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緒沢タケル編12 死の神タナトスと解き放たれた「魔」 嵐は消え去る・・・

すいません、

タケル復活しました。


心臓はちゃんと止まってたんですけどね。


散り散りになったメンバーが、無事にようやく戻ってこれたのは、

ミィナを含め一時間足らずといったところだ。

そして・・・、

もはや物言わぬ死体となった者達の発見にも、そんな時間はかからなかった・・・。

ただ、

敵の警戒をしながら哀れな死者たちの回収を行うには、

慎重なグログロンガ達ですら時間を要した。


・・・そこには緒沢タケルの保護も含まれる・・・。

その場を発見したグログロンガにしても、

ここでいかなる戦闘が繰り広げられていたのか、

全く理解できなかったに違いない。

生命力を抜き取られ、ミイラのような姿と変わり果てた仲間については、

サルペドンの説明で納得した(なんとか・・・だが)。

・・・となると、敵の首魁と思しきタナトスとやらは、

どうやってこんな有様になったのか?


干からびた姿の敵が、無残にも首が捻じれた状態で転がっている・・・。

傍で倒れていたタケルの怪力なら首を折ることも容易いだろうが、

いくらなんでも、

ここまで徹底的にねじりまくるのは、タケルの性格からは考えられない。

・・・第一、何で艶々と血色のいいタケルが、気絶して倒れているのか?

 

タケルの額から血を流している事と、近くに無数の岩が落ちている状況から、

なんとなく、気絶した原因は想像できもしたが・・・、

とにかく心音も呼吸も、タケルは正常なようなので、

その不思議な状態については後回しだ。

このでかい図体のタケルを運ぶほうが大変なわけだし・・・。


なんにせよ、

スサ総代のタケルの命と、

最悪の敵を排除できたであろうことは、

スサにとってはギリギリで望みがつなぐ結果となった。


そして・・・、

勿論、天叢雲剣と、

引きちぎられた「紋章」はしっかりと回収も済んでいる・・・。

多少、その長さが短くもなったが、

手先の器用なグログロンガが、元の状態に戻しておいた。

今はもう、静かな呼吸を保っているタケルの首元に戻されている・・・。

果たして、

彼に何があったのか、

それを的確に答えられるものは、

この地下世界「には」存在しないだろう・・・。

 



 「・・・。」


 ん? なんか・・・頭痛ぇ・・・。

 「・・・う~ん・・・」

タケルが目を覚ました・・・。

目を開けると、その前にはテントの屋根があり、

周りにはマリアさんとミィナが、ほかの傷病者に手当てを施していた。

なお、

タケルの瞳は黒いままである・・・。


 「おっ? タケル、気がついたか!?」

ミィナの顔が明るく輝いた。

お互い、自分がとんでもない事をしでかしたことなど気づきもせずに、

ミィナは素直にタケルの目覚めを喜ぶ。

マリアさんもホッと一安心だ。

・・・一方、タケルは未だに状況が把握できない。

 確か・・・オリオン神群と戦ってたはずだよな・・・。


戦闘で気を失うことは、これまでで一度や二度でないが、

今回はさすがに記憶が定まらない。

 「・・・ええっと、オレ無事ってことは・・・

 誰か助けてくれたのか・・・?」

 

即答をためらったマリアは、

とりあえずサルペドンを呼んでから、 話を進めようと思った。

タケルはその間、自分の手や頬をさすりながら、自分の体を確かめている。

 干からびちゃあいない。

何ともないのは嬉しいのだが・・・。


すぐにサルペドンがやって来て、タケルの体調を気遣おうとするが、

タケルのあまりにキョトンとした顔を見て、一気に気が萎えてゆく・・・。

 「・・・まぁ、無事で何よりだ・・・。」

 「おお、サルペドン、

 あのタナトスって奴、どうなったんだ?

 誰かやっつけてくれたのか?」


それを聞いて、

サルペドンはすぐに答えず、簡易椅子を持ってきて、ドサッと無造作に座る。

 「やっぱりタケルは気絶したままだったのか?」

 「ん? ああ、いきなり白いガスに囲まれたと思ったら、

 もう天叢雲剣も使えなくてさ、

 どんどん力が抜かれて、さすがにもう駄目だと思ったよ、

 ・・・そっから先は覚えてねーな・・・。」

 

タケルの説明におかしい所や不審な点はない。

何より、タナトスの能力を知っているサルペドンには、その状況が手に取るようにわかる。

 

 一応、結果だけタケルに伝えるか・・・。

 「お前が倒れている所で、死の神タナトスと思しき人物が、

 生気を吸い取られたような状態で、首を折られて死んでいた・・・。

 誰がやったのかはわかっていない。

 それと、スサにも被害が7人・・・。

 タナトスに命を抜かれた者と、運悪く敵の矢に致命傷を受けたものだ・・・。」


急にタケルの顔が険しくなる・・・。

当たり前だ・・・。

 「7人も・・・、ちくしょうっ!

 もう一息で敵の本拠地だってのに・・・。

 で、でもよ?

 タナトスが生気を吸い取られたようなって・・・どういうことだい?」

 

せめてタケルの口から、

何か手掛かりになるような情報でも零れ落ちるかと、薄い望みはあったのだが・・・。

やむを得ず、サルペドンは話を続ける。

 「・・・さっぱりわからないんだ・・・。

 それでお前が目を覚ますのを待っていたんだが・・・。

 ああ、後それと、凄まじい地震があった。

 それもお前は気づかなかったか?」

 「地震!? いいや!

 そういや、デメテルの村でもでっかいのあったな?

 あれの余震か!?」


どうやらそれも本当に知らないようだ・・・。

一しきり今の状況と、これからの作戦をタケルに伝えると、

また再びゆっくりとサルペドンは席を離れる。


ここに来て、サルペドンにしても、この旅のさなかにしばしば起きる、

予想すらできない不審な事態に、胸をざわつかせていたのである。

シルヴァヌスの村での異様な気配、

デュオニュソスの意味不明の行動・・・、

そして・・・。


彼の不安に似た怖れは、遠く離れた王都ピュロスの主、

黒雲操るゼウスにしても、同様のものを覚えていたのである・・・。

 





次回!

舞台は王都ピュロス!

タナトス編は間もなく終了。


主神ゼウス、

冥府の王ハデス、

ヘルメスに毎度おなじみモイライさん達!


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