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緒沢タケル編11 黒衣のデメテルと純潔のアテナ 「大地の夫」

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 「そなたは自分達の祖・・・

 『紺黒』の髪のポセイドンと、このデメテルの関わり合いを知っておるのか?」


どうやら本当に真面目な話題のようだ。

だが、タケルはスサに入って以来、

ほとんど戦闘の連続で、古来の不確かな伝説の事まで考える余裕などはなかった。

 「あ、え、いや、あんまり・・・。」


デメテルは眉をしかめ、サルペドンをなじり始める。

 「なんじゃ?

 そなたは仮にもポセイドンの子孫になる者に何も教えてはおらなんだか!?」

言い訳に追われるサルペドン。

 「・・・む、仕方がないんだ、

 地上にはギリシア神話以外にも多くの地域の神話が残っている。

 その中で、どの地域のそれが真実に近いかなどと、

 大勢の学者が集まっても中々結論も出る訳ではないし・・・。」

 「それではそなたは、

 ポセイドンとデメテルの縁起も信用するに足らぬ、と言うのか?」

 「いや、そう言うわけではないが・・・。」

 「ふん、まぁ良いわ、

 だがサルペドンよ、

 そなたが今までこの少年に教えてこなかったこと・・・、

 それをわらわが話しても問題はないのか?

 もっとも・・・何かを確かめるか、はたまた彼に何かを教えるために、

 このデメテルのテメノスを避けずにやってきたのであろう?」

 

サルペドンは肯定も否定もしない・・・

できない・・・というべきなのだろうか?

そしてタケルは今の会話で、さっきのデメテルの問いを思いなおした・・・。

 「この村へ来た理由・・・」?


単純に道なりに来ただけだが・・・、

デュオニュソスの事件後、無用な衝突を避けるために、

大きな集落を避けて行軍すると言う選択肢は確かにあった筈である。

しかし、たまたま村を離れたルートを見つけられなかったとも言えるし、

無理してまで他のルートを取る事もないと思っていた、・・・それだけである。

だが、もしサルペドンがデメテルの言うように、何らかの目的があって、

敢えて他のルートを選ばないようにしていたというのなら・・・、

一体、この村に・・・

デメテル、彼女に何の目的があるのだろうか?


もうサルペドンに用がないと見るや、デメテルは再びタケルに向き直り、

その目的の内の一つを・・・語り始めた。

そう、その目的はサルペドンが心に留めていたものと同一のものである・・・。

彼が自分の口から語る事の出来ないもの・・・。

それをデメテルに語らせるために、

彼はこの村を暗に目指していたのである。

大地の女神デメテルの元へ・・・。

 

 

 「さて・・・何から話そうかの?

 そうじゃな?

 まず100年以上前にこの地で起こった事件については知っておるのか?」


えーと、確か・・・

誰から聞いたんだっけかな、デュオニュソスかヘルメスか、

オリオン神群の王ゼウスと、それに歯向かう一派の・・・。

 「オレが覚えているのでは、地上の人間を滅ぼすのか否か、

 という問題でゼウスと対抗勢力で一悶着あったとか・・・。」


デメテルはにっこりと微笑む。

体型のせいもあるのだろうが、普通に話すと他人を安心させる笑顔だ。

キャラ的には、母親か学校の先生でも演じたらハマるのではないか?

まぁ、いまはどうでもいいか・・・。


 「そうじゃな・・・。

 あの時、ゼウスに逆らったのは、神々個人の思想と言うよりも、

 それぞれの神の先祖から受け継いできた神々の血筋・・・。

 その遺伝子による影響の方が大きかったのではないかとわらわは思う。

 ゼウスと真っ向から対立したのは、大地の神ポセイドン、

 そしてそのポセイドンを筆頭に、

 このデメテル、デュオニュソス、ヘファイストス、そしてアテナ・・・。

 それらの名だたる神がゼウスの方針に逆らった。」

 

 「重い罰を受けた者もいれば、

 わらわのように軽い謹慎で済んだ者もおる。

 首謀者のポセイドンは重傷を負い、このピュロスから追放された。

 ・・・ふぅ、

 と言っても今は過去の経緯は置いておこう、

 重要なのは、その神それぞれが受け継ぐ能力とその本質・・・。

 デュオニュソスが樹木と人間の本能を象徴するように、

 このデメテルは大地の恵み、豊穣を約束する女神、

 とぉっても古い言葉では、

 『母なる大地 ダー・マーテル』と呼ばれていたそうじゃ。」


いつしか彼女の言葉に聞き入っていたタケルが、

デメテルの最後の単語を追うように呟いた。

 「ダー・・・マーテル?」


するとテーブルの向こうでサルペドンの詳細なる説明もついてくる。

 「マーテルはマザーって意味だ。

 簡単に訳すと『母なるダー』になるな。」


 ああ成程、アルファベットにすると分かりやすそうだな・・・。

 「ん? じゃあダーって?」

 「今では大地を意味する単語としかわかっていない。

 関連性でいえば、穀物の播種量を示す単位もダーだ。」

デメテルもそれに頷き話を戻す。 

 「そしての、その『ダー』の名を冠する神がもう一人おる・・・!」

 

タケルはきょとんと聞き直す。 

 「もう一人?」

 「そう、すなわち大地を意味する名をかぶる者がもう一人おると言う事じゃ、

 もうわかるであろう?

 それがそなた達の祖、大地を治める者『ポセイダーオン』じゃ!」

 古い言葉故、どちらが正しいかわらわにもわからぬが、

 伝える地域によっては『ポテイダーオス』とも呼ぶらしい。」


 その呼び名は初めて聞いた。

 確かに「ダー」の名前が入っているな、

 これもサルペドンが詳しいのか?


そう思って、タケルは一度サルペドンの方へ視線を投げる。

期待通り、サルペドンは軽く頷いたのち、

その名前の説明をしてくれた。

 「ポセイ、ポテイが英語のlordに相当し、

 さっきのダーマーテルと併せて、

 『大地の夫』または『大地の主人』・・・そんな訳になるな。」


タケルは一瞬考え込んだ後、

それらの解釈から、至極容易に導き出される答えに辿り着く。

 「二人とも大地の・・・

 あっ、ていうことはポセイドンとデメテルは・・・夫婦?」

 

その途端、

待ってましたとばかり、またデメテルが抱きついてきた―っ!

 「ty、ちょっとデメテルさん、

 どさくさに紛れて・・・

 どこを・・・アッー!」


果たしてこの村を出発するまで、

タケルの貞操は無事なままでいられるのか、本当にそれだけが心配だ。

と、とにかく、

元々デメテルとポセイドンに列なる者は、神話上夫婦関係だから、

今もこうしていちゃついて何ら問題はないと、

そういう事を言いたいのだろうか、この女神は!?


別にタケルを助けようなどとは微塵も思っていないが、サルペドンが冷静な突っ込みを入れる。

 「だがな・・・、

 ギリシア神話ではポセイドンとデメテルに婚姻関係は見当たらないんだ。」

 

 「・・・えっ!?」

タケルの下半身を手でまさぐろうとしていたデメテルの指の動きも止まる。

 それはどういう意味なんだろうか?

 結構ギリシア神話って男女関係激しかった気もするけど・・・。

 

婚姻関係、皆無という訳でもないんですけどね。


それと、今現在の研究はわかりませんが、

ミケーネ文明ピュロスから出土した史料に、デメテルの名は見つかっておりません。

当時ピュロスではポティニヤという女神の名が記されています。

ただし、このポティニヤが固有名詞なのか、

「大女神」を意味する一般名詞なのかは不明だそうです。

また、クノッソスからは「a-ta-na-po-ti-ni-ja」という文字が出土しています。



次回、ある事実に気付いたタケルに異変が。

「ポセイドンとスサノヲ」

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