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第6話

 

うなだれる伊藤に対し、義純は慌てて釈明した。

 「いや、とんでもない!

 ・・・そうじゃないんです。

 確かにあなたの話は驚きましたが・・・、

 わたしが今、思っていることは・・・

 その・・・、

 わたしに何ができるのか・・・と・・・。」


騎士団の力・・・

それは情報収集・・・分析・・・

また、その気になれば、

軍隊並みの戦闘能力も展開することが可能だ。

だが平和な日本でそれはあり得ない。

本部を経由させれば、

日本の政治家や行政組織に影響も与えることができるが、

余程のことがなければ、そんな荒業も使えない。

義純は、

騎士団本部の意向までも完全に把握しているわけではないが、

少なくともメリーの話は、

いまだ騎士団本部が注視するような存在でもない。

・・・では?

 「伊藤さん・・・、

 大変失礼ですが、

 少し席を外させていただいて宜しいですか?

 わたしがあなたの力になれるかどうかは分りませんが、

 何かの手がかりがあるかもしれない、

 依頼元と連絡を取ってみます・・・。」

 「・・・お願いします・・・!」

 

 

とはいえ騎士団内の会話を一般人に聞かれるわけにはいかない。

義純は出版社の屋上へ出向いて、

そこから騎士団への連絡を試みた。

 「ハロー?

 こちらは極東支部の日浦義純だ。

 マーガレットお嬢様はもう来てるかい?

 ・・・特殊任務中? へぇ?

 困ったな、

 それじゃ本人の携帯も繋がらないか・・・。

 じゃあ有資格者でいま、

 そこにいるのは・・・?

 ・・・ああ、クローバーでいい、

 換わってくれ・・・。」


イギリスにある騎士団本部には、

常時「騎士」の称号を与えられた幹部が詰めている。

ここでいう「有資格者」とは「騎士」のことだ。

それらの称号を得たものは、

本部に直属になるか、

義純のように、

世界各地の要所の責任者として派遣されるか、

どちらかになるのである。

 

 「やぁ、クローバー、久しぶり!

 お嬢様と連絡取りたいんだが、

 何の任務なんだい?

 ・・・ああ、知ってる・・・、

 例の猟奇殺人だろ?

 奥さんと子供を残して、

 家の主人が異常な方法で殺害されるってやつな・・・。

 ケイが管轄の責任者か・・・。

 え? ライラックも協力させられてんの?

 わ~可哀想に・・・。

 いやいや、何でもない。

 ・・・えっ!?

 もう一度言ってくれ・・・。

 『死なない男』を尋問している・・・!?

 片目で白い髭の老人・・・?」


日浦の頭脳を以ってしても、

メリーの所在や救出方法など見出せるわけがない。

騎士団の情報システム、

及びマーゴの協力を仰いでも難しいだろうと思っていたのだが、

このタイミングの良さに戦慄を覚えた・・・。

 

偶然にしてはできすぎている。

元々、騎士団が老人を拘束したのも、

老人の知識と不可知の能力に着目したためだ。

東方の島国に派遣された幹部が、その日初めて会ったルポライターの・・・、

彼の娘とやらはそれを予知したというのだろうか・・・?

 「・・・済まないがクローバー!

 この電話をマーゴのいる部屋に伝えてくれ、

 緊急だとね!

 ・・・分っている、それでもだ。

 ライラックを経由させてもらっても構わない、頼む!」


そして・・・、

今、この時を以って、

二つのかけ離れた土地の歯車が噛み合ったこととなる・・・。

何人も逆らうことのできない運命の車輪は、

坂道を転がるように、

ゆっくりと速度を増し、

ついには誰にも想像つかない未来へと向かっていくのだった・・・。

 


次回は場面転換。

そして過去の重大な事実が明らかになります。


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