表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
564/676

緒沢タケル編13 ヘファイストスの葛藤 『眼』

 

 話が長く続くのかと思ったら、いきなりこっちに振ってきやがった・・・。


現状、手元にある情報で判断するならば・・・、

この子供のような姿の存在が天空の神々(?)という話になるのだろうか?

ポセイドンの話をしているのなら、

その対抗者であるゼウスとか、そんなような者を指すべきなのか。


だが、

これをゼウスと呼ぶには、そのイメージに対して小柄すぎる・・・。

仮にもゼウスとやらが、「神々の王」であるならば、

例え敵対的な相手とは言え、もっと強大そうな姿で描かれるのではないだろうか?

こないだのクソガキ、ヘルメスとかのイメージなら丁度良いかもしれないが・・・。


タケルも、

サルペドンもマリアにしても・・・大体同じ結論に辿り着きそうだ。

それらの回答に、ネレウスは首を振る。

 「そうなのかもしれません、

 ですが・・・我々の教義は完全なる一神教・・・、

 そこに他の神の名はありはしないのです。」

 「なんだって!?」

 

 

そんな事があるのだろうか?

じゃあ、オリオン神群のゼウス達・・・

まぁ今のゼウスでなくてもその起源神、

それに日本神話であってもスサノヲ以外に大勢の神々が出現する。

それらについても、全く考え方が異なると言うのか?

一応、頭が悪いと言う自覚があっても、実際はそうでもないタケルが突っ込む。

 「ちょっと待った、ネレウスさん、矛盾があるよ!

 ポセイドン・・・いや、ポセーダーオンでもいいんだけど、

 大昔に神々と戦って敗れたんだろ!?

 だから封印されて、・・・復活を待っているんだろ?

 だけど、今になって神々は存在しない?

 じゃあ、ポセイドンは何と戦って敗れたんだ!?」


ネレウスはすぐには答えない・・・。

老神官はゆっくりと壁画の元から離れ、

再びお付の者に付き添われ、椅子のところへと戻る。

 


長く立っているのに疲れたのだろう。   

 よ・・・っこらしょ・・・と。

気を持たせるではないか、

それとも、単に次の説明でも考えているのだろうか?

いや、確かに説明するのに難しい話なのかもしれない、

ネレウスは、頭を左右に揺らした後にタケルのほうを向いた。 

 「タケル様、

 ポセーダーオンが神々との戦いに敗れた、

 もしくは降伏した・・・というのはまず間違いないと思われます・・・。」


 ほら! 

 『神々』って言った!

だが、ネレウスの次の言葉は、やはりタケルの考えを否定する。

 「ですが・・・、

 その『神々』という物は、

 本当に神々と言えるものなのか・・・、

 そこが問題となるのですよ・・・。」

 「え・・・っ? ど、どういうこと・・・?」

 

 「わかりやすく言いますと、

 例えば、このオリオン神群・・・、

 かつてこの地を治めたポセイドン様に、

 ポセーダーオンの因子が受け継がれていることは疑いございませぬ。

 ・・・ですが、

 この先にお会いになるであろう、ハデス様にしてもゼウス様にしても・・・、

 そしてこの地を現在治めるヘファイストス様にしても・・・、

 何千年、何万年遡ろうとも、

 その血筋に、

 本物のハデスやゼウス、ヘファイストスなど存在しないのです。

 それは虚像でしかありません・・・。」

 「じゃ、じゃあ、そいつらは誰の子孫だって言うんだ!?」


その時、今一度ネレウスの白い瞳が見開いた・・・。

 「もちろん・・・彼らの祖先も・・・、

 人間を創り上げた大いなる者・・・

 黒きたてがみのポセーダーオンになるのです・・・。

 この大地の上だろうが地下だろうが・・・、

 人間である限り・・・

 それは父なるポセーダーオンの血を受け継ぐものなのです・・・。」

 


ここから先は、ほぼネレウスの独演会といっても差し支えあるまい・・・。

タケルもサルペドンも、その話のスケールに質問する事、

いや、口を開くことさえ躊躇われていた・・・。

それほどの内容が、この老人の知識の中に詰め込まれていたのである。

 「お話しましょう、

 ポセーダーオンが何者なのか、

 おっと? それは皆さん、ほとんどご存知なのでしたね?

 ですが、私の話とあなた方の伝えてきた話と、相違点があるのかないのか、

 そこだけ気にしてお聞きくださいませ・・・。


 かつてこの地を・・・

 この大地は全てポセーダーオンが治めていた・・・。

 実のところ・・・、

 本来、その神が何という名を冠していたのか、

 如何なる名前で呼ばれていたのか、それは我らにもわかりませぬ、

 我らは『大地の主』という名の『ポセーダーオン』と呼んでいただけに過ぎませぬ。」

 

 「その神に仲間がいたのか、親族がいたのか、

 それすらも想像の域を超えることができませぬ。

 ただ、人間という生命が創り出された時、

 既に地上には一人の神が存在するだけであった・・・。


 地上に人が増え始め、

 御神が自らの子供として、彼らに知恵を与え、道具を教え、全てを伝えようとした時、

 その事に危機感を抱いた天空の神々・・・、

 ふむぅ・・・『神々』と言うからややこしくなるのかもしれませぬな?

 『奴ら』とでも呼びましょうか?

 『奴ら』は大地を・・・人間を皆殺しにする事を決めた・・・。

 勿論、人間たちに反撃や抵抗するだけの手段などありませぬ。

 例えポセーダーオンとて、ただお一人だけでは・・・。


 しかし、ポセーダーオンには全てを見通す『眼』を所有していた・・・。

 それが天空の『奴ら』に対し、決定的なアドバンテージと成り得たのです。

 ポセーダーオンは、

 天空の『奴ら』を制することのできる未来を見通していた・・・。」

 


今回のお話で、

この物語が


何の神話をバックボーンにしているか、

お分かりになったでしょうか。


過去に一度だけ、その名前を出したかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ