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緒沢タケル編11 黒衣のデメテルと純潔のアテナ サルペドンの懸念


 

既にデュオニュソスの村を離れ、幾日かが経過している。

村人から聞いたこの先の道筋は、現在のところ情報通り正確であり、

予定通りに進んでいるならば、そろそろ斥候から連絡が入る筈だ。


その日の午後、

程なくデメテルのテメノスを発見したと一報が入った。

斥候達も、デュオニュソスの村で最低限の会話能力を身につけているので、

村の人間にスサの来訪を告げたという。

村人たちやデメテルが、どんな対応をするのかは、

その場では分からないものの、

予定通り、本隊・・・タケルやサルペドン達は行軍を続ける。

恐らく、今晩中には到達できるのかもしれないが、

明日、疑似太陽が光り輝く時間に到着するぐらいが望ましいに違いない。

結局その日は、テントを張るにふさわしい場所を見つけ野営するだけだ。

 

はたして、

無事にタケル達はこの先を進むことができるのだろうか?


さてこの日、就寝前、野営テントの中心部には、

安全を考え、マリアとミィナ、女性陣の一幕がある。

もう後は寝るだけと言う時間になって、そのテントに一人の男性が訪れた。

サルペドンだ。

 「・・・二人ともまだ起きているか?」

最初はミィナが応対する。

 「ん? なんだい? こんな時間に?」

 「申し訳ない、マリアはいるか?」

着替え終わっていたマリアが、

何事かと表へ出る。

ミィナは、二人で何かあるのかな、とも思うが、

まぁ、スサでほぼ公認と言っても差し支えない間柄らしいので、

少しだけ興味を覚えつつ、二人の姿を眺める。

 

とは言え、別に2人は「そういう」関係ではない。

この状況に違和感を覚えるマリアはサルペドンの本意をただそうとする。

 「どうしたの、サルペドン?」

 「いや、・・・少し表に出れるか?

 ミィナ、気にしないでくれ、

 マリアはすぐに戻すから。」


 なーんだ、つまんね。

どうも色恋沙汰ではないようだ。

ミィナはあくびをして、自分の寝袋の中にごそごそと潜りこみ始める。

一応、念のために聞き耳を立てるが、

やはり、二人が何をしゃべっているのかは聞こえないので、

あきらめてミィナは眠る事にした。


そして、テントの外では・・・。

 「それで、サルペドン、話って?」

普段から厳しい表情ををしている彼だが、

この時も・・・いや、かなり真剣な面持ちでマリアに向きなおった。

 「話と言うのは他でもない、

 次のデメテルのテメノスなんだが・・・。」

 「ああ、ええ・・・?」

 「・・・恐らくだが、

 いや、デュオニュソスから聞いているから間違いない。

 デメテルは、100年以上前、

 オリオン神群内部の諍いを経験している生存者だ。」

マリアは一瞬、目をパチクリさせたが、

それがどんな意味を持つかすぐに気づいた。

 

 「・・・すると、サルペドン、

 彼女は過去の出来事を全て知っている、という事・・・?」

 「そうだ・・・、

 下手をすると、私が今まで隠し続けていた事実が、

 スサの仲間たちの知ることとなるかもしれない・・・。

 その時は、デュオニュソスの時以上の混乱が我々に起きる可能性もある。」

 「サルペドン、・・・もしそうなったら・・・。」

 「私は私の責任を負いたい・・・。

 デュオニュソスのあの時の言葉・・・、

 あれはタケルをなじっただけではない・・・。

 私自身、胸が張り裂ける思いだった。

 緒沢家に・・・先代や美香、タケルに責任を負わせて、

 私がのうのうと傍観している訳にもいかない。

 それに・・・タケル達に、

 これ以上重荷をかぶせたくはないのだ・・・。」

 

あの時、デュオニュソスは言った。

 『自分の手すら汚そうともしない、片目の年寄りだって・・・』

デュオニュソスはサルペドンの正体を知っている。

そして、

彼にどんな負い目があるのか全て承知していた・・・。

勿論、自分の罪深さ、責任・・・義務、

それらを忘れた事など片時もないが、

改めて他人に指摘されて、

これ以上タケルの後見人の立場のまま、

事を済ますわけにはいかないと思い立ったのだ。


マリアはそっと、目の前のサルペドンの厚い胸板に触れる・・・。

 「わかりました、・・・その時は・・・。」

 「私にも、そうなったら後々どんな結果が起きるか、わからない。

 だが、せめてマリア、

 その時はタケルや、他のみんなの事をよろしく頼む・・・。」

彼女は首を振って、その言葉を拒否する。

 「やめて下さい!

 そうやって、全てを抱え込もうとするのがあなたの悪い癖です。

 ・・・信じましょう、

 タケルさんや皆さんは、あなたを見放したりはしません・・・!

 美香さまも仰っていたじゃないですか・・・!

 希望を・・・、

 それが私たちにとって、最も必要なものであると言う事を・・・。」

 

二人の話し合いは、野営の見張り番が何人か目撃している・・・。

だが勿論、二人が何を話しているのか、誰も聞こえる場所にはいない。

もともとスサの最も重要な地位に就いている二人の会話だ、

誰も警戒することなく、それぞれ自分達の仕事にすぐに専念した。

そして、サルペドンとマリアは、程なく自分達の就寝場所へと分かれていった・・・。


果たして、次のデメテルのテメノスで、

一体どんな事件がスサ達を待ち構えているのか・・・、

この段階では、誰も予想すらできないが、

タケル、サルペドン・・・マリアや一般兵士たち、

それぞれ、重い不安を抱えながら、明日に備えて眠りに陥る。

既に、オリオン神群地下王国ピュロス・・・、

目的地ゼウスの治めるテメノスまで、

その道程の内、中盤に差し掛かろうとしていた・・・。

 




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