表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
491/676

緒沢タケル編9 森の神シルヴァヌス 決着

最後なんで分けずに一気にシルヴァヌス編終了まで行きます。


既にシルヴァヌスは、

先ほどの翠色の大蛇に、侵入者を襲うよう能力を使用していた・・・。

だが、何故かその大蛇はタケルを襲うことはしない。


この社の周りには肉食系の大型獣も配置している。

さらに言うと、それらが全てタケルに襲いかかる事を拒否していたのだ。

それゆえ、タケルはこの社への接近が容易だったのだ。


勿論、タケルにはそんな情勢は一切分からない。

彼に自覚出来るのは、

目の前に親玉がいること、

及び、植物のツタに自分の行動が封じられている事、その二点だけである。

そして当然、

両手を抑えられ、剣を腰に佩いたままの状態では天叢雲剣の能力は使えない。


シルヴァヌスはタケルを捉えた事に安心しつつも、今一度、動物たちにタケルを襲うよう指令する。

だが・・・。


 「・・・おかしい、

 何故貴様らは私の言う事を聞けない・・・?

 嫌がっている・・・?

 怯えているのか、この男に・・・。」

 

シルヴァヌスの能力は、生物たちの本能までも操る事は出来ない。

人間で言えば、

催眠術や暗示をかけて、ある程度意のままに従わせるのに近似した能力なのだ。

しかし何故・・・。


その時、獣たちが他の侵入者に反応した!

タケルの部下二名がこの神殿に辿り着いたのだ!

だが、部下たちはシルヴァヌスに攻撃をかける事も、タケルを救いだす事も叶わず、猛獣たちに襲われる。

 「うっ!? うわあああっ!!」

 「あっ、おい!、てめぇら!」

彼らを助けに行けないのはタケルも同じだ。

一方、シルヴァヌスはここに来ても首を傾げるだけだ・・・。

 「おかしいな?

 今度はちゃんと獣どもは私の言う事を聞くのに・・・、

 何故貴様だけ襲わないのか・・・!?」


タケルには未だ余裕があったのだが、部下が襲われ出した事でそれもなくなった・・・。


 まだ、こいつと話し合う余地があるかと思ったのだが・・・!


部下が今にも喰われそうな状況にも関わらず、

この他人事のように落ち着き払ったシルヴァヌスにの態度に、タケルは再び怒りを増幅させてゆく・・・!


タケルの四肢に力が入る!

それを見てもシルヴァヌスは嘲るのみだ。

 「ほっ? 無駄だ、

 確かに貴様は力自慢のようだが、

 そのツタを引きちぎれた者など、かつて存在せん!

 無駄な努力など止めるがいい!」


だが、シルヴァヌスは知らない・・・。

その鋼鉄のようなタケルのカラダには、

ただの力任せの筋肉のみに非ず、

中国拳法で培った勁の爆発的な気の力も加わる事を・・・。

そして、その怒りが・・・感情が、

パワーを何倍にも高めていく事を・・・!

 「ぉ ぉ ぉ・・・らぁぁぁぁああああああッ!!」

タケルの周辺から異様な音が聞こえ始める・・・。


 この音はなんだ!?

・・・チ・・・ビチチ・・・ビリッビビビ・・・!

 

 

 「き・・・貴様!? まさか!?」

そのまさかだ!

タケルの筋肉が・・・

血管が浮き上がり、

まるでその神殿、全体が震えるような錯覚に陥るほどの蠕動!

それどころか、タケルの部下を襲っていたはずの肉食獣が再び怯え始めたのだ。

 「・・・な、何と言うことだ!

 動物たちがこれ程までに怯えるとは・・・!?

 貴様い、いったい!?」


バチィッンッ!!

幹の根元からツタが引きちぎられる!!

タケルの両腕・両足にはツタが巻き付いたままだが、既に両腕は自由だ!

ミィナの鞭捌きを思い起こすがごとく、

タケルは右腕をシルヴァヌスに振り上げる。

すると、絡み付いたままのツタが鞭のようにシルヴァヌスの体躯を捉えた!

 「なっ!?」

 「・・・降りてこいよ・・・、

 高みの見物は許さねぇぜ!!」


 「ぅおおおおおおおっ!?」

社の座から無理やり引き摺り下ろされたシルヴァヌスは、驚愕の叫びをあげながら宙を落下!


・・・それも向かうは睨みつけるタケルの元へ・・・!

 

その眼光には紛れもない殺気が・・・!

体力と精神力を限界近くまで使い果たし、

仲間を殺され、その感情の昂りも最早ピークに達している。


・・・容赦できる余裕は既になかった・・・、


いや、あの時・・・たとえ一時期とはいえ、

暗黒の波動を受けてしまったタケルは・・・

その凄まじいまでの戦闘力を、今・・・

森の神シルヴァヌスに向けて放とうとしていた・・・!

 「・・・逝け・・・。」


刹那、シルヴァヌスには最後の意識は、

やけに周りがスローモーションのようにゆっくりと感じられた。

だが・・・

彼に抵抗することなど一切不可能・・・。

彼が認識できたのは、鬼人のような形相のタケルの眼光・・・。

そして、

鉄杭のようなタケルの右拳が、

シルヴァヌスの顔面を粉砕・・・

頸椎を破壊・・・

そのカラダを神殿の壁にまで吹き飛ばして見せたのだ!!

 

神殿の壁や柱が崩れ落ち、大量の埃が舞う・・・。

味方の部下たちも、

今、自らが動物たちに襲われている事など、

お構いなしに、そのタケルの凄まじさに息を奪われていた・・・。

もっとも、その猛獣たちも、

もう攻撃を止めていた・・・。

まるで、タケルに怯えるかのように・・・

無表情に立ちつくすタケルの姿に、

畏れ仕えるかのように、その頭を揃って低くしていたのだ・・・。


もう確認するまでもない・・・。

向こうにあるのはただの肉の塊だ・・・。

ただの死体・・・、

デンも・・・

彼が助けようとしたアイドメネアも・・・

この森の支配者シルヴァヌスでさえも・・・

死んでしまえば唯の肉塊なのだ・・・。

どんな才能や・・・

能力を備えつつも・・・

こんな、簡単に・・・。




 

・・・戦いが終わった・・・。

見ればタケルのカラダはボロボロだ・・・。

小動物や鳥たちに、衣服や皮膚をあちこちついばまれている。

大きなダメージは全くないのだが、

カラダ全体を襲う疲労感の方がつらいところであろう。

もっとも・・・今、タケルの内心は荒みきっている・・・。

結局、話し合いや和平など無理なことだった・・・。

怒りに任せ、全てを暴力で片づけた・・・。

きっと、誰も自分を責める者などいないだろうが、

果たして本当にこれで良かったのか?

デンを死なせない道はあったのではないだろうか?


 「タ・・・タケル様! さすがですな!

 た・・・たった一撃でオリオン神群を!!」

部下に声をかけられて、ようやく我に返る。

サルペドンに無線を飛ばして、今後の対応策を練ってもらった。

実際、戦いが終わると、

それまでの迷宮のような森の様子が、嘘のように一変した。



クリシュナ部隊が、この村の住人達の集会場所を発見し、

無線越しにサルペドンがシルヴァヌスの死を伝えると、

あっという間に村人たちは大人しくなり、一切の抵抗を止めてしまう。

しかも、もう道に迷うことは殆どなくなった。

サルペドン達とタケル、グログロンガはすぐに合流し、怪我を負った隊員達の治療も始める。

しばらくは安静にしている必要のある者もいるようだ。


途中、デンとその隊員達らしき遺体も発見した。

 ・・・酷い。

  見るに堪えない有り様だ・・・。

一つの死体は、

見慣れぬ服を纏ったもう一つのカラダを、抱きかかえるように手を伸ばしている。

こっちが村の少女だろう・・・。

最後の最後まで、この娘を救おうとしていたのか・・・。

 

デン達の死体の運搬、簡素な葬儀・・・、

そして哀れなアイドメネアの事は、

サルペドンが村の長老らしき人物に説明していた。

タケルも何かすべきと考えていたのだが、

他の隊員達が、疲弊したタケルのカラダに気を使ってくれたので、

必要そうな仕事は全部、彼らが片付けてしまっていた。

・・・多少、カラダを動かしていた方が余計な事を考えなくて済むのだが・・・。



テントで負傷した他の隊員達と休んでいると、サルペドンが現れる。

 「・・・よぉ、サルペドン、オレは何かしなくていいか?」

 「タケル、・・・自分では気づかないかもしれんが、

 顔がやつれているぞ?

 何発天叢雲剣を撃った?

 この地で精神力が増大しているとはいえ、それに任せて全力で撃っていたら、

 いくら何でも、想像以上の負担がかかる。」

 「ああ、・・・そうか、

 でも・・・ま、勝ったよ。」


サルペドンはしばらく無言でタケルを見つめていたが、

やがて帰り際にもう一つ、言葉を残した・・・。

 


 「・・・さっき、村人に確認したが、

 この村のシルヴァヌス・・・

 やはり、ウィグルの村に攻撃をかけた一人だったよ。

 お前は村人たちの仇も討ったんだ・・・。」


そう言えばミィナは、森から動物たちが襲ってきたと言ってたっけ。

 「へぇ、そうか、

 ・・・なら・・・ミィナに伝えてやるか。」


彼女は他の隊員達と夕飯の支度をしていた。

見るからにくたびれているタケルを見つけると、彼女なりにタケルをねぎらってやるかと思ったようだ。

 「よぉ!

 活躍したってな、ごっくろーさん!」

多少なりとも女性の明るい顔を見ると、タケルの顔も少しはほころんだ。

 「ああ、いや、・・・まぁな、

 それより・・・、オレが倒したこの村の男・・・、

 ミィナの家族や村人の仇だったよ・・・。」


すると、あっという間にミィナの顔が固まって行く。

彼女も無理をしていたのだ・・・。

当たり前だ・・・

こんな滅茶苦茶な状況で・・・

平常心を保っていること自体が異常なのだ。

それでも・・・

ミィナは力なく、右ストレートをタケルの腹にゆっくりと当て、

ただ一言、「ありがと・・・。」

とだけ、つぶやいたのだ・・・。

 



 

次回、

新たなるエリアへ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ