なのですが、

 その仕事の性質上、

 世間に公にはできないのです。」

 「・・・つまり、私の仕事のことですね?」

 「ええ、そうなんです、

 彼らの存在すら、記事にされては困るんですよ。」

 「分りました・・・、お約束します。」


普通に考えれば、

彼らの存在を明るみに出す事は、

トップクラスのニュースになるのだが、

メリーや魔法使いの存在の前では、

彼らの事もかすんでしまう。

・・・もっとも、

この後、伊藤はさらなる驚愕を眼にする事になるのだが・・・。

 


次回、彼らの前についに敵が。

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