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緒沢タケル編13 ヘファイストスの葛藤 ポセイドンとポセーダーオン


「それ」は石で彫られた何か・・・。

イメージで言えば、日本の古い町並みで見かける地蔵のような・・・。

そんな石像が、形を変えて・・・、

いや、もっと違う何かの形となってその場に「存在」していたのである。

 人間の形を彫ったものではない・・・?

頭部があまりに大きい・・・。

タケル達はネレウスよりも先に、その石像に近づいていった。


 これは・・・その顔は、

 馬? それとも山羊!?

上半身は完全に人間の姿だが、

その頭部だけが獣のそれなのである。

石像は胡坐をかいて座っており、両手は開いた膝に沿って伏せられている。

また、頭には巨大な二本の角がついていて、まるでこれは・・・。


そしてその特徴は見覚えのあるものだった。

 

最初にそれに気づいたのは、

インド出身のクリシュナ・・・!

 「こ、これは見覚えが?

 この姿・・・古代インダス文明から出土した遺物に彫られている百獣の神・・・

 原初シヴァ神・・・、

 後の・・・アーリア文明の暴風雨神ルドラと同一視された・・・。」


そうだ!

何かに似ていると思ったら・・・、その貌はともかく、

巨大な角や衣装の特徴は・・・、

タケルが騎士団との戦いに纏っていた「ルドラの鎧」そのものなのだ!

すぐにタケルもそれを思い起こすことに成功した。

 「そ、そういや似ている・・・!」

サルペドンは強いて冷静に振舞おうと、ゆっくり説明をする。

 「インダス文明がどんな神話を持っていたか、

 いかなる文化集団がそこに暮らしていたのか、

 いまだ良くわかってはいない。

 今、クリシュナが言ってくれたルドラも・・・

 時間軸の中でいかなる神話系統と比すべきものなのか、

 諸説あるのだが・・・な。」

だが、後ろで聞いていたネレウスは、

この世界の核心をポツリと告げた・・・。


 「これこそ我等の、本当の神・・・

 大地の支配者ポセーダーオン・・・。」


 ・・・ポセーダーオン・・・

その名は、デメテルの村で確かに聞いた。

ポセイドンの古き名前・・・。

だが、わざわざネレウスが「本当の神」と言ったのは、

明確に他の「神々」と区別するためなのか・・・。

ポセイドンという名で、長い間崇め続けられていたサルペドンの衝動は抑えられない。

 「・・・ネレウス!

 い、いえ、ネレウス殿!

 何故わざわざ、一般的な名称であるポセイドンの名を使わないのでしょうか?

 あなたは、長い間、代々ポセイドンに仕えていたのではないのですか!?」


第三者からすれば、違和感を感じるようなサルペドンの強い詰問。

しかしネレウスは全く動じることなく、この古ぼけた石像に近づいていく。

 「仰るとおり、

 ・・・私は・・・私の先祖代々、この地のポセイドン様に仕えておりました・・・。

 ただし、それは『オリオン神群』ポセイドンの名を受け継ぐ者に仕えていただけに過ぎません。

 『それ』は、私たちの主人かもしれませんが、神ではないのですよ・・・。

 私の言う意味が・・・お分かりになりますか・・・?」

 


身動きすらしない・・・

いや、できないサルペドンだが、

話そのものはそんなに難しくない筈だ・・・。

だが、ショックが大きすぎて次の思考に移れない。

全てをなんとか把握したのはマリア、ただ一人。

 「サルペドン、

 別に驚く事はないと思います。

 あなた自身、ウィグルの村で仰っていたじゃありませんか・・・。

 『オリオン神群は元々ただの人間だと。

 地上を逃れ、地下世界に順応する内に特殊能力と極端な寿命を得ただけだと』。

 なら、この世界の人達が奉ずる神が他にいたって、別に不思議ではない・・・、

 そうでしょう?」


ネレウスは笑ってるいるのか、頭を上下させながらマリアの解説に同意した。

 「ほっほっほ、ご理解が早いですな?

 左様です、ポセイドン様は我等の主人であったに違いございませんが、

 あくまでも、『権力者側から押し付けられた主君』に過ぎないのです。

 とは言え、ポセイドン様は正義の心に溢れ、ぶっきらぼうではありましたが、心お優しき方、

 私は勿論、このパキヤ全ての人間に愛された方でございます。

 この地から追放されたとは言え、

 今でも私めは、あの方を尊敬しておる事に変わりございません。」


その言葉は、

サルペドンにとって嬉しい言葉には違いないのだが、

彼が受け入れがたい点は他にある。

 「ああ、そうだ・・・、

 確かに私は言ったな・・・。

 だが、私が引っかかっているのはそこではなく、

 この村で崇められているポセーダーオンとやらと・・・、

 オリオン神群のポセイドンの明確な差とは何なのだ?

 なるほど、確かにオリオン神群のポセイドンは、

 他の神々同様、人間には違いあるまい。

 だが、その・・・ポセーダーオンの血を受け継いでると言うことには変わりないのでは?

 それは信仰の対象にはならないのか?

 今のネレウス殿の話は、

 まるでポセイドンとポセーダーオンは無関係に聞こえるぞ?」


ネレウスはすぐに答えず、

もう疲れたのか、壁際に安置されていた幾つかの椅子の一脚を、お付の者に取ってこさせた。

 よっ・・・こらしょ・・・!

 「ほほ、失礼させていただきますぞ? 

 あ、あ、あなたがたもよければ・・・

 ただ、数が足りないかも・・・?」

 


タケルが笑いながらジェスチャーで断った。

さて、話の続きは・・・。

 「それでは・・・昔話をいたしましょうか・・・、

 私も、先祖代々の話を伝えるだけに過ぎませんが・・・

 これから私の話すことは、

 オリオンの神々に聞かれたら、罰せられることになるかもしれません。

 彼らの伝える歴史と異なりすぎるからです。

 勿論、あなた方も、信じる信じないは自由です。

 それではお伝えしましょう・・・。


 もう、3000年・・・

 いえ、さらに大昔ですな、

 我々は地上の世界に暮らしておりました・・・。

 平和にも暮らしていましたし、時には小さな戦争もありましたし、

 我々は既にその地で、大地の主ポセーダーオンを信仰しておりました。

 しかし、周りの村や国では、それぞれの神々が既に存在しており、

 その中で、最も強い権勢を振るっていたのがゼウスを崇める都市国家でした・・・。」

 





挿絵(By みてみん)

以前も紹介しましたが、

インダス文明の遺跡から出土している原初シヴァ神の印章です。


ネレウスの説明分かりやすいですかね?

次回さらに核心に迫っていきます。


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