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第8話

 

老人の話は続く。


 「・・・当時、

 何世代か前のわしが駐留していた村あった・・・。

 ある不幸な出来事があり、

 その村の少女が非業の死を遂げた・・・。

 じゃが、

 その少女は死にきれず、

 悪霊と人間の境を彷徨っていたのじゃ。

 そこを通りがかったのがフラウ・ガウデンじゃ。

 彼女は彼女でお節介やきでな、

 その少女に残ってる生命力と引き換えに、

 その少女・・・マリーという名の女の子の魂を、

 自分の似姿である人形のカラダに注ぎ込んでしまったのじゃ・・・。」

老人は再び沈み込んでいる。

よほど苦い思い出なのだろうか。

ガラハッドが気を利かして飲み物を注文した。

暖かいコーヒーがやってくる。

 「・・・おお、すまんな。

 ところでマーゴ、おまえさん詳しそうじゃな。

 人が死ぬと、魂がどうなるか分るかね?」

 「ええっ?

 そりゃあ、色々、調べたりしましたけど、

 実際どうなるかなんて・・・。

 天国か地獄へ行っちゃうとか?」

 「そりゃそうだのう、

 わしに言わせれば天国も地獄も大差ない。

 じゃがの、

 まれに黄泉の世界に行けずに、

 この世に留まる魂もあるんじゃ・・・。」

 

かなり突っ込んで聞いてみたいが話が思いっきり逸れそうなのでマーゴは我慢した。

 「それって悪霊の事とか?」

 「悪霊とは限らんがの、

 ま、それも似たり寄ったりじゃ。

 この世に留まるパターンは大きく三つある。

 浮遊霊、

 比較的広範囲に動けるがエネルギーは弱い、

 わしは幽鬼と呼んでおる。

 この世から浄化されるのも早い。

 

 そして憑依霊または地縛霊、

 物や人、土地に取り付く場合じゃな・・・。

 対象物がその存在を継続する限り、

 長い間この世にあり続ける魂じゃ。

 大体はこの二つの枠で収まるんじゃ。

 しかし人形の場合は違う、

 ・・・霊そのものが人形と一体化してしまうのじゃ。

 その形態は生きている者と同じとさえ言って良い・・・。

 あのマリーという子は、

 魂があまりにも強すぎたとはいえ、

 放って置けばさすがに今頃は浄化しているはずじゃ。

 じゃが・・・、

 人形に封じられてしまったが故に、

 未だに浄化されずに人形の内側に閉じ込められておるのじゃ。」

 

これだけ聞くと余りにも残酷な振る舞いと言えるだろう。

マーゴの次の質問はもっともな話である。 

 「なぜ、その・・・

 フラウ・ガウデンは彼女にそんな仕打ちを・・・。」

 「フラウ・ガウデンにしてみればマリーの為なんじゃろう?

 あの時のマリーの憎しみと苦しみは、

 想像を絶するものだったようじゃ・・・。

 人形のカラダに入れば感情を失くす。

 強い心のエネルギーを変換することによって、

 その人形は動くのじゃからな。

 マリーの苦しみを失くすには、

 確かにそれが最善の方法だったかもしれん。

 ・・・いや、

 誰にもどうすれば良かったかとは言えんのじゃろうな、

 結局、マリーは自分でその道を選んだ。

 とはいえ、わしにも責任はある。

 何とか彼女を解放する手段はないかと、

 いろいろ手は尽くしてみたんじゃが、

 情けないことに何度転生してみても、

 うまい手段は見つけられん。」

 「わたしたちに協力を求めてまで、

 彼女を助けようとするのは、

 かつての自分の罪滅ぼしのため、

 ・・・てわけ?」

 「まぁ・・・そんなとこじゃ・・・。」

 


それでは現在の状況も把握しているのだろうか?

 「今度のことに心当たりはあるの?

 ヒウラの話によると、

 人形がどこかに閉じ込められてしまっているという話だけど・・・?」

 「物理的に彼女を拘束することは可能かもしれん・・・、

 セメントで固めてしまうとか、

 氷付けにするとかな・・・。

 ・・・じゃが、その・・・

 未来を透視するという女の子かの?

 その子の話じゃと、

 迷宮のようなところでウロウロしていると?

 ・・・それならば、

 何者かの魔術の影響下にあるようじゃな・・・?」

 「魔術ですって!?」

 「あんたらの建物の中にいたとき、

 わしは人間の争いには関知しないと言ったじゃろう?

 じゃがな、

 人間の範疇を越えようとしているなら話は別じゃ・・・。」


老人は大きく息を吐く。

 「他人の命を吸い取って200年以上生き続けている者がいる・・・。

 わしも直接、

 対峙したことはないがの、

 ・・・恐らく奴じゃ! 

 いかなる神をも信奉せず、

 己の悦楽と欲望のみのために魔術を行使する性的倒錯者・・・!」

 


 「えっ!? レッスルおじ様、

 あなた以外にもそんな人いるのぉ!?」

 「おいおい、酷いぞ、

 わしは変態じゃないからの!」

 「あ~ん、ごめんなさ~い!

 そういう意味じゃないのよぉ!

 そんなに長生きしてる人がいたなんて、

 調べられなかったからぁ・・・。」


マーゴは老人の、

見かけより太い腕に抱きついた。

最初は、

尋問するのに便利なので自分の色香を使っていたのだが、

だんだん本気でレッスルに興味を持ってきたらしい。

この辺りは・・・

生まれ持った性質なのだ。

マーゴは、自分の事を淫乱とも男好きとも思っていない。

片っ端から恋愛しているわけでもない。

ただ単純に、

他人にちやほやされたり、

逆にちやほやしてあげるのが大好きなだけのだ。

そして勘違いした男達が寄ってくると、

 冗談やめてよねッ・・・

と追い払ってしまうのである。

全く男にしてみればいい迷惑である。

・・・ホラ、

今もライラックの目が・・・。

 


 

老人は、

自分の腕にくっつくマーゴの柔らかい肌・・・というか胸・・・

の感触を味わいつつも、

自らの本能の誘惑に、

必死に理性を働かせて抵抗する。

年取っていたって男は男だ、

文句あるか!


 「ゥオッホン!

 そ、それでな、

 その人形が力を使い果たし、

 眠ってる隙にそのカラダを奪った男がおるのじゃ・・・。

 名を・・・

 ノーフェィスのバァル、

 通称『赤い魔法使い』じゃ。」


ライラックが興奮して立ち上がる。

ただでさえいらついていた時に、

信じられない言葉を耳にしたからだ。

 「待ってください!

 ノーフェィスですって!?

 あれは我ら騎士団が壊滅させたはずだ!」

老人が驚いたように見上げる。

 「・・・ほう、

 あの下らない集団を潰したのはおまえさん達だったのか?

 なら、詳しい説明は要らんな?

 確かに組織は潰れたんだろうて?

 じゃが、

 肝心の創設者を逃がしてしまったようじゃのぉ?」

 


 

 「ライラック、

 ノーフェィスって・・・

 あたしも名前しかは聞いたことはないけど・・・?」

 「マーゴも知ってるだろう、

 今現在、

 騎士団が危険監視対象に置いているのが・・・。」

 「ドイツの傭兵部隊『黒十字団』・・・

 ウラの顔は党首が悪魔崇拝者と言われてるわね、

 それと南米に本拠地のある多国籍軍需産業『デミゴッド』などね。」

 「そう、そして今から十数年前、

 まだおれが騎士団の正規メンバーでないころ、

 監視対象から殲滅対象に移行したグループがあった。

 おれらの上官のベリノア、

 君の叔父さんのケイ、

 南洋支部のガワン、

 北米支部のリッチー達が叩き潰したのがその狂信者の集まりさ。

 ・・・神や悪魔すら信じず、

 ただ神秘術の研究と実践だけを目的として、

 この世の全てのモラルや法を無視した集団。

 ・・・レッスル様、

 もし、あなたの言うことが事実なら、

 我々騎士団は、

 その男を排除するために全力で協力します。

 ・・・いや、むしろ我々の果たすべき使命です!」

 


 

 「ふむ、ならば手伝ってもらおうかの?

 だが、わしの目的は、

 あくまで人形・・・メリーの救出じゃ。

 あの男がメリーを捕縛しているのなら・・・、

 そちらはお前達にお願いするとしようかの?」

 「かしこまりました!

 ガラハッド、

 空港に着いたら本部のケイに連絡をしてくれ。

 それと義純の騎士団専用端末に、

 ノーフェイスの資料を送り届けるようにと!」

 「分りました!」

 「あ~ん、

 ライラックかっこいい~!」 

レッスル爺さんの腕にしがみついたまま、

そのセリフを吐くか?

ライラックは泣きそうだ。


 「・・・それでおじ様、

 どうして彼女をメリーと呼ぶの?」

 「ふむ、それについては、

 向こうにいる者たちと合流してからにしようかの・・・?」

彼らを乗せた飛行機は、

まさに日本の成田空港に着陸態勢をとろうとしていた・・・。

 



2ch時代、霊魂の定義で誰かから突っ込みが入った記憶があります。

この時点でか、ストーリーしばらくしてからのものか忘れました。

その場は矛盾がないように説明した気がするんですが、

記憶がはっきりしないだけに自信がありません。

これはおかしいという点がございましたらどなたかご指摘下さいませ。



あくまでストーリー上で矛盾があるかどうかで。

定義は人それぞれでしょうから。

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