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緒沢タケル編12 死の神タナトスと解き放たれた「魔」 死者の語り

ぶっくまありがとんです!!


前回入れてくれた方がいたと思うのですが、ぶっくま解除する方もいて、

増えたのか減ったのか分かりかねる場合がございます。

「自分の時お礼がなかったぞー」という方は、この場を借りてお詫びします。


白い気体の上に浮かんだ顔は、

紛れもなく、かつてタケルをかばうようにして命を失った緒沢美香のもの・・・。

それがワイングラスの上に、

まるでホログラフィのように浮かんでいるのである。

最初は白い凹凸だけだったその顔も、今では色がうっすらと付き始め、

コントラストもはっきりとしてきたようだ。


彼女の美しい黒髪は、肩の上でゆらめき、

今では、あの高貴な黒い瞳も再現されている・・・。

再現されてないものがあるとすれば、

見るもの全てを惹きつけた、あの瞳の中の強い意思の光だけだろう・・・。

その顔はあまりにも無表情だ・・・。


降霊術・・・、

そう、冥府の王ハデスの能力は死者の魂を操ること、

いま、その男はタケルの情報を引き出すために、

彼の最愛の肉親、緒沢美香の霊魂を呼び寄せたのだ・・・。

 


ヘルメスは、初めて見る神秘的な現象に興奮を抑えられない。

 「へぇぇ! すっげぇ!

 この女の人、もう死んでるのぉ!?」


ハデスはワイングラスを囲んでいた手をゆっくりと離し、自分は椅子に腰を下ろした・・・。

 「ヘルメス、あまり身を乗り出すなよ?

 さっきも言ったが、

 魂が自分の生前の姿を再現してそこに留まるのには、

 微妙な条件が整っていなければならんのだ。

 それに、その女は術者である私の言うことしか聞かない。

 お前は何もいじれないのだからな?」

 「えっ、じゃあ、この後、何をするつもりなんだい、ハデス様!?」

 「・・・全く、

 さっきのゼウス様のお言葉を聞いていればわかるだろう?

 まぁ、見ているがよい。

 さて、ではいよいよ始めます・・・。

 ゼウス様、よろしいですかな?」


ハデスの問いかけに、当然過ぎるようにゼウスは自らの顎を落とす。

 「うむ、頼む・・・。」

 

態勢は座ったままであるが、ハデスは再びその腕を伸ばし、

指をいっぱいに広げ、美香の頭部から頬にその手のひらをかざした・・・。

実際に触れることはないようだ。

もっとも・・・その先に手を伸ばしたところで、

「それ」は物質ではないのだ、

・・・触ることはできないはずだが・・・。


ハデスはその彫りの深い貌を傾け、

眼前の不確かな存在に向けて、ゆっくりと話しかける・・・。 

 「・・・我が名は冥府の支配者ハデス・・・、

 暗き黄泉の世界を彷徨う哀れな魂よ・・・、

 そなたの名を聞こう・・・。」


あろうことか、その虚ろなる魂は、

ついにハデスの求めに応じ、口を開いたのだ。


 (・・・名前・・・私の名は

 緒沢・・・美香・・・)

 

いや、

それは耳に聞こえる声ではなかったのかもしれない・・・。

ハデスを含め、その場にいる全員の意識に直接流れ込んでくるかのような・・・。

だからこそ、言語の異なる死人の言葉を理解できるのかも・・・。


 「では美香と呼ばせてもらおう、

 自分が最後に覚えているのは何だ?」

 (最後に 覚えているもの・・・?

 強い衝撃・・・

 目も眩むような爆発・・・何も聞こえなくなり・・・

 最後は・・・)


 「最後は?」

 (私のカラダを抱きしめる・・・タケルの泣き顔・・・ )

 「タケルとはそなたの何なのだね?」


 (・・・タケル・・・

 ああ、タケル・・・私の弟・・・

 私がずっと守ってきたたった一人の弟・・・ )


そこで一度、ハデスはゼウスたちのほうを振り返った。

 「どうやら術は正常に機能しているようです。

 これより彼女に、

 ポセイドンに関する知っていることを洗いざらい、喋ってもらいましょう。」

 

その隙に、ついに好奇心を抑えきれずヘルメスが小声で質問をする。

 「ね、ねぇっ? ハデス様、

 しゃべって貰うって、こいつ地上の人間だろ?

 素直に言うことを聞くの?」

 「それは心配いらん。

 『死んだ者の魂』とは心を亡くした意識の残りカスだ、

 そこには意志も疑問も思考もない。

 ただ、求められたことに応ずることしかできないのだよ。

 余程、強烈な感情を残した者はまた別だがな・・・。」

ヘルメスは心底感心し、再び炎のように揺らめく美香の映像に目を凝らし始める。

 「・・・ふーん。」


そして再びハデスの尋問が・・・。

 「さて、では美香よ。

 そなたを呼び寄せたのは、いくつか聞きたいことがあるからだ。

 それに正直に答えてもらいたい。

 そなたは緒沢タケルが今の組織を継ぐ直前、それまで組織の長であったはずだな?」

 (組織・・・それは緒沢家が先祖代々伝えてきた信仰にまつわるもの・・・

 私たちは<スサ>と呼んでいる・・・)

 「・・・スサ・・・信仰か。

 そこには大地の王、ポセイドンを祀る縁起が残されているというのは事実か?」

 (大地の王・・・ポセイドン・・・

 ただ、私たちの先祖はそれをスサノヲと呼んだ・・・。)

 

 「地上での名前などどうでもいい。

 要は、我らオリオン神群の中でも、その大地の支配者と呼ばれる者・・・

 かつてアトランティスの王であったという『存在』と、

 そなた達の言う神が一致するものなのかどうか、まずは知りたいのだ。」


美香の魂は今度はすぐに答えない・・・。

ハデスの言葉によれば、死者は思考を行わないということだが、

今の彼女には難しい質問なのだろうか?

やがて、美香は自分の知っていることを話すことで、ハデスの問いに答えるようだ・・・。


 (私たちの言い伝えでは、

 遠い大昔、地上にはたった一人の神がいたと言われている・・・。

 そこには彼が創り上げた多くの人間たちがいて、日々平和に暮らしていたという。

 ところがある日、大空の彼方より神々の軍勢が訪れ、

 地上から一切の生命を根絶しようとした・・・。

 人間の神は、単身で神々と立ち向かい、そして敗れた・・・。

 けれど、その身と引き換えにすることによって、天空の神々と一つの契約を成立させた・・・、

 それは地上の人間たちの命を保障する事・・・。

 今後・・・

 神々が地上の人間に一切の干渉を行わないという契約・・・。)

 



タナトス編は次回で最終回です。


美香の語った内容は真実かどうかまだ確定させる必要はありません。

もちろん、デタラメという訳でもありません。


次の村で真実の一部が明らかになります。

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