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緒沢タケル編10 酩酊のデュオニュソス 接触


くだらない話はやめて、再び彼らは行軍を続ける。

相変わらず、頭上には多少ぼんやりした感じの疑似太陽がある。

地上の太陽と違う所は、移動しないところか・・・。

ずっと一定の位置を動かないようだ。


 ・・・動かない?

 本当か? 

 何かが変化してるような・・・。

今度はタケルが違和感に気づく。

 「さっきより・・・少し暗くなってないか?」


雲や霞が発生しているわけではない。

その光の輪郭もはっきりわかる。

その変化を気にしながらも、

さらに進むと、もう誰の目にもはっきりしてくる、

辺りは薄暗くなってきた。

そして誰ともなく、心の中に湧き上がった判断は、

「夜」が近づいてきたということ。

 

恐らくは一定の時間ごとに明るくなったり暗くなったりしているのか?

それで昼夜の区別をつけているのだとしたら・・・。


興味は尽きる事がないが、そんな時に斥候が帰ってきた。

今回は顔がやけに明るい・・・。

どうしたのだろう?

 「報告します!

 あと一時間も徒歩で進めば大きな村が見えます!

 広大な畑や、樹木の林もあります。

 恐らくはサルペドン様がおっしゃっていたデュオニュソスのテメノスかと・・・!」


そこへミィナが鼻を鳴らす。

 「・・・クンクン、?

 あんたら、お酒飲んできた?」

 「えっ!?」 

と斥候達の顔色が変わる。

どうも図星のようだ。

うろたえる彼らにサルペドンが前に立つ。

 

 「・・・何があった?

 正直に言え、

 別に飲酒そのものでお前たちをとやかく言うつもりはない。」


勿論、斥候の任務に酒を携行することなどあり得ない。

どこか現地で調達したはずだ。

となると、この先にあるデュオニュソスの村・・・。

 「は、はい、あ、あの、すいません、

 途中で、この先の村の人間達と遭遇しまして・・・。」

実際、彼らが飲酒してからはかなりの時間が経っている。

顔からはその赤みが消えたとしても、匂いまではそう簡単に消えてくれない。

 「ふむ、それで?

 言葉は通じない筈だな?」

 「あ、は、はい、その通りなのですが、

 既に我らと出会う前に、

 その数人の農夫たちは彼ら自身の酒で酔っ払っておりまして、

 私たちと出くわすと、笑顔で自分達の酒を勧めてくるもので・・・、

 ほんの少し・・・。」


別にスサは軍隊ではないし、

厳しい規律があるわけでもない。

彼らの常識感覚が、うしろめたい思いを作っているだけである。

 

話を黙って聞いていたタケルの感想は、

 「この先の奴らって、かなり楽観的なのか?」と、こうである。

他のメンツも大同小異だ。

右頬を腫らした酒田さんも、真面目な顔して聞いてみる。

 「・・・こんなとこじゃ他所もん自体、珍しいだろう?

 それでも、酒なんか勧めてみるって、

 ・・・かなり呑気な村人だな?」

 「は、はい。

 サルペドン様の仰ったように、

 争い事を好みそうな者達には見えませんでした。

 むしろもっと飲め、と引き留めるのを固辞して戻って参ったのでございます。」


この結果、

スサの幹部たちは協議して、もう少し進んでから使者を送ってみる事にした。

村人たちの態度と、

その村の主デュオニュソスの対応が一致するという保証はどこにもないが、

一番物知りそうなサルペドンまでもが警戒していない。

というわけで、スサ本隊が村の入り口付近まで辿り着くと、

何とか会話ができるマリアを使者として、

デュオニュソスの元へ送ることと相成った。

 


時刻は夕方の7時を回った頃であろうか?

これまで、あまり昼夜の区別を意識することもなかったが、

村の周辺は、

間違いなく「夜の帳」という表現が当てはまる暗がりに覆われている。

村の正門には篝火がたかれ、

その周囲は申し訳程度の塀で囲まれている。

確かに、外敵がいないのなら、村の防衛など考える必要もないだろう。

せいぜい、周辺の害獣に気をつければいいだけ、というわけか。

・・・そういえば、この辺には大トカゲみたいな化け物はいないのだろうか?


マリアには二人の部下を随行させて、村の中に入らせた。

入口には、これまた形式だけかと思わせる警備の者がいたが、

マリアをいぶかしがることもなく、

大仰しい笑みを以て村の中に招き入れた。

それどころか、村の外側に待機しているスサ本隊を見つけると、

小走りに寄って来て、

「さぁどうぞ!」と嬉しそうにカラダを曲げる。

 ・・・こいつ、もう酔ってる・・・。

 

サルペドンが苦笑をしながら、

「デュオニュソスの許可を得てから」と断ると、すごく残念そうに持ち場に帰って行った。


もう、タケルもこの先の展開をある程度期待し始めた。

こんなフレンドリーな村人のいるところで争いなんか起こしたくはない。

普通の村人がこれだけ無警戒なら、この村のデュオニュソスとやらも、

よっぽど友好的だと思いたい。

ここのところ、荒んだ戦いの連続だったわけだし、せめてたまには・・・。


と思っている間にマリア達が帰ってきた。

 ・・・あれ?

 マリアさんの足が・・・よたついて・・・まさか・・・。


珍しくサルペドンが呆れた笑い顔を浮かべている。

 「・・・おいおい、もう歓待を受けたのか?」

 「ヒック、 す、すいません、皆さん、ひ・・・一足お先に・・・。

 先に結果から伝えますね?

 この村の主、デュオニュソスは、

 快く、我らを迎え入れてくれるそうです。

 今夜は急なことで大したもてなしはできないが、

 明日の晩でよければ、村人たちを集めて大宴会を開きたいとのことです。

 ・・・ヒック!」

 



次回、早速この村のボス、デュオニュソス登場です。



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