表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
563/676

緒沢タケル編13 ヘファイストスの葛藤 壁画に記された未来


さて、しばらく静かに話を聞いていたネレウスは、

一通りサルペドンの話が終わると、

頷いたように首を振った後、再びポセーダーオンの石像へと体の向きを変える・・・。

 「やはり・・・伝わっておるのですな?

 ポセーダーオン復活の物語は・・・。」


サルペドンはじめスサの面々は、それ以上同意も否定もできない。

ただ、ネレウスの次の言葉を待つだけだ。

やがてネレウスは、石像の奥の壁に彫られた、一番目立つ壁画を見上げ始めた。

 「地上のみなさん、

 私があなた方に確かめたかった事、

 それは、あなた方の誰かに、ポセーダーオンの因子が現れているのかどうか?

 また、あなた方の中にその人物がいるとして、

 その方が、ご自分の資質を自覚されているのか?

 ・・・もし、気づかれていないのであれば、

 微力ながら、このネレウスめが、その目覚めの手助けをしなければ・・・。

 そう思い、ヘファイストス様に一時のお時間をいただいたのでございます。」


サルペドンは静かに質問する・・・。

 「ネレウス殿、

 ・・・それで、あなたは目的を達することができそうなのですか?」

 

ネレウスは首をゆっくり左右に振る。

 「残念ながら、私にはその確証を得る手段がございませぬ・・・。

 しかし、ここであなた方に私たちの伝えてきたものをお教えすることは、

 きっと何かのお役に立つと信じます・・・。

 この石像の奥をご覧いただけますかな?

 この地に初めて入植した者たちが彫り上げた一つの物語・・・。

 やがて、未来に起こるであろう、私たちが伝えてきた物語を・・・。」


タケル達は洞窟の最深部に掘られている壁画を見上げた。

そこには何が描かれているのだろう。


 「・・・これは・・・?」

それは奇妙な光景だった・・・。

壁画には、

地面と思われる境界線が真っ二つに裂け、

その隙間からは、巨大な槍を持った大男が、上空に存在する「何か」に向かって、

今にも槍を投げつけようとしている様子が描かれている。


・・・そしてその上空には何かが浮かんでいる。

小柄で・・・

羽の生えた子供のような・・・、

脇に何か丸いものを抱えているのだが、

その円形の物体の中に、弧を描いた曲線が一本・・・

まるで三日月と満月を同時に表しているような。

 

奇妙な点は他にもある。

地面にいる大男の槍の矛先は、

その子供にも、

円形の物体にも向けられているようには見えないのだ。

単に描き手の技術的な問題にも思えるが、

その槍は、さらに上空の何かに向けられているようにも見える。


・・・だが、

その丸いものを抱えた子供より上には、何も描かれていない。

ただ、子供の周りから地面にかけて、

雨のような・・・

それとも太陽の光を現しているのか、

無数の短い線が大地に降り注いでいるようではある。

いや、その子供の真下と巨人の周辺には、

その「降り注ぐもの」は描かれていない。

どちらにしろ、これだけでは何がなんだかわからないだろう。

我慢できずにタケルが質問する。

 「ね、ネレウスさん、

 この絵は何を描いてあるんだい?

 何か予言のようなものなのかい?」

 


ネレウスはゆっくりとカラダを壁画に近づけた。

 「タケル様、

 あなた方の伝えるスサノヲが、

 すなわち私たちが語り継ぐポセーダーオンが復活するとして・・・、

 では、かの神は何の為に復活なさるのでしょうな・・・?」


 そ、それは・・・。

タケルはそこまで聞いていない。

美香の説明によれば、スサ内部でも完全に統一された見解はないと言っていた様な気もする。

いや、確か騎士団の日浦義純の話だと、

かつてスサノヲを封印した神々への復讐とも?

そうだ、

事実かどうかはともかく、これまで聞いてきた話の総合では、

かつて神々は人間を滅ぼそうとして地上を蹂躙し、

スサノヲまたは、ポセイドンがその身と引き換えになることで、人間は絶滅を免れた・・・。

それが大まかな話の中核だったはずだ。

一度、タケルは自信なさ気にその説明を行った。

サルペドンもマリアもその話を特に否定することもないようだ。

 

さて、

それに対するネレウスの反応はどうだろう?

 「タケル様、恐れながら・・・」

 「え・・・?」

 「過去の神話を語るとき、

 気をつけねばならない事があるのです・・・。」

 「そ、それは、何?」

 「それは神々の意志です・・・。

 神話と言うものは、

 あくまでも人間が見たもの、感じたものを伝えているのです。

 予言、と言われるものは特に注意が必要です。

 そこに神々の意志が含まれることはありません。

 もし、神の意志を伝えるならば、

 それは予言ではなく、預言と言わざるを得ないでしょう。

 何ゆえこんな話をするのか・・・?

 例えば、この壁画・・・、

 私たちポセーダーオンに仕える神官は、

 代々この壁画が意味するところを考え続けてきました。

 未来に起こるであろう事態を描いているのは間違いないのです。

 ですが、

 誰が最初にこの予言を行ったのか、

 何を根拠にそのストーリーが生まれているのか、

 今もって定かではありません。

 それをご理解いただいた上で、私の話を聞いていただけないでしょうか?」

 

ネレウスの言わんとしている事が今ひとつ掴めないが、

ここは同意するしかない。

やがて、ネレウスは持っていた杖を振り上げ、

壁画に描かれている奇妙な図について説明を始めた・・・。


 「まず、

 これは説明を要すこともないとは思いますが・・・、

 大地がぱっくりと割れている中にいる大男・・・、

 これが・・・

 我等の主、ポセーダーオンであることは疑いないようです・・・。」

 

長時間、見上げる態勢がつらいのか、

ネレウスは首を左右に揺らす・・・。

 「そしてこの人物が、

 壁画に描かれた・・・上空の『存在』を攻撃する為に、

 大地を引き裂いて蘇えったのか・・・、

 そう解釈することは確かに可能かとは思われます。

 ただ、

 まだこの時点では決め付けないほうがよろしいでしょう・・・。


 では次に、この壁画の中央よりやや、上に浮かんでいるもの・・・。

 羽の生えた小柄な人物・・・、

 これが何者なのか、

 あなた方、スサに伝わる伝説で解き明かすことはできますか?」

 




ここから


この「全ての物語」に共通する核心部分です。


そして羽の生えた小柄な人物、

それを説明できるものが

この場に一人。


それはまた後ほど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ