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緒沢タケル編9 森の神シルヴァヌス 茂みの中の少女

今回は垂れ目のデンのお話です。


そして、こちらは別動隊・・・。

元々戦闘を得意とせず、スサの科学技術全般の責任者であるデン・テスラは、

最低限の武装を伴い、救出者の探索に来ていた。

機器関係のプロフェッショナルらしく、

サーモセンサーやら、超音波測定計器など、運べるギリギリの機材を用いて辺りを慎重に進んでいる。

左右の茂みの中に小動物がいるのは確認できるが、

人間大のものは未だ発見できない。

底なし沼にはまった隊とは、まだ無線はつながるので、

引き摺り込まれた隊員以外は無事のようである。


 「デン様!

 向こうに人間らしき大きさの物が・・・!?」

隊員の一人が道をそれた茂みの奥を指さした。

サーモセンサーに人間の体温と同じ大きさの存在が映ったのだろう。

人間だというなら仲間の筈はない・・・。 

オリオン神群の兵隊だろうか?


 「一人か!?」

 「はい・・・

 しかも大きく動いてる様子はありません、

 微妙に体を揺すったりしてしています・・・。」

タケル達の通信のやりとりも、今まで彼らに聞こえていた。


 恐らく森に潜んでいる敵の一人か・・・。

 どうする?


拳銃やサバイバルナイフは勿論携帯している・・・。

遠巻きから撃ちこんでもいいが、

仲間でなくても、万一非戦闘員であれば攻撃をかけるのは好ましくない。

デンは慎重に近づいて銃を構える。

この茂みの奥だ・・・。


 「そこにいる者! 出て来い!!」

言葉が通じなくても何らかの反応はするだろう。

・・・

だが、その存在は動かない・・・。

確かに一瞬、茂みの中で音をさせたが、

特に立ち上がるでもなく、動き回るわけでもない。

こっちの存在は確認できただろうに?

 

茂みの中には、大きく奇麗な色をつけた百合のような咲き方をした花が咲いている。

もっとも、花の形は百合とは全く違う、

大きさもそこら辺の百合よりもでかそうだ。

隊員の一人は、デンと視線を交わした後、ゆっくりと茂みをかき分けた。

デンの銃口は開かれた茂みの中に・・・、

そこにいるのは・・・。


 「・・・あっ!?」

少女である。

今まで見てきたオリオンの兵隊とは違う。

手首まですっぽり隠れた薄手のワンピースで、その裾は足首付近まで覆っている。

だが・・・服は汚れ、とてもみすぼらしく見える。

そして何よりも、異様に色の白い顔は・・・。

 「なんだ、この子!?

 眼球が落ち込んでる・・・

 こ、この子もまさか・・・!?」

タケルとサルペドンの会話の後だ。

良く見れば、指も片方四本しかない・・・。

 

奇形児・・・

実際年齢はいくつかわからないが、

地上の感覚で言えば13、4歳程度か?

ということは、ヘルメスなんかの年齢と比べれば、40~50歳ぐらいか?

もっとも、デンには分かる訳もないが、

地底世界の住民で寿命が長いものは、ほとんどオリオン神群に限ってのことである。

つまりは彼らの強大な精神エネルギーが、その長命に作用しているせいなのかもしれない。

そうは言っても、一般人とて地上の人間より遥かに長命だ。

健康に生きれば150年以上生きる者もいる。


 「あぅ、あーーーうぅ・・・。」

その少女はうずくまって何をしているのだろう?

長い髪は、ろくに梳かされてもいないようでボロボロ絡み合ったまま・・・。


 「デン様・・・彼女の足元を・・・。」

 「足元・・・なんだ、これは!?」

彼女のカラダの陰に隠れていた足に何か巻きついている・・・。

植物のツタか!?

まるで植物と言うより、

意志ある動物のように、そのツタは少女の足を絡め捕っていたのである。

 


 「いったい、どうなって・・・。」

もう一人の隊員が、

自分も彼女を観察しようと茂みをかき分け、デンの近くに来た時だ、

突然、百合のような形をした花から何かが噴き出した!

 「うっ? うわっ!

 ・・・ヒッヒィィっ!?」

デンが驚いて振り向くと、両手で覆われた隊員の顔に赤い液体のようなものが・・・!

 「おいっ! どうしたっ!!」

 「そ! その花から樹液のようなものが!?

 いっ痛ぇっ!! 焼けるっ!」

強酸性の何かか、強い刺激物が成分に含まれているのか、

恐らく食虫植物の一種かもしれない、

そんなものまで・・・!


幸いに救命道具は用意しているが、

ここにあるものだけで、応急手当てはできるだろうか?

最悪、目に入っていたら失明する恐れもある。

 


少女はと振り向くと、

こちらを指差し「あーあー」と唸るのみだ。

隊員の治療をしている最中も、少女は何の行動も起こさない。

彼女の足を捉えているツタも、別にそれ以上何かをするわけでもない。

ただ、少女はどうやって、そのツタをほどいていいかわからないだけのようだ。

隊員に応急手当てを施すと、デンもサルペドンに無線を入れる必要があると考えた。


 「・・・そんなわけなんです、サルペドン。」

今までの経過は省略しておく。

同じ説明は皆様には必要あるまい。

・・・おわかりかと思うが、手抜きではない。


 『タケルの状況とは似て非なる・・・というところか、

 その娘は武器も何も持っていないのか?』

 「ええ、まぁ、服の中まで見ちゃいませんが・・・。」

 『もう隊員の治療は済んだのだな?

 その娘は口はきけるのか?』

 「あまり、怪我の様子は安心はできない状況ですがね、

 娘の方は・・・どうかな?

 こっちに興味津々って感じで、怯える事すらしてませんよ?」

 『そうか、

 ・・・一度、この無線を彼女に当てて見てくれないか?』

 



少女の名前は次回に。

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