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緒沢タケル編11 黒衣のデメテルと純潔のアテナ 黄金色の瞳を持つ獣

今回はタケルの内面の出来事です。


この場面を区切りとして、デメテルの村での前半エピソードは終了です。


暗い・・・。

ここはどこだろう?

今って・・・何をしていたんだっけ?

家・・・家に帰った方がいいのかな?

早く帰らないと、また父さんや母さんに叱られる・・・。

姉ちゃんはかばってくれるかな・・・


あれ? でも・・・

家ってどこにあるんだ?

ここからどうやって帰ればいいんだ?

姉ちゃん、早く迎えに来てよ。


・・・いや、家はなくなっちゃったんだ・・・

父さんも

母さんも、

もうどこにもいない・・・。

姉ちゃんは?


 『タケルー!』


姉ちゃん!?

いや、違う。 

姉ちゃんの声じゃない・・・。

でも行ってみよう・・・。

懐かしい響きがする・・・悪い人の声じゃなさそうだ・・・。

 

 

 『タケルー、聞こえるかーい?』

聞こえるよ、今行くよ・・・。

 『やっと戻ってきたの、タケル?』

戻ってきた? おばさん誰?

 『誰でもいいよ、

 でも一人だったのかい、今まで。』

うん、途中までは姉ちゃんと一緒だった。

 『はぐれてしまったのか?』

そうなのかもしれない。

今は・・・一人だ。


 『どうして一人になったんだい?』

どうしてだろう? 

父さんも母さんも、あまり好きじゃなかった。

 『どうして好きじゃなかったのかね?』

父さんも母さんも厳しかった。

姉ちゃんにも厳しかったけど、

姉ちゃんは何でもできるから、最後は姉ちゃんがちやほやされた。

 『だから今まで、余計にお姉ちゃんの後を追っかけてきたのかい?』

うん、そうかもしれない。

父さんや母さんがいなくなった時も、

今思うとそんなにつらくなかった。

その時の姉ちゃんの顔を見た方がつらかった。


 『でも、その時、

 お前はお姉ちゃんを守る男になるんだ、って決めんたんだろ?』

・・・うん、そうだ・・・そう決めたんだ。

でも。

 

 『お前はお姉ちゃんを守れなかった・・・。』

うん、守れなかった・・・。


 『その時からお前は一人ぼっちだったのかい?』

ああ、そうか、その時から一人だったんだ。

 『それで、お前はこれからどこへ行くつもりなんだい?』

・・・わからない、

姉ちゃんがいないなら、今は逃げないと・・・。

 『逃げるって何から?』

おばさんには聞こえない? 

あの光る眼が見えない?

後ろをぴったりと大きな獣がやってきてる。

 『見えないねぇ? 本当にそれはいるのかい?』


ホントだよ、

今までも時々、あのきんいろの目に見つめられていた気がする。

 『・・・そうかい、それはずっと昔からなのかい?』

そうかもしれない・・・だんだん近くに寄ってきている・・・。

もうじき、僕は食べられるのかもしれない・・・。

 『でもタケル?』

うん? なに?

 『何故そいつは、一気にお前に襲いかからないのだろうねぇ?』

えっ? わからない・・・どうしてだろう?

 『そいつはお前を一飲みにできそうな程、凶暴で恐ろしいのじゃないのかい?』

 

うん、そうだと・・・思う。

 『思う? わからないのかい? 

 それじゃあ、お前の後ろにいるモノは、

 お前が考えているようなモノじゃないのかもしれないかねぇ?』


じゃあ、何がやってきてるの?

 『さぁてねぇ、でも何かを待ってるのか・・・

 それとも、お前を見守っているのかもしれないよ?』

僕を見守ってる? そんな人はいないよ。

・・・もういないんだ・・・。

 『いいや、タケル、お前は一人じゃないさ・・・。』

え?

 『お前が自分で、自分は一人だと思い込んでいるだけさ・・・。』

そんなことはないと・・・思う・・・。

 『タケル、どうしてお前のお姉さんはあんなに強かったと思う?』

ええっ? 

そ、それは分からないよ・・・僕とは違う・・・。

 『そうだね、お前と違う物が一つある・・・。』

なんだい、それは?

 『それはね、

 ・・・自分に守るものがあるかどうか・・・。

 お前のお姉ちゃんは、お前を守るために強くなったのさ。』

 



僕を・・・守る・・・ため?

 『人は何かを守るため、時としてとても大きな力を引き出す事が出来る・・・。

 今のお前にはいないのかい?

 でも、思い出してごらん?

 お前が強くなり始めたのは、

 お姉ちゃんを守ろうと誓った時からだろ?』

そう・・・かな、

そう言われれば・・・そうかもしれない。

 『いま、お前が守りたい物は何なんだい?』


それは・・・。

 『まぁ、すぐにわからないなら、答えを急ぐことはないさ、

 ただね、今どこに行けばいいか分からないのなら、

 自分を一番よく知ってる者に、明かりを照らしてもらってもいいんじゃないかね?』

一番、僕の事をよく知っている・・・。

それは、まさか後ろからやってきている獣・・・?


 えっ!?

ああっ! こんなにも近くに・・・!

一体いつの間に・・・見える・・・鋭い牙が!

あんなにも大きな口を拡げて・・・

助けておばさんっ!


 グワァルルッ!


・・・あれ?

き、消えた・・・。

僕を通り越した・・・この先に・・・?

おばさん・・・、おばさんの言うとおり、襲われなかったよ・・・おばさん?


おばさん!?

 

 

 『言った通りだろう、タケル・・・』

ああ、良かった、

いなくなっちゃったかと・・・おば さ 


おばさん?

どうして・・・

おばさんの顔が地面に転がっているの?

どうしておばさんの手足がバラバラになって飛び散っているのっ?

 『怖がる事はないよ・・・、

 こうしてあたしのカラダはお前の栄養になるんだ・・・

 お前のお姉さんの死も、きっとお前の栄養になっているさ・・・。』


そ、そんな事・・・

何、言ってるんだかわからないっ!

姉ちゃんが死んだのは僕のせいっ! 

そんな僕が生きていて何の意味があるって言うんだっ!?

 『・・・お前も誰かの為に生きれば、わかるんじゃないのかねぇ?』

だ・・・誰? 誰のために?

 『まずはそれを見つけたらどうだい?

 きっとそれまで、あの獣はお前を見守っているさ、

 お前はまだ、守られているままなんだからね・・・。』


誰に!? あの獣!?

アレは一体何なの!?

 『あの獣は、お前のお姉ちゃんを食べたのさ、

 そして・・・あの獣のお腹の中には、

 まだ、お姉ちゃんがいるのかもしれない・・・

 消化もされずに、お前を心配で見ているのさ。』

 


え?

いまの・・・あの獣の中に・・・

お姉ちゃんは生きているの!?

 『人は死ぬんだよ、

 死んだ者は生き返らない。

 でも、もしかしたらお前はお姉ちゃんの遺産を全て受け取ってはいないのかもしれない、

 なら全部、受け取ってやったらどうだい?

 その時、彼女の心残りはなくなるんじゃあないのかい?』


どうやって?

そうすればお姉ちゃんに会えるの?

 『ははは、だからもう彼女は死んだんだろ?

 一番簡単な方法は、お前があの獣に食われる事だよ。』

やだよっ! そんな怖い事!!

 『なら一歩ずつ、今の獣が通り過ぎた道を進む事だね?

 なぁに、このままだと意外と早く彼女に追いつく事ができるかもしれない。』


おばさん、・・・おばさんは!?

 『私の事は心配いらない、言ったろ?

 私もお前を成長させる栄養の一つさ、

 この先、出会う者たち・・・

 それら全てがお前を成長させる。

 忘れちゃあいけないよ、タケル。

 お前はみんなに支えられてここまで来たんだ、

 この先、出会う仲間も、お前が作る家族も・・・国も、世界も・・・

 それら全てを守る為にお前は進んでいくんだ。

 それが、お前が自分に課した本当の運命・・・。』

 

おばさん一体誰なの!?

 『誰だっていいだろう?

 これは夢さ、お前の夢の中・・・、

 てことはお前は本当は知っているんだよ、

 自分がどうすれば、どこにいけばいいのか・・・。

 ちょっと心を揺さぶられて、わけわかんなくなっちまったんだろう?

 そう言う事もあるさ、

 なぁに、もう目覚める時は近づいている。

 ほら、周りの景色が明るくなってきているだろう?

 お前の仲間がお前を呼んでいるんだ。

 あまり 心配かけちゃあいけないよ・・・。』


僕は・・・オレは・・・!

 『さ、お喋りはここまでだね・・・、

 もうこの夢の出来事は忘れちまいな?

 まぁ、忘れちまったって大事な事は理解できてるだろうさ、

 一休みしたら元の道に戻ればいいんだ、

 じゃあね、タケル・・・、

 いつかお前が、あの獣ともう一度出会える時まで、

 それまでさよならだ・・・。

 お前には、不憫な目に遇わせちゃったけども、

 大きくなってくれて嬉しいよ、

 ・・・あの人も口では無愛想な事ばかり言ってたけど、お前を心配していたさ・・・。

 私達は、十分満足だよ・・・

 タケル、 元気で  ね・・・ 』


おばさん、・・・あんた、まさか・・・母さ

 




あくまでも「夢」の中の出来事です。

明らかな事実が判明したわけでも、誰かが何かしたとかではありません。


そして次回、ついに・・・新たな登場人物と!

さらにサルペドンの正体が判明!!


あ、もうみんな知ってる?



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