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緒沢タケル編10 酩酊のデュオニュソス デュオニュソスの死

今回のデュオニュソスのセリフの中に真実が紛れ込んでいます。


 「きゃあっ!?

 ウェテレウス!? な、なにっ!?」


ミィナの声に驚いてタケルが振り向くと、

例の男がミィナを抱きしめようとしている。

ミィナは咄嗟に顔をそらしたが、

まるで彼女の唇を奪いかねない迫り方だ。

 「て、ってめっ・・・。」

だが、見ればそのウェテレウスの目つきが尋常じゃない。

いや、それは酒田やグログロンガも一緒だ・・・。


既に四方八方から男どもの腕が伸び始め、

タケル達はカラダを動かす事も不可能になってきた。

タケルの周辺の空間が異様な目の光を湛えた男たちに埋め尽くされる・・・。

だが、その中に一人デュオニュソスだけが、

いつもと変わらぬ黒い、透き通る光のままタケルを凝視し続けたまま・・・。


 「デュオニュソス!

 お前は一体、オレに何を・・・!!」

 「さぁて?

 あなた次第だと言った筈ですよ?

 それより時間がないと言うのは真実です。

 その可愛い子を見捨てるのですかぁ?

 それとも彼女が知らない男や、またはよく知っている筈の身内に組み敷かれ、

 代わる代わるに圧し掛かられる様でもご覧になりたいので?

 ・・・あまりいい趣味ではないですなぁ?」

 

ついにタケルもぶちギレ始めた。

もはやデュオニュソスに対し敬意などあるはずもない。

 「てめぇ! いい加減にしろっ!

 黙れっ! デュオニュソス! 

 アンタが能力を使っていようといまいとどうでもいい!

 お前が止めるように言えば、こいつら引き下がるかも知れねぇ!!

 命令してくれ!

 オレは誰も傷つけたくねぇんだっ!!」

 「フハハハハハッ!

 この期に及んで何を言うのですかっ?

 あなたこそ嘘はいけません!

 私は本能を司る神ですよ?

 あなたの心の底に根付く暴力衝動・・・

 破壊衝動などとうに看破しているのです。

 自分ばっかりこんな目に遭って・・・

 自分一人に押しつけやがって・・・

 その鬱積した暗い情念を吐き出したくてウズウズしていた癖に!

 今がそれを吐き出す最大のチャンスなのですよ!?

 なぁに、私に操られたとか、

 後で言い訳などいくらでもできるじゃないですか!?

 安心してください?

 私は・・・このデュオニュソスはあなたの味方なのですよっ!

 今こそ・・・!

 あなたの本当の姿を!!」

 



その言葉を聞いた瞬間、

タケルの中で、何かが弾けた・・・。

彼の思考力は未だ機能していたが、

それが正常な状態と言って良かったのか、それは最後までわからなかった。


その時、

・・・デュオニュソスの言葉を聞いた時、

タケルは彼の黒い瞳に吸い込まれていた・・・。

他の相手を考える事は、完全に思考の対象外となっていた。

デュオニュソスの指摘・・・。

それはタケルにとって紛れもなく真実・・・。


 何故、

 こいつはここまで正確に物事を見極めていたのか?

 死んだ美香姉ぇのことなんか、詳しく話した覚えもない・・・。

 一体、この短い時間で誰から聞いたのか・・・。


それらの疑問が繰り返し湧きつつも、

もう一つの感情は、

それら全ての醜い自分の本心を打ち消すことしか考えられなかった。

自分の醜い心・・・

それを知っているのは、この目の前にいる透き通った黒い瞳の持ち主・・・。

自分の醜い心の化身・・・。

 

それに気づいたとき、

タケルは群衆を強引にかきわけ、右手は天叢雲剣を振り上げ、

その腕をデュオニュソスに向かって振り下ろしていたのである。


タケルの心には、その腕が決定的な位置に届くまで、

いくつもの濁った感情が交錯していた。


 コイツを消せ! 抹消するんだっ!

 ダメだ、殺すなっ!

 いや、これ以上、オレの心を見透かされては・・・

 違う! デュオニュソス避けてくれっ!


そんな迷いまくっていた心では天叢雲剣は発動しやしない。

単に凶悪なパワーを備えたまま・・・、

剣の軌道はデュオニュソスの首筋に向かって、流星のように光ったのである・・・。




 

その時、タケルはデュオニュソスの口が開くのを見た・・・。

天叢雲剣がデュオニュソスの首筋に差し掛かろうとする時・・・、

その口元から聞きなれた日本語が漏れたのを・・・。


 「タケル・・・お前の負けだ・・・」

 


激しい血飛沫が飛んだ!

その場にいた大勢の悲鳴と驚愕の声・・・、

一人の男が、頭部をあり得ない角度にぶら下げて、

地面に崩れ落ちたのである。


これが仮に、

ただの村人の死体であったなら、

却って事態は混乱に拍車がかかっただけかもしれないが、

誰もがその死体が誰のものなのか、

確認するにカラダを凍りつかせてしまう・・・。

そうとも・・・、

これはこの村の主・・・

酒の神・・・豊穣の象徴・・・、

本能を司る咆哮の神、ブロミオス・バッコスことデュオニュソス・・・。

つい先日まで、

来訪者であるスサ達と、楽しげに酒を酌み交わしていた筈の陽気な神が、

物言わぬ肉塊となり果てて、

首のあたりから大量の赤黒い液体を吐き出すその姿・・・。

 


それに誰もがパニックを起こし、

まるでクモの子を散らすかのように、方々に散ってゆく・・・。

酒田達、元々のスサのメンバーは、

どうしていいか、わからずに、その場にへたり込むだけだ・・・。


タケルですら、

感情を抑えきれずにしでかしてしまった自分の愚かな行為を、

どう受け止めていいかわからず、

その場で剣を振り下ろしたまま、固まっているだけだ。

いや、

彼が固まっている理由は他に依るもの・・・。


デュオニュソスの最後の言葉・・・。

そして、

・・・これに気づいたのはタケルだけかもしれない・・・、

デュオニュソスの頭が地面に弾んだ瞬間、

確かにデュオニュソスの視線はタケルに向けられていた・・・。

その段階で、

まだデュオニュソスに意識が残っていたのかどうか、定かではないが、

タケルは最後に見たのである。


デュオニュソスの瞳が、

たった一瞬、

黄金色きんいろに輝いたのを・・・。

 




最後まで飽きずにお読みいただいた方、

ありがとうございます。

それでも、全ての謎を明らかにしないまま 終わらせてしまい、

ご不満な方もいらっしゃるかと・・・。


この作品は、デュオニュソスの縁起を調べるに当たり、

最終的にこのようなストーリーの形になりました。

彼の神の起源の謎が、物語に多大な影響を与えました。


彼に関する謎は、

物語中の要所要所に手がかりやヒントを散りばめましたので、

できればいろいろ、想像するか、

他のメリーさんシリーズの作品を思い出してください。

過去の物語にも手掛かりは残しておりますので。


勿論、スサのメンバーの混乱は、

これで収まるモノでもありませんので、

次の「黒衣のデメテル」編でも、想像のお助けぐらいはできるかもしれません。


それでは、次回よりいよいよ騎士団編から引っ張ってきた「彼の」正体を明らかに!


今後も見捨てずに、この物語を応援して下さいませ・・・。

 

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