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緒沢タケル編11 黒衣のデメテルと純潔のアテナ サルペドン無双

ポセイドンの二つ名は

ガイアーアコス「大地を所持せし者」

エノシクトーン「大地を揺する者」


こちらはタケルとアテナ・・・。

タケルがアテナの言葉に驚いたところであるが、

今さら彼の決意を鈍らせるには至らない。

そこで、その覚悟をアテナに伝えようとした時、

彼も、自分がいるこの辺り一帯の違和感に気づいた。

 「アテナさん、おれは・・・  

 んっ・・・?」


最初に知覚できたのは平衡感覚の異常・・・。

まるで世界が歪んだかのような・・・。

そして、当然の警戒心からカラダの全神経をその違和感に向けると、

聴覚が・・・

いや、すでにそれはカラダに感じていた低周波音域だったのか、

地鳴りのような音が遠方より伝わってきたのだ!


 ズシンッ!

 ・・・ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ・・・ッ


 「ゆ、揺れているっ? 地震ッ!?」

この世界全体に響き渡る激しい突き上げ音の後、

すぐに大地の唸り声が辺り一帯を包み込んだのだ。

アテナも・・・デメテルのカラダも当然揺れている・・・。

だが、彼女たちはまるで旧知の事がらのように落ち着いている。

まるでこの地震が起きる事を知っていたかのように・・・。

 

それでも揺れはどんどん大きくなり、

スサのメンバーは立っている事すらままならない。

いや、

スサの仲間の中でもただ一人・・・

マリアだけはこの地震の正体に気がついた・・・。

 (サルペドン・・・あなた、まさかっ!?)


そしてここは再び「嘆きの谷」・・・。

この地震で全ての行動を封じられたのはアレスの軍勢も同様だ。

いかに身体能力を高めたところで、これだけ足場が揺れては歩ける筈もない。

サルペドンに接近しかけていた兵隊たちは、

その場に崩れて一歩も進む事ができなくなっている。

だが、そんな彼らの間をあざ笑うかのように、一人の男が通り過ぎる・・・。

サルペドン・・・、

彼ら雑兵には目もくれず、ただ一直線に、

この激しい揺れなどなかったかのように、まっすぐアレスの元に近づいてゆく。

そのアレスですら、もはや自分の能力を発揮できず、

ただひたすら地面に両手で自分を支え、

驚愕の表情でサルペドンを睨むことで精一杯・・・。

 「き・・・貴様!?

 なぜ、これだけの揺れで歩いてこれるっ!?

 い、いや、こ、これは・・・この大地の揺れは、自然現象ではないなっ!?

 ま、まさか我らと同じ能力・・・!」

 


そしてアレスはすぐに結論に達した・・・。

 「ま、まさか、その潰れた片目・・・!

 あ、あり得ん! 生きていたのか!?

 いや、このピュロスに帰ってきていたのかっ!?

 貴様・・・ゼウス様に逆らった反逆者・・・

 大地を揺する者・・・ポセイドンッ!?」


もはや、サルペドンはアレスの目の前だ。

彼は残った片目でアレスを冷たく見下ろした・・・。

 「その気になれば、この大地を引き裂き、お前たちを全員、

 灼熱のマグマの中に突き落としてやってもいいのだが、

 そこまで能力を発揮すると、村にも被害が出るのでな・・・。

 なに、アレスよ、安心しろ。

 戦意を喪失したならば、お前の兵たちの命は助けてやる。

 だが、おまえはそういうわけにはいかん。

 ここで自分の命は諦めるんだな・・・。」

サルペドンは懐に手を入れる・・・。

護身用の拳銃だ。

何の変哲もないただの拳銃・・・。

 


だが、もうアレスには抵抗する手段すらない。

腰の剣を抜いたはいいが、

腕のリーチが届く範囲で無様に振り回すことしかできない。

 「やっ、やめてくれっ!

 ポセイドンッ! あんただってわからなかったんだっ!

 頼むっ、あんたに張り合えるのはゼウス様しかいないっ!!

 お願いっ! 私はただの職務でここにっ・・・!」


だが、サルペドンに容赦はない。

彼は正確にその拳銃の照準をアレスの額に向けた・・・。

 「残念だが、私はこのピュロスに復讐に来たんだ・・・。

 100年前の清算、

 この右目やヘファイストスの命の償いを・・・。

 アレス・・・

 まずは貴様の命で利子を払ってもらう・・・!」

 「ヒッ! ヒィィィィッ! たっ助け・・・」


ガォンッ!!


嘆きの谷に一発の銃声が・・・。


そして次第に揺れが収まってゆく・・・。

すでにサルペドンはマントを翻し、

まるで何事もなかったのごとく、再びやってきた道を戻って行った。

後に残されたのは、

放心状態の1000の兵士たち・・・

そして乾燥した大地に、

一人の男、戦神アレスの死体が醜く転がるのみであった・・・。

 


 

 「・・・ゼウス様!」


ここは王都ピュロス。

運命を見通す3人のモイラ(モイライ)達の一人、

ダークグレーの髪を蓄え、「現在」を視る真ん中のモイラの目が見開いた。

もっとも・・・その瞳に光は映らない・・・。

何かショッキングな物を見た時の、その女性の癖のようなものなのか、

彼女はゼウスに、自らの「眼」が目撃したモノを告げる・・・。

 「我らが万能なる主よ、

 ただいま現在を見通すこの眼が映像を捉えました・・・!

 戦の神アレス様が、

 激しく鳴動する大地の中でそのお命を落とされましてでございます・・・!」


オリオン神群の王・・・神々の主ゼウスは微動だにしない。

配下の者の死にも何ら動揺を見せず、

モイラの忠実なる報告を受けて、口元をやや緩ませるのみだ。

 「フッ、ついにやってきたか、ポセイドン・・・!

 この私に引導を渡されにか・・・。

 今を見通すモイラよ、

 それで、ヤツは今、どの辺にいるのだ?」

 「恐れながらゼウス様、

 あの景色は恐らく『嘆きの谷』・・・、

 黒衣の女神デメテル様のテメノス付近かと・・・。」

 

 「デメテルか・・・、食えない女よ、

 このまま、ポセイドンが真っすぐこのピュロスにやって来るのなら、

 そのまま『嘆きの荒野』を通り抜け、

 ヤツのかつてのテメノス、パキヤ村に辿り着くな?

 そうなれば、このピュロスも目と鼻の先・・・。

 いいだろう、

 ここまでやって来るがいい、ポセイドン、

 だが、それまでに絶望を味合わせてやる。

 伝令・・・『虹の神イリス』を呼べい!」


すぐに一人の流麗な女性がゼウスの元に現れる・・・。

 「お呼びでございましょうか、我が主・・・。」

 「イリスよ、そなたに用を頼みたい、

 これより『死を司る神』タナトスの元に出向き、

 『嘆きの荒野』にて、ポセイドン以外、全ての地上の人間を始末するように伝えてくれ。

 報酬はトモロスのテメノスをそのままくれてやるともな。」


美しき金髪の女神イリスはにっこりと微笑んだ・・・。

 「畏まりました、直ちに出発いたします、

 それにしても地上の人間は哀れですね・・・?

 よりにもよってあの『タナトス』様に、醜くもむごたらしい死を賜る事になるとは・・・。」

 



次回はタケルの番です。


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