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緒沢タケル編11 黒衣のデメテルと純潔のアテナ 衝突回避

あ、デメテルの性格までは進んでないや。

次回に持ち越し。



 

案の定、デメテルの口から流れる言葉は辛辣なものだ。


 「よくもまぁ、そんな白々しいセリフが出るものだ、

 このわらわが、そのような戯言を信用するとでも思うのか・・・?」


取りつくシマはなさそうである。

指をくわえて見ているだけしかできないタケルを他所に、

サルペドンは粘りながら交渉を続けるようだ。

 「黒衣のデメテルよ、

 オリオン神群一の平和主義者であるあなたを欺こうなどとは露にも思わない!

 私たちはデュオニュソスと、連日賑やかな宴を繰り返していた。

 彼を殺めねばならない理由などなかったのだ!」

 「ほぅ?

 それで・・・この平和を愛するわらわも、

 理由も無しに殺されてしまうのか?

 恐ろしいのぉ?」

 「いや! そんなことは・・・!」


サルペドンが更なる反論を試みようとした時、

黒衣のデメテルが反応が一変した・・・。

何か、重大なことを発見したかのように・・・。

 「待ちやぁ!」

 

サルペドンの申し開きが阻まれた。

デメテルは、しばらくサルペドンの方をじっと見据えていたのだが、

やがて静かな口調で質問を始めた・・・。

 「そなた・・・、そなたがこの集団のかしらか? 名を何と申す?」


サルペドンは一瞬、何かをためらったかのように見えたが、

一度タケルに視線を向けた後、デメテルに向き直る。

 「これは失礼しました、黒衣の女神よ・・・。

 私はカール・サルペドン、

 地上に伝わるポセイドン神の末裔スサの副官・・・。

 スサの総代は隣に控える緒沢タケル・・・!

 この地の言葉は私が堪能なので、私があなたと交渉させていただきたい。」


デメテルはその説明を聞くと、タケルとサルペドンを見比べた。

・・・だが、すぐにその視線をサルペドンに固定させる。

 「・・・フム、・・・その方、

 もう一度わらわの近くに寄って名乗るがいい・・・。」


その時、当事者のサルペドン以外に、

ただ一人、マリアだけが異常な緊張をして、事の成り行きを見守っていた・・・。

 

そのサルペドンも、

デメテルの質問にすぐに回答できない・・・。

何を迷う事があるのだろうか?

それがタケル達の素直な反応である。

だが、やはりしばしの間の後、

サルペドンはデメテルの要望に従って、

手ぶらのまま、彼女の輿の近くにまでやってきた。

 「私の名は・・・カール・サルペドンと申します・・・。」


一方、黒衣のデメテルは、

輿の上から静かにサルペドンの顔を見下ろしていた・・・。

そして彼の言葉を繰り返すようにつぶやく・・・。

 「カール・サルペドン・・・とな?」

 「そうです。」

 「サルペドン・・・のう?

 ふむ・・・、ではサルペドンよ、

 そなた、その眼にかけている黒いガラスを外せるか?」


マリアの心臓が早鐘を打つ!

そして、既にサルペドンは・・・ある、一つの覚悟を決めていた・・・。

彼はゆっくり、手をサングラスのつるに当てると、

静かにデメテルに断りを入れた。

 

 

 「・・・私の顔には大きな傷があります・・・。

 このサングラスは、その醜い傷を隠すためのモノ・・・。

 そのようなものをあなたに晒すには失礼かと・・・?」


だが、デメテルはそんなもの意に介さない。

 「構わぬ、取るがよい・・・。」

久しぶりにサルペドンがサングラスを外した・・・!

スサのメンバーは、

タケルを始め、全てサルペドンの背後に控えているため、

彼の顔を見る事はないが、

多少の驚きが、デメテルの私兵達に見られたようだ。

だが・・・デメテルの反応は、それとも少し違う。

彼女は、

サルペドンの顔を静かに、じっと見下ろし続けていたが、

やがて・・・黒衣のデメテルは何かを理解したかのように瞼を細めた・・・。

 「サルペドンとやら・・・。」

 「はい・・・。」

 「そなた、先ほどの話だが・・・、

 デュオニュソスを害する気のなかったこと、

 このデメテルのテメノスで騒ぎを起こす気がない事・・・、

 それら全て、

 己らの祖、大地の主ポセイドンの名前に誓えると言うのか?」

 


タケルはその言葉に違和感を覚える。

そんな大昔の神様の名前に誓った所で何になるというのだろう?

それが、このオリオン神群の風習だと言うなら仕方ないが・・・。

しかしサルペドンは、

まるでこの場に自分とデメテルしか存在しないとでも言うように、

神妙な顔もちで彼女の問いに答える。

 「・・・我らが祖、大地の主ポセイドンの名に賭けて誓う!」


威風堂々とサルペドンは誓った。

やましい所はない・・・それはタケルも一緒である。

だが、デメテルの反応は?


巨体を備えた彼女は静かなままだ。

細めた視線でサルペドンを見下ろし続けていたが、

やがてフゥッとため息をつくと、

その巨大なカラダの居ずまいをなおし、

自らの兵たちへの合図か、腕をあげて大きな号令をかけた。

 「者ども!

 矛を収め持ち場に戻るがよい!

 歓待の準備を始める!

 打ち合わせの通りにな!」

 

スサの後続達から歓声が上がる。

ほっとしたのはタケルも同様・・・。

いや、一番安堵したのはマリアかもしれない。

何故だろうか?

それはこの後のサルペドンとデメテルの会話に答えがあるのかも・・・。


一応、タケルの内心では、安堵の感情以外にも、

余りにスムーズに話が進んだ為、

却って罠や策謀に対する警戒心も湧きあがったが、

前を進むサルペドンとデメテルの姿に、

不思議な信頼感と言うか一種の温和な空気を感じ取っていた。

それは、その後の彼らの小さな会話を聞いた後では、益々確信めいたものに変わる・・・。


サルペドンの言葉は簡素なものだった。

 「・・・礼を言う、デメテル・・・。」


すでに彼女はサルペドン本人には興味を失くしかけていたようだが、

鼻で笑うかのように、涼しい口元を緩ませるた。

 「フ、まったく・・・他に言う事があろう、

 まぁ良い、

 小さいが宴席を設けておる。

 そこで、いろいろ聞かせてもらうぞ?

 い・ろ・い・ろ・とな・・・。」

 




次回、

史上最大の危機がタケルを襲う!!

「タケル危機一髪!!」




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