緒沢タケル編8 狩猟の女神アルテミス ボロボロの勝利
ぶっくまありがとんです!!
ペース配分間違えました。
後二回に分けるつもりでしたが、
半端だったので一気に戦いの結末まで!!
というわけで、小タイトルは
「新たなる能力」
とするつもりでしたが、
「ボロボロの勝利」とします。
見守るスサの一団、全員何が起きたか分からないでいるが、
女性のマリアだけは・・・
この状況がいかなる事態なのか、いち早く気づいたようだ。
「ま、まさか、ミィナさん・・・、
もしやこれもアルテミスの能力なの!?
だ、男s・・・いえ、全員まわれ右!!
戦いが終わるまで後ろを振り返っちゃいけません!」
突然に号令掛けられてもタケル達は戸惑うばかり・・・。
「えっ!? マリアさんどういうこと・・・!?」
「問答無用! 全員早く!! 」
訳が分からずタケル達は直立したまま廻れ右!
一体何ゆえか、後ろに姿勢を変えたのはサルペドンも同様だが、
聡明な彼はミィナの身に何が起きたか、この段階で気づくことができた。
「アルテミスの別の能力だと!?
それはもしや・・・
女性だけに影響を与える力!?」
見れば・・・
いや、スサの男性は誰も見る事が出来ないが、
ここにはアルテミスの配下の兵たちだっている・・・。
晒し者だ・・・、
今やミィナは、あまりの激痛に我慢することもできず、
ショートパンツは赤く染まり出していた・・・。
必死に隠そうしゃがみ込んでも、このままでは太ももだって血だらけに・・・。
もうおわかりだろう、
生理である。
それもこれまでミィナが味わったことがないぐらい、
出血と激痛を伴っている。
そう、
これもアルテミスの能力なのだ、
出産と月を象徴する女神アルテミス!
この地底世界に月こそないが、本来その象徴が意味するところは、
月の「見えない」力によって引き起こされる人間体内の様々な機能への影響・・・。
それが最も色濃く表れるのが、女性の生殖に関する機能なのである。
本来、ミィナの生理が始まるのはもっと先の予定である。
それがアルテミスの体内操作によって、
無理やりこの時期に引き起こされてしまったのだ!
「ちょ・・・ちょっと待て!
こ、これ・・・ま さ か てめぇの・・・仕業・・・!?」
「キャーハッハッハッハ!
今頃気づいたのぉ!?
私を誰だと思っているの!?
多産と純潔を約束する野獣の女神!
それがこのアルテミスなのよ!
その私に女の身で戦いを挑むなんて無知もいいところぉ!
あなたのお仲間たちは後ろ向いててくれてるみたいだけど、
ここには私の可愛い兵士たちもいっぱいいるからねぇ?
・・・どぉ?
今もあなたの恥ずかしい格好・・・
みんなにジロジロ見られちゃってるわよぉ!?」
細かい事は何を言っているか分からないが、
アルテミスの態度と、後ろに控えている兵士の下卑た表情が全てを物語っている。
うげぇぇ!!
こっち見んなぁああああっ!
チクショウ!
・・・この恥ずかしさ・・・、
消えたぃ・・・
もう、ミィナには冷静な思考を行う事が出来なくなっていた。
だが普通の女性なら、
もう戦意すら喪失して降参するしかないはずだが、
家族を殺された恨みから、それだけは選ぶことなど出来やしなかった。
ミィナは辺りを見回すと、
左手の方角に、大きくはないが、小さな泉が湧きでている場所に目をつけた。
ヨロヨロと歩きはじめると、なんとか冷たい泉の中に腰までつかる事に成功、
途端に泉が濁り、同時に赤い色も拡がって行く・・・。
アルテミスは余裕の笑みを浮かべ、
ミィナの行動をニヤニヤと観察しているだけだ。
「そこでいいのかしらぁ、お嬢ちゃん?
あたしにあなたの武器は届かないけどぉ?
それとも、その泉をあなたの棺にする?
・・・困ったわねぇ?
そこは村人たちの飲料水にもなるのにぃ。
あなたの汚らわしい血で、あまり汚さないでねぇ?」
そして再びアルテミスは凶悪なる弓に手をかける。
もう、勝負はついたと考えたようだ。
特に工夫もなく、わずかな軌道操作のみでミィナに矢を撃ちこんでゆく。
必死に防戦するミィナだが、飛んでくる矢を全て叩き落とす事も出来ずに、
どんどん彼女の美しい皮膚が血まみれになってゆく。
ちくしょう・・・っ!
このままでは戦闘不能になるのは時間の問題だろう。
既に出血多量で貧血寸前の状態なのだ。
致命傷を食らうのが先か、意識を失うのが先か・・・!
こんなところで・・・!
パパやママの仇を討たなきゃいけないのに・・・、
さんざん偉そうなこと言って・・・
何にもできないじゃん・・・?
悔しい・・・っ
なんだよ、あの女・・・?
普通、てめぇも女ならこんな下卑た手ぇ使うかぁ?
人を傷つけるのをあんなに楽しそうに・・・
胸を揺らしやがってェェェっ!!
ブチン!
ミィナがついに切れた!
下腹の激痛も幾分緩和してきたこともあるが、
幾つもの怒りが溜まりに溜まって、
最後の闘争本能に火をつけたのだ!
飛んでくる矢を叩き落とすパターンに変化が現る!
これまでの左右に打ち払う動作を全て止め、
ひたすら上から水面や地面にたたき落とす動作のみに統一!
それも叩き落とすだけではない。
少しずつ少しずつアルテミスに近づこうと、
泉から乾いた陸地に一歩ずつ・・・。
アルテミスも最終局面と考えたのか、
そろそろミィナを弄るのにも飽きたようだ。
ストックしてある矢の本数を確認すると、
二本いっぺんにその指でとり、最後の攻撃を準備した!
「終わりよぉぉっ!!」
第一の矢!
アルテミスは天を仰ぎ、洞窟の天井に向かって最初の一本を放つ!
それは天井に刺さる直前で軌道を変え、
真下にいるミィナの頭上に流星のように落下する!!
そして更なるもう一つの矢は、
上からの攻撃に対処しようとするミィナを、時間差で真っすぐに撃ち抜くのだ!!
「やってみろよぉぉぉっ!!」
凄まじいミィナの腕の動きは、鞭の先端を激しく何度も地面に叩きつける!
みるみる彼女の周りは土埃が舞い上がる!
ミィナの狙いは何か?
雨と言うものが存在しないこの地底世界では、
湿った場所と乾いた場所がくっきりと分かれている。
アルテミスが二本目の矢を撃とうとしたその時には、
既にミィナのカラダは土埃の間にぼやけ始めていたのである!
ミィナの狙いはそれだけではない!
そしてさらにミィナの繰り出す鞭は、逆回転でアルテミスの方角へ向かって土埃を巻き上げ、
アルテミスは目を開けている事すら不可能に・・・!
「うっ!?
こ、小癪な小娘がぁぁっ!」
へっ!
そんな状態で正確にあたしの位置を掴めるかぁっ!
頭上からの矢はアルテミスのコントロールを失い、ミィナのすぐ脇を落下!
そして彼女は、アルテミスが自分の姿を見失ったと思われる瞬間、
最後の力を振り絞って跳躍!!
当然、遠近感も掴めないこの状況では、
アルテミスにミィナを補足することは困難だ!
未だその身は空中にあるにも関わらず、
ミィナは頼りの鞭を繰り出す!
ちょうど着地のタイミングと同時に、その触手はアルテミスの細い首に巻き付いた!
「ぐあっ!?」
着地と言っても、ミィナはまともにもう立てやしないっ!
・・・でも、この鞭だけは離すもんか!
つんのめり、転がりそうになりながらも、両手でその鞭ごと巻き付いたアルテミスを引き寄せる!
一方、片手が塞がっている状態では、アルテミスは巻き付いた鞭を外せないのだ。
「ん な ろぉぉぉっ・・・!!」
ミィナもここで力を緩める筈もない、
・・・ここまで食らった恥辱、晴らさでおくべきか!!
カラダを引きずられ、ついにアルテミスは弓を落とす。
少しずつ二人の距離が縮まると、
ミィナは殺気を含んだひきつったような笑みで、怯えるアルテミスに脅しをかける。
「おっぱいの大きい姉ちゃんよぉ(年齢的にはババぁか?)?
よ・く・も・・・さんざんっぱらやってくれたよなぁぁあっ!!」
「ヒッ!? ヒィィィッ!!」
巻き付いた鞭の両端を引っ張り上げると、一気にアルテミスの首が絞まる!
神だろうが何だろうが、頸動脈を締め付けられて動ける者など存在しない!!
いったい、背後はどんな修羅場が繰り広げられているのだろうか?
タケルはおずおず、首をずらしつつ・・・。
「あ、あの・・・マリアさん、
彼女・・・無事・・・?」
なにしろ、後ろでは「グヘヘヘヘヘ!」というミィナ(?)と思しき歓喜の声と、
まさしく鶏でも絞め殺してるのではないかという、断続的なうめき声が聞こえてくるのだ。
もう、ここらで振り返っても・・・?
マリアは黙って戦いの様子を見届けている。
荒事に慣れてるミィナと、
弓を落っことしてしまったアルテミスでは、もう勝負になりゃしない。
何かまだ奥の手を隠していたとしても、
即効性の技でなければミィナも絶対に怯む訳もない!!
もはや、アルテミスのカラダはビクンビクンと痙攣し始め、意識もどんどんと薄れてゆく!
そしてついに、アルテミスの口から白い泡がこぼれ始めた。
・・・白目むいている。
どうやら・・・これで決まったようだ。
ミィナはゆっくり両手を解くと、
最後にアルテミスの胴体に蹴りをぶち込んで、その意識を確認した。
反応があるのは、ここに来ても揺れまくる二つの巨乳だけ・・・。
・・・完全に気絶している。
終わった・・・。
勝った・・・!?
そこで初めてマリアは大声で叫んだ!
「ミィナさんの勝ちです!!
アルテミスは気絶しましたよ!!」
急いでマリアは自分の上着を外して、ミィナの所に駆けてゆく。
早くミィナの腰に巻いてあげないと・・・!
タケル達は半信半疑でやっと振り向くと、
ちょうど、そこには疲れた笑顔を浮かべ、右手を高々と掲げるミィナが、
ペタンと地面に崩れるところだった。
・・・でもニヘ~って笑いながら最後の決め台詞を・・・。
「へへっ、・・・あたし・・・
最っ強・・・!!」
へぁ~あ・・・
バタン・・・!
最後の決め台詞・・・別の物語で誰か似たような事、言ってましたかね?
どこで覚えたんでしょうね、「彼」は。
次回アルテミス編最終回。