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緒沢タケル編11 黒衣のデメテルと純潔のアテナ 人身御供


ところが、

このタイミングでデメテルはタケルを放し、その視線をスサの二人の女性に向ける。

 「その方ら!」


またもや白いふくよかな腕と指が高々とかざされる!

その指先の向こうにはマリアとミィナ!

 「そこな、美しい姫君と、可憐な少女よ!

 そなたたちもここへ来ると良い!」


思わずミィナは自分の顔に指を向け、

「あたし!?」とだけ素っ頓狂な声をあげる。

 可憐って言ったか?

 あのミィナを?


デメテルは頷きもせずに、二人の行動を待ち受けている。

ミィナとマリアはお互い顔を見合わせると、

やがて、恐る恐るタケルの後ろにまで近付いてきた。


 なんだよ・・・、

 タケルの相手してりゃ満足なんじゃねーのか、このおばさん・・・。

と、ミィナは思っていたのだが・・・、

近づいて見ると、確かにこのデメテル・・・肌がきれいだ・・・。

そして意外にもマリアも同じことを考えていたようだ。

彼女の視線はデメテルの腕や胸元に注がれている・・・。

どうもデメテルは男女見境がないのかもしれない、

というか、自らの魅力を万人にアピールしたいのか?

 「そなたたちもわらわの肌に触れる事を許そう。」

 

タケルはそれを聞いて、

鼻っ柱の強いミィナが、何か失礼な事を言わないか心配だったのだが、

マリアもミィナも、素直にデメテルの美しき皮膚に兜を脱ぐこととなる。

 「き・・・っ綺麗、

 どうしたら、こんな柔らかく・・・吸いつくような肌が・・・。」

 「すっ、すごいわ・・・

 マシュマロのような、ていうけど、本当に存在したのね・・・。

 これだけの質感なのに、たるみもシミも一切ない・・・。

 どんなケアを・・・。」


男と女で感じ方は違うのかもしれないが、

二人ともデメテルの奇跡の肌に吸い込まれてしまった。

タケルは一方で自分が解放されたことを喜び、

もう一方で、ミィナとマリア、

二人の心を捉えてしまったデメテルに改めて驚愕する。

デメテルは上機嫌だ。

恐らく彼女は、格好いい男性や綺麗な女性より上の視線に立てれば満足なのかもしれない・・・。

そしてさらに・・・。

 「ほっほほ、このピュロスには他にも美しき女神たちはおるが、

 肌の美しさ・柔らかさではこのデメテルの右に出る者はいないと自負しておる。

 それはな、この村から採れる最上の穀物を効率よく摂取しておるからじゃ。

 まぁ、今日限りではあるが、そなた達もこの村の料理を堪能してゆくがよい。

 一日やそこらでは効果は薄いが、味の方も保証しようぞ。」

 


途端にミィナの目が輝く。

マリアさんもまんざらではないらしい。

長いハードな旅の疲れで、肌もがさついていたせいもあるのだろう。

それに・・・、

タケルには気づかない事だが、マリアが警戒していたのは、

デメテルから「ある一つの真実」が語られてしまう事だけ・・・。

それ以外は、サルペドン同様・・・

デメテルに対して何の敵意も害意も心配していなかったのである。

一体、デメテルという女神の本性は、如何なる性質のものなのだろうか?


なお食事の席ではあるが、

上座のデメテルの・・・すぅぐ隣にタケルの席が用意された。

謙虚に・・・いや、半分怯えて固辞しようとするタケルの背中を、

ミィナが一生懸命押しこめる。

 「あっ、て、てめぇ、ミィナ何してんだ!?」

 「いやあ、もうデメテルさん、

 コイツもう、好きにしちゃってください、

 煮るなり焼くなりどうとでも!」


 既に場の空気になじみやがったな、コイツ・・・。

 


そして勿論、デメテルは・・・。

 「ほーっほっほっほ!

 照れるでないぞ、タケルよ?

 何も取って食ったりはせん、

 いや・・・ある意味ご馳走になろうかの?

 若く逞しいそなたのカラダは美味しそうじゃのう・・・。」


 ええええええええっ・・・。

 どこまで本気なんだ、このヒト・・・。

 何でサルペドンは何も言ってこない・・・?


ここで初めてタケルは気づく。

 オレ・・・

 もしかして人身御供・・・?


そうだ、確かに図式としては、

仮にも敵意すらなかったデュオニュソスの殺害に、怒り狂ったデメテルを鎮めるために・・・

一人の若者を・・・女神の傍へ・・・


 そんな馬鹿な!!

 「ちょっと!

 お前ら、これ話が違うぞ!?」


だんだん洒落に済まなくなっている気がしたタケルは席を立とうとするが、

隣の女神はそのタケルを冷静に呼び戻した。

 「落ち着きゃあ!

 ポセイドンの血を継ぐ者よ!」

・・・

その声は先ほどまでのふざけていたデメテルとはまた違う。

その眼差しには真剣さが感じられる・・・。

 


デメテルはタケルを再び座らせると、

自らの白い腕をタケルの胸板にまた這わせ始めた・・・。

 え・・・だからちょっと・・・。


 「タケルよ・・・

 何故、そなた達がこの村に来たのか理由を知っているのか?」

いきなり唐突的な質問がデメテルから出される。

 「来たのか」って・・・

 そのルートを選んだのはオレ達・・・。

 理由もクソも、ピュロス王国の首都を目指しての行軍の途中だと言うだけで・・・。

 

言い淀むタケルを無視してデメテルは質問を続ける。

 「わらわがそなたにじゃれつくのが、

 単にわらわが男好きのせいかとも思っていまいか?」


 え・・・違うの?

そこでデメテルはカラダを離し、

食卓に用意された飲み物が各テーブルに行きわたったのを見ると、

少し離れているサルペドンに合図した。

 「サルペドンよ、乾杯の声はそなたが仕切るがよい、

 ・・・そのぐらいは働け・・・!」

 

またもタケルに違和感が生じる。

デメテルの、サルペドンに対する態度はあまりにも馴れ馴れしい。

むしろ、まるで何年も行動を共にした友人か、

またはそれ以上の間柄のようにも見える。

だが、さっきの挨拶の様子からすると、

初対面同士のそれに間違いはないはずだろうし・・・。


一方、サルペドンはバツが悪そうに咳払いをしたのち、

各テーブルの面々を立たせ、挨拶を行った。

特に内容はなく、互いの出会いと祝福を願った形式的な挨拶の後、

乾杯が行われ、再び面々は席に着く。

そして、豪勢な食事のスタートだ。

喉を潤し、少しずつ料理を口に運ぶと・・・確かにうんまぃ!

肉は少なく、野菜や芋類中心の筈だが、

卵やクリームも併用して万人が受け入れられる味になっている。

デュオニュソスの村と言い、このデメテルの宴席と言い、

何日も暮らしていたら、そりゃあ戦いの日々がバカらしくなっていくのも仕方がない。

改めてタケルは、自分の心が流されないように自戒の念を込めなおすと、

隣のデメテルが先程の話を繰り返した。

 「さて、先ほどの話じゃが・・・。」

 そうだっ、何だったっけ・・・!?

 


次回、説明回、

この地底世界ピュロスで過去に何が起きたのか。

そして私たち現実世界の神話や成り立ちについても述べてゆきます。


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