表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
492/676

緒沢タケル編10 酩酊のデュオニュソス 光照らす地下世界


悪夢のようなシルヴァヌスの森を撃破して、

今や、スサの一団は次の目的地へと旅を続けている。


あの後、負傷した隊員達の手当てをするべく、

その日一日シルヴァヌスの村に逗留し、

ゆっくり休んでから出発することになった。

・・・もっとも何人かの負傷は激しく、

出来得ることなら、この場に留まらせてあげたいところなのだが、

基本的にここは敵地であり、サルペドンとマリア以外は言葉も通じない。

何とか頑張ってもらううしかないのだろう・・・。


ただ、好材料がないわけではない。

サルペドンがある情報を仕入れてきたのだ。

 「・・・この先の進み方だが、

 東へ向かえば、一大穀倉地帯があるらしい。

 別に敵の食料を抑えるとか、我らが補給のためとか、

 そんな目的ではないのだが、

 そちらには『比較的』温和な神がいる。

 余計な戦闘を避ける事が出来るかもしれない。」

 

 

そんな事を言われれば、東へ向かうに何の躊躇いもない。

タケルは二つ返事でそっちへ向かうことを了承した。

 「それで、その先にはどんな神がいるんだ?」

タケルでなくとも、その場の全員が興味ある話である。

サルペドンも別に勿体ぶるつもりもない。

 「ああ、そうだな、 

 まず、一番先に辿り着くのはディオニュソス・・・、

 樹木や果実・・・

 酒の神と言えば分り易いか?

 それとその先には、

 このピュロス王国の人口、全てを賄えるほどの収穫量を誇る穀物の女神、

 黒衣のデメテルが支配する村だそうだ。」


なるほど・・・、

それは確かに戦闘になりそうな気配はない・・・。

 「・・・じゃあ、うまくいけば・・・。」

 「ああ、怪我をした者たちを休ませる事が出来るかもしれないな。」

 


さて、

彼らがシルヴァヌスのテメノスを立ち去ると、

再び森の植物は影を潜め出し、辺りを覆っていた白い霞も晴れ始めてくる。

すると同時に、

ある種の違和感を覚える者が出現してきた・・・。

勘の鈍い者は言われるまで気付かなかったであろう。

・・・やけに明るいのだ。

光を吸収していた霞もなく、

溶岩のオレンジ色の光でもなく、

まるで・・・地上の昼間のような・・・。


 「・・・なぁ、あれ、太陽じゃね・・・?」

ミィナが上空を指さした。

霞は完全に晴れ切ったわけではないが、

確かに上空に薄ぼんやりした光源がある。

 「太陽・・・ていうか、空がある!?」

スサの一団をどよめきが襲う。

別に緊急の事態と言うわけではないが、

一同理解不能の世界に言葉もない。

 

サルペドンは冷静なまま、この事象を分析する。

 「落ち着け、よく見ろ、

 天井がかなり高くなっているだけで、空がある訳ではない。

 確かにこれだけの規模の大空洞は驚愕に値するがな・・・。

 我々はそれだけ深く地球の内部に降りてきたんだ。」

酒田さんの興奮はそれで納得できないようだ。

 「ちょ、ちょっと待って下さいよ、サルペドン、

 じゃ、じゃあの光は!?」

サルペドンは厚いサングラスをかけたまま、その光源を見上げる・・・。

 「恐らくだが・・・

 あれはオリオン神群の能力の一つだ・・・。

 太陽の神ヘリオスが造り上げたものかもしれない・・・。」


 はぁぁぁっぁ!?

サルペドンはそこで自嘲気味にふっと笑った。

 「ただの推測だよ、

 気になるなら次のディオニュソスのテメノスで聞いてみようか?」

  


 太陽まで作り出せる?

 もし、その話が事実なら・・・、

タケルは今になって、自分が相手している者たちの恐ろしさ、強大さを思い知った・・・。

 疑似太陽まで生み出せるなんて・・・

 人間業じゃねぇ・・・。

 よく、オレ・・・生きていられるな・・・。


あの陰鬱な森を抜け出る事が出来て、

多少、冷静に自己分析できたようだ。

まぁ・・・それはいいのだが、

タケルの不安感は他にもある・・・。


 ・・・あの黒い空間は何だったんだ・・・?

 シルヴァヌスとは一切関わりがなかったような気もするし・・・、

 マリアさんならわかるかな・・・。

 いや、やっぱりやめよう・・・。

 頭がおかしくなったと思われたら・・・。


実を言うと、

マリアの方もタケルが『何らか』の異常現象に遭遇したかも、

とは予想していた。

だが、タケルの方が何もそぶりを見せない内は、

自分から切り出すべきではないと考えていたのである。

・・・あの黒いノイズは視える者にしか感知できないはず・・・。

なら、タケルを不安がらせることもないのだと・・・。

 

そんなことを休憩地点で考えていたら、

互いの目が合ってしまった。

別にどちらが先にと言う訳もなかったのだが、

マリアが先に微笑んだ。

 「あら?

 どうしました? タケルさん?」

 「あっ、い、いえ・・・(そうだ!)

 マ、マリアさん、行軍きつくないッスか?

 女性のカラダでここまで歩くのつらいっしょ?」


何を今さら・・・

 「・・・大丈夫ですよ、タケルさん、

 皆さんの方が大変でしょうし・・・。

 それに・・・この先、もっとつらい事が起きるかも・・・。」

勿論、それはタケルも覚悟済みであった。

果たして・・・この先、誰が犠牲になるのか・・・、

全員無事に生きて地上に戻れる保証は何一つないのに・・・。

 


というわけで、

今度はお酒の神(仮)デュオニュソスです。


え?(仮)って何だよって?

デュオニュソスはギリシア神話の神の中でも謎の多い存在ですからね。

それが彼の本質ではないかもしれない、という事です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ