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緒沢タケル編12 死の神タナトスと解き放たれた「魔」 忍び寄る「死」の気配

今回は展開早いです。


攻撃をかけられたと言っても、それほど被害は今のところ多くない。

視界が悪いのはオリオン神群側も同様で、

さらに、攻撃部隊はそれほど多くもなく、

恐らくタケル達以外を狙っている者たち含めても、20人もいないだろう。

用意してきた矢羽根の本数だって大量にある筈もない。

彼らの目的はスサの陽動である。

事実、見えない敵に襲われ、

まだ致命傷こそ受けた兵はいないものの、

反撃を試みようとした者によって隊列は乱され、

先のサルペドンの注意すら無駄になるほど、スサの本隊はバラバラになってしまった。

敵がいなければ、それでもすぐに集合をかけられたかもしれないが、

おびき出された者は、オリオン神群の下級兵士と小競り合いを繰り返し、

10人近くの者が本隊を遊離してしまう。

もはや、タケルの隊も、

クリシュナ、グログロンガの隊も、お互いの位置がつかめず、手探りで道を進まねばならなかった。


ではどうする?

敵の数がそんなに多くないのはタケルにも判断できた。

・・・ならば先に敵を叩き、危機を脱する・・・!

それが先陣を切るタケルの使命だ!

 

タケルは小声で部下を制す。

 「このまま伏せてろ!

 奴らの度肝抜かしてやる・・・!」

タケルは半身を起こし、先ほど矢が飛んできた方角を見据える・・・。


 まだ様子を窺ってるな・・・!?

バチィッ!

 天叢雲剣発動・・・遠慮はしねーぞ・・・!!

 「叫べっ、いかづちっ!!」


白い帳を切り裂いて閃光が走るっ!

遠くの方で驚愕の悲鳴が湧き起こった!


 あっちだな!

野獣の瞬発力でタケルが跳ぶ!

この視界でタケルに矢を狙う事は出来まい!

声のした方角に近寄ると慌てる姿の数人の兵士が・・・。


 「オリオン兵だな!」

言うが早いか、タケルは敵の武器を叩き落とし、みぞおちに強力な肘打ちをぶち込む!

一人はすぐに倒れたが、残りは白い霧の中に消えてゆく・・・。

いや・・・強そうには見えない兵士たちだ・・・。

訓練もそれほど受けているようには見えない。

せいぜい自警団クラスだろうか?

肘打ちを喰らわせた兵士は悶絶している。


 落ち着くのを待ってから、捕虜にして仲間に合流するか・・・。

 「ん? あいつらは?」

・・・タケルは残してきた二人の部下を気に掛ける・・・。

 


 「おい、そこにいるか!?」

 「は、はい! タケル様、敵は!?」

 「一人、戦闘不能にしたが他は逃げた・・・。

 あんま根性ありそうに見えなかったぞ?

 大した軍勢じゃないのかものな?」

 「神クラスはいないのですか?」

 「どうだろうな・・・。

 とりあえず、そこに転がしてきたヤツを捕えよう。

 縛るの手伝ってくれ。」

 「はい!」


ところがタケル達が戻ると、

先ほどの兵士の仲間達が、気を失った男を助けようと、再び舞い戻って来ていたのだ。


 「仲間思いはいいが、そいつを抱えたまま逃げられると思うな!」

すぐに追いかけっこが始まった。

もちろん、タケルの足を逃れる術はない。

あっという間に追いつくかと思ったが、

・・・不意にタケルの部下が背中を呼びとめる・・・。

 「待って下さい、タケル様!

 周りを・・・!!」

 

 周り・・・!?

タケルは足を止める・・・。

周囲をひとしきり見て、タケルの脳裏に嫌な予感が・・・。


 ここはどこだ・・・?

自分が方向音痴だと思ったことはない。

だが・・・ここは・・・

さっきよりさらに白い霧が立ち込めていて、

周囲の景色が全く見えなくなっている。

元来た方角を戻れば、仲間の所に戻れそうだとは思うのだが・・・

途中・・・何回、岩の柱を曲がった?

帰る方角はあっているのだろうか・・・。


 「捕虜を捕まえるのは諦めた方がいいな・・・、

 とりあえず戻るか・・・。」


3人は、元来たと思われる道を戻るが・・・。

だんだん、自信がなくなってきた・・・。


 「あ、あれ? あんな壁あったか?」

 「後ろは向かなかったから・・・なぁ?」

斜め左側に天辺が見えない崖がある。

もしかしたらそんな高くないかもしれないが、霧で全く上が見えないのだ・・・。 

 

 「完全に道に迷ったか・・・?」

 「タケル様、無線を使いますか・・・?」

部下の一人が再度、タケルに無線を渡そうとすると、

・・・タケルがその部下の様子の変化に気づいた。

無線を持つ手が震えている・・・。

 「おい、どうした?

 そんな怯えるような・・・ 」


言いかけてタケルの口が止まった・・・。

てっきり部下が心細くなっていたのかと思ったのだが、様子が違う・・・。

顔色が変なのだ・・・。

青ざめている・・・

唇も紫色に・・・

いや、これは周りの霧のせいで、そう見えるだけかも・・・。

 「おい、大丈夫か? 手が震えているぞ?」

 「え? あ、そ、そうレすか?

 自分じゃわからラくて・・・。」


 なんだよ、口も回ってないじゃないか?

・・・だが、そこでタケルは更なる異常に気づく・・・。

後ろにいた、もう一人の部下も様子が変だ・・・、

うつむいていて気分が悪そうにも見える・・・。

 「おい! お前はどうした?

 具合でも悪いのか?」


すぐに彼はタケルの言葉に反応したが、

やはりこの男も・・・顔が青ざめている・・・。

 

この今の状況に違和感と不安を感じたタケルだが、

すぐに次、どうすればいいか判断にためらっていると、

無線を握っていた部下が、

タケルの背後から誰かがやってきているのに気づいた・・・。

 「タケル様・・・あ、あれヲ・・・!」


ザ・・・ ザッ、 ザッ ザッ ザッ・・・!


 敵か・・・、一人、だと?

 しかもあの澱みない歩き方は、今までの雑兵じゃあないな・・・。

 オリオン神群・・・。


既にタケルも歴戦の勇士・・・。

その戦闘力だけでなく、洞察力すらも格段に進歩していた・・・。

だが、この近づいて来る者が、

どんな恐ろしい能力を備えているかなど、

彼にそれを突き止める手段などありはしない・・・。

そう、

今や彼ら三人の元へ、一歩一歩「死」が近づいている事など、

知る由もないことなのである・・・。

それでも・・・タケルは何が起きてもいいように、

戦意と集中力を高め、

未だ姿を見せないその敵に、全ての攻撃力をぶつける準備を整え終わったのである・・・。

 


次回、タケル対タナトス!!

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