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緒沢タケル編9 森の神シルヴァヌス 始動するマリアと漏れ出ずるノイズ


一方、酒田のおっさんやミィナ達は、

森の入り口付近で、更なる異変にも対処できるよう待機している。

とは言え、ここでは何もできないし、彼らは彼らで落ち着きがない。

ミィナなどは、

性格上、自分から積極的に動いて事態を打破したい所だが、流石に体調が回復してない事も自覚している。

何か、先へ行った者たちを援護できる手段はないものか・・・。

そう考えていると、

ミィナは後ろのマリアの様子がいつもと違う事に気づいた。

 「ん? マリアさん、どうしたの?」


マリアは、一度ミィナに視線を返すと、

その後、サルペドンや酒田にもその表情を見せつけた。

戸惑っている風でも、何かをしたがっている風でもある・・・。

 「酒田さん、ミィナさん、お願いが・・・。」

 「え? なに? 言ってみてよ?」

 「何でもやりますぜ!」

立場上は酒田が格上なので、マリアは先に酒田の名を挙げたが、

反応はミィナが即答した。

勿論、酒田に躊躇いや遠慮があったという話ではない。

これも性格の差と言えよう。

いや、というより若さの問題か。



一方、サルペドンは心配そうにマリアに語りかける。

 「お前の力を使うつもりか? ここで?」


 力?

力とは何のことだろう?

ミィナにはさっぱり話の流れがわからない。

だが、肝心のマリアは固い意志を持っているようだ、

サルペドンを見上げながら力強く答える。

 「私にもできることはあります。

 実際、

 ・・・どこまで私の力が役に立つのか自信はありませんが・・・、

 精神能力が増大しているこの地底世界で、

 私が力を使わなくてどうしますか?

 ・・・ミィナさん、酒田さん、ありがとうございます。

 それでは私の周り、5メートル以上離れて、誰もそこに近づけないでくれますか?

 それと、

 その間、雑音や話し声など、極力、私の集中を乱さないでほしいのです。」


ミィナには何が始まるか分からないが、

あまり突っ込んで聞くような空気ではないことだけは理解した。

酒田はと見れば、言われたとおりマリアから離れ、

拳銃を握り締めて森の内部へと警戒を始めた。

なら・・・!

ミィナは得意の鞭をビュゥッと振り回すと、距離を取ってその神経を森に集中し始めた。

 まっかせなっさーい!!


そして・・・そのマリアは・・・!

 


距離を取ったのはサルペドンも同様だ。

控えている部下たちを座らせ、自分もマリアの邪魔にならないように、地面に片膝をついてしゃがみ込む。


さて、マリアは服装を正し、背筋を張る。

しばらく息を整えていると、

左右の掌を胸の前で合わせてお祈りでもするかのような姿勢をとった・・・。

まさに聖母マリアを思い出さずにはいられない。

ただし、彼女は祈りの言葉をつぶやくでもなく、

目を瞑り、

少しずつ・・・少しずつ、

心の中の意識を消してゆく・・・。


それは真っ暗な空間の塊・・・、

虚ろなる世界へと拡がり、

やがて、その世界は、現実の世界へと重なって行く・・・。

意識が外に広がるのか、それとも外の世界が意識の中に流れ込んでくるのか、

それを分類することはあまり意味を為さない。


結果は同じなのだ、

この感知能力を持つ者が、その技を使うに当たり、

どちらの方法が感度をあげることができるか、

それは術者自身のイメージ次第なのだから。


・・・

マリアは「思考」という作業を放棄した・・・。

それは自らが行う能力の障害にしかならない。

彼女の行動は、自らが読み取った物を外にいる者たちに告げるのみ。


 「・・・ここから先、・・・森全体を覆っている・・・。

 とげとげしい・・・悪意を持った意思・・・。

 その中でも・・・

 スープに浮かぶ具材のように、森の中にいくつかの悪意の塊が・・・。」


傍で控えていたサルペドンは催眠術者のようにマリアを誘導する。

 「私の声が聞こえるか、マリア・・・。

 いくつかの悪意の塊とは何だ?

 その中の一つがシルヴァヌスなのか!?」

 「そこまで、区別は・・・あ?」

 「どうした、マリア?」

 「これは・・・

 このノイズは・・・な、に・・・?」



 

さて一方・・・こちらはタケル。

数名の部下と共に、森を彷徨い始める。

道に迷ったと判明するまでに通ってきた分かれ道は、そんなに多くもなかったはず。

それでも、確実に正規のルート戻るため、分かれ道を見つけるごとに樹木に目印をつけていく。

めぼしい木がなければ、天叢雲剣でそこら辺の草木を焦がしていけばいい。


・・・そこまではいいのだが、

どう考えてもおかしい。

先程通った場所である筈なのに、風景と記憶が合致しない。

しまいには自分達が一度通ってきた目印を見つけてしまうありさまだ。

 「どうなってる!?

 おんなじ所グルグル周ってただけか!?」

 「タケル様! ならば未だ通ってない道を次は選びましょう!

 本隊に合流できなくても先に敵を見つけてしまえば・・・!?」

 「ああ、そうだな!

 できりゃ、そっちのほうが手っ取り早い!」


そこでタケル達は、先の目印とは逆の方向を選ぶ。

少なくとも、今度は別の場所に出る筈だ。

 

 ケーッ!

 「うわあっ!」

その時、突然目の前を黒い塊が飛んできた!

またもや森の中の鳥が襲ってきたのだ。

だが、確かにびっくりはするが、

それほどダメージを食らうわけでもない。

せいぜい頭を蹴られるか、嘴でつっ突かれるか・・・

目玉さえ庇えば大丈夫だろう。


 「・・・うざってぇな、これもシルヴァヌスとかの仕業かよ!?」

タケルは再び足を動かす前に、もう一度森の茂みの中を見渡す。

どこからともなく、別の動物らしき唸り声も聞こえるようだ・・・。


 ゲッゲッ・・・! フゥーッ! フーッ!


 「辺りを注意しろ!?

 鳥たちだけじゃなさそうだ!

 ・・・他にも・・・」

 「ぎゃあっ!?」


タケルが叫んだ傍から、部隊の一人が悲鳴をあげた。

振り向いたタケルにも辛うじて視えた!

襲われた隊員の頭上に、何かがぶら下がっていたのだ。

・・・鋭利な刃物を煌かせて・・・。

 


マリアさんは、元々霊感が強いという設定です。

それがこの地下世界に来て、

精神感応能力が一時的に増大しているという状況です。




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