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緒沢タケル編12 死の神タナトスと解き放たれた「魔」 一つの結末

今回はミィナちゃんの出番です。


そして肝心の、

凄惨なる虐殺が繰り広げられた場所では、

一人、黄金色の瞳の巨人がその場に立ち尽くしていた・・・。

何をするわけでもない。

自分が殺したつまらない生き物の死体を静かに見ているだけらしい。

他人がこの現場を発見したら、身の毛もよだつような光景だろう。


毛髪のないタナトスの首から上は、

捻じれまくったために、もう人間の体にすら見えないかもしれない。

妖怪「ろくろ首」が死んでいる・・・。

そう思ったほうが想像しやすいだろう。


そのうち「男」は行動を始めるようだ・・・。

自分の左右の手のひらを見つめて、彼は何かを確かめる。

「自分のカラダ」に違和感でもあるのだろうか?

やがて、その事に納得したのかしないのか・・・、

今度は辺りをきょろきょろ見回すと、

再び・・・

再び先ほどのようなオーラを放ち始めた・・・。

 

巨人の肩が揺れる・・・。

笑い始めたのか・・・?

いや、喜んでいるのだろうか?

肉のカラダを得た事を・・・、

暗黒の淵から這いずり出てきた事をであろうか?

微弱ではあるが、

またもや大地が揺れ始めた・・・。



 こっちへ


さて・・・

ここに一人、仲間からはぐれてしまったスサのメンバーが一人いる・・・。

ミィナだ。

あまり地理感覚というものを持っていないのか、

完全に彼女は自分の位置を見失っていた・・・。

○○と何とかは高いところが好きだというが、

いつの間にやら、彼女は傾斜のある岩場を登り始め、

いま・・・少し危険な位置に辿り着こうとしていた・・・。

 


 

 「・・・あっれぇ~?

 ここ、どっこぉ~・・・?」

さっきまでは目印に使えそうな岩柱も見えていたのだが、

この辺りには一本も生えていない・・・。

霧だけは変わらず立ち込めたままだが・・・。

半分、何していいかわからず、

ミィナはイラつきながら鞭をビュンビュン振り回す・・・。

 そんなことしても霧は晴れないよ・・・。

タケルがいたら、そう突っ込まれるかも・・・。

やむを得ず戻ることも考えたのだが、

今、自分が向かっている方向から、

人間の声やら何かの音が聞こえたような気がする。

戻るのは、この傾斜を下っていけばいいんだし、

これ以上、道に迷うことはあるまい・・・。

そう考え、

そしてミィナは自分の耳を頼りに進むことにした。

 

しかし、もう人の声や争っている音も聞こえてこない。

さっきのは空耳だったか・・・、

それとも霧のせいで聞こえた方角を間違えたのか?

一応、彼女なりに五感を働かせども、異常らしきものは・・・

 あっ、また揺れてるっ!?


だんだん、不安になってきた・・・。

何分にも彼女の暮らしていた村に、地震なんか滅多にない。

それがいきなり、あれだけの規模の揺れに遭遇したのだ。

さっきのどでかい奴で、

寿命が一月ほど縮まったといっても決して大げさではないのだ。


 戻ろうか?

一度、ミィナはそう考えた。

けれど、

その時、気のせいだとは思ったのだが、

また誰かの声が聞こえた気がしたのだ。


 こっちよ


自分が今、向かっていた方角から。


若い女性のような声・・・

もちろん、そんな事はあり得ない。

地底に降りてきたスサの仲間に女性はマリアしかいない。

しかし、今の声はマリアの声ではないと思う。


しばらく耳を澄ませてみたが、あれから誰の声も聞こえない。

とりあえず、ミィナはある決断をした。

あと2~3分進んで、何もなければ引き返そう。

どう考えても、これ以上進んでも仲間に会えそうな気はしない。

そう決め込んだら、何となく落ち着きもなくなり、ミィナは小走りとなる。

ところが、ある地点に達した時だ。


 ダメ とまって!!


その、声らしきものが聞こえた瞬間、

急に彼女の背筋が逆立ったのだ。

それはちょうど、足を前に踏みしめようとした時・・・



ミィナの足元の感覚が一瞬、消える・・・!

 「うわぁっっ!?」


 ガラガララッ・・・

目前で急に足元の岩場が崩れ落ち、

ミィナのカラダが半分それに合わせて落下する・・・!

いや、何とかぎりぎりで、しゃがみこみ、カラダの重心を後ろに逸らすことができた・・・。

 「・・・あ、あ、

 ・・・あ・・・あっぶねぇ~ぇ・・・ 。」


先ほどの地震で岩場が脆くなっていたのであろう、

もう、ミィナの進行方向に道はない。

地面もない。

見れば、この辺は崖の突端になっているようだ・・・。

 「ち、ちくしょう、

 金網か立て札ぐらい、立てとけよ・・・、

 ああああ、寿命また、縮まったぁ~・・・!」


もう、ミィナは半分、涙目になっている。

命がなくなるところだったのだから、無理もあるまい。

・・・そしてミィナはあることに気付いてしまう・・・。


 「さ、さっきの、こ、声、アレだ!

 きっと幽霊!

 タ、タケルのクソ馬鹿に前、日本の怖い話とかで脅かされた奴だ!!

 ここであたしが『教えてくれてありがとうございます』って言うと、

 『死ねばよかったのに』って言うんだろっ!!

 ちくしょうっ! 騙されねーぞっ!! ヒックッ!」


ミィナは心臓がバクバクいってるのが少し落ち着いた辺りを見計らって・・・

いや、それすら待ってなんかいられない。

半泣き状態で這いずるようにその場を逃げ出した・・・。




ここでただひとつの事件は・・・、

ミィナが踏み落とした岩石の塊が・・・

そのまま落下した先で起きたのである。


立ち込める白い霧・・・。

それらが周りの音を吸収してしまうのか、

それとも、自ら起こした大地の振動のためか、

「彼」にはそれが気づかなかった・・・。

頭上から落ちてくる凶悪な危険物を!

それでも「何らかの」気配を感じ取ったのか、

黄金色の瞳の巨人が頭上を見上げた瞬間!

彼の視界いっぱいに黒い塊が。


「それ」を認知したときには、

鈍い音とともに、岩が激突した後の祭りである・・・。

常人なら即死してもおかしくないほどの重量と、硬度と加速度である。


・・・その男は静かに・・・

あまりにも静かに大地に沈みこんだ・・・。

頭から血を流して・・・。

 



次回、タケルが・・・

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