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第4話


 「では何を知りたいんじゃ・・・?」

 「あなたなら知ってるでしょお?

 神の御業を否定し、

 闇の中で生き続けるデモーニッシュな存在を。

 世界各地で起きている人間ではない何者かによる猟奇殺人・・・。

 それらの正体を明かし、

 この世界を邪悪から守るのが私たちの使命・・・

 てわけ。」


老人はしばらく黙っていた・・・。

が、しかし彼は、

そのうちマーゴの手を触り返し、

ニヤッ・・・と笑う。

 「ワシから聞き返しても良いかな・・・?」

 「ええ、もちろん!

 楽しくおしゃべりしましょ!」

健全な若い男性なら「脈ありか!」と勘違いしそうになるかもしれない。

一方、ライラックはハラハラドキドキしている。

おそらく騎士団で最も彼女に振り回されているのが彼だろう。

勿論、自分の役割をおろそかにするような男ではないのだが・・・。


老人の質問が始まる。

 「さっき、邪悪と言ったかね・・・?」

 「え・・・? ええ。」

 「仮に、

 今のおたくらに理解できない正体不明の集団がいたとして、

 そやつらが殺人を犯した時、

 お嬢ちゃん、

 おまえさんはそれを、

 何を以って邪悪と断ずる事ができるのかね?」

さすがにマーゴも、この質問は想定してなかったらしい、

言葉に詰まった。

 

 「・・・それは、

 殺される人に原因があったということ・・・かしら?」

 「個人の問題じゃあないだろう?

 だったらおまえさん達は動くまいよ?」

 「ええ、その通りですわ・・・。

 わたし達は世界や人類の危機を危ぶむだけです・・・。」

 「なら、おまえさん達の知りたいことを教えてやろう・・・。

 わしはな、長い間、世界を見てきた、

 ・・・だが不老不死なんかじゃあない。

 死んでは生まれて、

 死んでは生まれてを繰り返してきただけじゃ・・・。

 わしの50年前の写真を見つける事ができれば、

 不老不死でないのは分るじゃろうがの?

 そして、この世界を見続ける事がわしの使命なのじゃよ・・・。

 人間はな・・・、

 いつでも争ってたよ・・・

 いろんな理由をつけてな・・・。

 信じるものが違う、

 肌の色が違う、

 言葉が違う、

 欲を満足させるために争うものもいれば、

 愛するものを守るために争うものもいる。

 だが、

 いつでも相手のことは『邪悪』と呼ぶんだ・・・。」

 

 

マーゴは老人の告白に驚きつつも、

真剣に彼の主張に耳を傾けた。

 「それは・・・良くわかります・・・。」

 「たぶん、

 わしはおまえさん達が知りたがっている相手のことを知っておる。

 しかし、

 色気でたぶらかされようと、

 拷問で責められようと、

 その事を話そうとは思わん。

 『そいつら』を守るわけじゃあない・・・。

 関わりたくないんじゃ・・・。」

 「でも、彼らを知らなくては、

 争いを止めることもできないでしょう!?

 おじ様は、平和や安息をも否定するの!?」


老人は少し考え込んでいる。

マーゴの言うことにも一理あると感じたのだろうか。

だがそれでも、彼の意志が変わることはないようだ。

 「お嬢ちゃん・・・マーゴと呼んでよいのかな?

 冷たいようじゃが、それもわしの役目なんじゃ。

 人間達の争いにわしは介入できん・・・。

 いや、人間達の争いに介入したら、

 それは人間の成長の妨げになる・・・、

 といえば分りやすいかの?」

 「おじ様?

 あなたは神の使いなの・・・?

 それとも悪魔の申し子・・・?」

 

 「ハッハッハッハ・・・、

 言ったそばからこれじゃ。

 すぐに敵味方で考える・・・、

 ま、仕方のないことかもしれんな。

 おまえさん達にとっては、

 自分達に都合のいいものが神で、それ以外は悪魔じゃろう? 

 やむをえんな、

 ではおまえさんに本当の神とは誰か教えてやろう。

 それは・・・

 全能なる『時間』と永遠なる『運命』じゃ。

 誰もそれには逆らえない、

 人間もワシも、

 おまえさん達が神や悪魔と呼ぶものですらもな。」




老人は杖をついて立ち上がろうとする。

ここから帰るつもりらしい。

ライラックが行動に出ようとした。

 「待って! おじ様!

 私たちが追っているものは人間・・・なのね?

 私たちが理解できていないだけで・・・、

 それだけ教えて!」

ライラックが口をはさむ。

 「マーゴ!

 しかしそれだけでは本部は納得しないぞ!」 

 「いいから!」

 

緊張する時間が続く・・・。

そして老人は重たい口を開いた・・・。

 「間違いなく・・・人間じゃよ。

 わしから見れば、

 キリスト教徒とイスラム教徒が争ってるのに比べれば可愛い戦いだ・・・。

 アフリカでは近隣の部族同士で殺し合い、

 中国では国家権力が一般人を虐殺をし、

 中南米ではギャングやマフィアが残虐な拷問と殺人を繰り返す。

 殺人の少ない平和な島国でも、

 親や子供を殺す事件が頻発している。

 ・・・こじき同然のわしは、

 スラムで若造どもに襲われる事の方が最大の心配事じゃ。

 ・・・マーゴ? 

 久しぶりに可愛いお嬢ちゃんと話ができて楽しかったぞ、

 さ、ここから出しておくれ。」


勿論、このままでは本部は納得しまい。

だが恐らく強硬な手段に出れば、

この老人はあっさり自らの命を絶つだろう。

老人のこれまでの話から、

マーゴはそこまでの老人の意思の強さを読み取っていた。

 


そのとき、

不意に部屋の電話が鳴った。

今の状態も手を放せる場合ではなかったが、

外にはガラハッドも控えている。

応援を呼ぶ必要もあるかと、

ライラックは警戒しつつ電話を取った。

 「はい! ライラックです!

 ・・・お!? おう!

 久しぶり、今取り込み中だが・・・。

 ・・・何だって・・・?

 いや、今は駄目だ・・・。

 ・・・そんな・・・!

 分った、一応聞いてみる・・・。」


マーゴは老人の手を抑えたままだ。

ここから帰すにしろ、

ライラックやケイの承認を得ねばならない。

それはブレーリー・レッスルも分っていた。

・・・ライラックが電話をマーゴに替わろうとする。

 「ええ? だーれ?

 こんな時に? ケイ叔父様?

 後にできないの?」

 「それが・・・日本の義純からなんだ。

 何でも緊急事態らしいんだが・・・。」

 「ええっ!? ヒウラァ!?

 ・・・彼が緊急事態って?

 ・・・分ったわ、貸して!」

 

受話器を受け取ってから、

マーゴはレッスルに懇願する。

 「おじ様、待ってて!

 帰るにしてもちゃんとお見送りしたいから。

 ね?」

老人も彼女に悪い印象は持ってないようだ。

大人しく椅子に座りなおす。


 「・・・もしもしぃ?

 ヒウラァ? どーしたのぉ? ・・・」

老人は静かに紅茶の残りをすする、

・・・全く動じている様子はなく落ち着き払っている。

電話は少し長引いていた。

お互いの会話の中で考え込む場面が多いようだ。

マーゴは時々、老人に視線を投げかけていた。

老人が飽き始めたのか、

そわそわしだした頃、

ようやく電話が一区切りついたのか、

マーゴが老人に向かって、

受話器を持ったまま声をかける。

 「・・・レッスルおじ様ぁ!?」

 「んー、何じゃなぁ?」 

ようやく帰れるものかと少し嬉しげだ。


だが、そこから先の展開は、

老人も、

マーゴも、当然ライラックにも、

全く予想できない意外な状況にと発展していく。


 「おじ様ぁ・・・メリーという名の人形・・・

 ご存知ぃ!?」


老人・・・ブレーリー・レッスルの顔に、

驚愕の表情が現われた。

 



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