表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
469/676

緒沢タケル編7 標の神ヘルメス 「闇」の中の未来

以前も書きましたが、

ポセイドンは大地の神です。

名前の由来は「Daの夫」又は「Daの主人」

Daは大地女神と言われています。

Da-mater「母なるDa」 mater は mother


マリアの言葉は他のメンバーに知られてはならない事だ。

それを知るのは、今は亡き美香より以前の先代達のみ。

勿論、それが知れ渡ったところで、何がどうなるわけでもないのだが、

メンバー達の結束力にヒビが入らないとも限らない。

ましてや組織のナンバー2が、

外部の人間だったとしたら・・・。


 「マリア・・・だからこそだ。

 もしモイラの予言通り、スサの人間がたった一人しか生き延びられず・・・、

 スサの人間ではない私が生き延びたら・・・、

 大恩ある歴代の緒沢家当主たちに、私は何と詫びればいい・・・?

 美香だけに留まらず、

 才能あふれるタケルまで失うことになったら・・・!?」


 「その時は・・・サルペドン、

 あなたは全てを捨てる覚悟はあるのですか・・・!?

 あなたの『能力』なら、全てを無に帰すことも可能・・・。

 もしあなたが騎士団の人間だったら、地上はもう既に・・・。」

 

 「私は決意を曲げない。

 もしタケル達に万一の事があれば・・・、

 ゼウス達の野望を止められないとしたら・・・、

 私の命と共に・・・

 奴らを地獄の底に道連れにしてやるさ・・・。」


マリアは彼の悲痛な表情を見逃さなかった。

とはいえ、彼女がそれを知った所でどうこうすることも出来やしない。

静かに・・・そして幾分さみしそうに・・・、

先をゆくタケル達の後へと、マリアはゆっくりと歩きはじめた。


すぐにマリアの後を追いかけるサルペドン。

だが、マリアは彼が追いつくのを待って、

何かを決断したかのようにもう一度口を開いた・・・。

 「サルペドン、でも・・・

 もう少し彼を見守っていてください。

 もしかしたら、タケルさんも・・・

 ある意味スサの人間じゃないかもしれませんよ・・・。」


 「・・・なに? どういうことだ?」

 「この地に足を踏み入れて、

 私の感知能力も増大しているのが自分でもわかります。

 それと同じ影響だとは思うのですが、

 タケルさんの精神のエネルギーも異様に肥大しているのです・・・。

 先ほどの・・・オリオン神群の者と比べても遜色ないくらいに・・・。」

 


再びサルペドンの足が止まる。

 「本当か?

 それは・・・天叢雲剣と緒沢家代々伝わる紋章の影響ではないのか?」

 「勿論、その影響によるところが大きいと思います。

 その二つの神器を外せば、

 タケルさんのパワーは著しく小さくなるでしょう。

 ですが・・・この先、彼の力は更に膨れ上がる可能性も捨てきれません。

 まだ私たちは・・・彼の成長の限界を知らないではありませんか?」


それはサルペドンも感じていた。

緒沢家の当代の子供たち・・・、

美香も・・・

そしてタケルにしても驚かされる事ばかりである。

もしあの二人の姉弟が力を合わせた時、

きっと計り知れない未来をも生み出せるに違いなかったろう・・・。

だが、稀代の天才少女美香は、もうこの世にない・・・。

かえすがえすもその事が悔やまれる。

 


では、残されたタケルに秘められた才能とは如何なるものなのか?

古代神スサノヲの血脈・・・、


いや・・・

アトランティスの言葉を使うなら・・・

大地の神・・・ポセイドン・・・。

その伝説について「誰よりも」詳しいはずのサルペドンですら・・・、

「その神」の本当の正体など、

その真実の姿など考えてみる事すらできなかったのである・・・。







さて・・・

ここはピュロス王国の主要村落の一つ・・・メタパ。

村全体がオリオン神群の所有物であり、

この村は冥界の支配者ハデスの直轄地テメノスである。

村と言っても王都に近く、人口もかなり多いので、村というより街と呼んだ方がいいかもしれない。

ゼウスほどの華麗で壮大な宮殿こそないが、

このピュロス内でも幽玄かつ壮麗な・・・、

どことなく線の細い神殿に彼は住んでいる。


そしてそのハデスの神殿に、一人の若い少年神がやってきた。

ヘルメスだ。

二匹の蛇が巻き付いた杖を持つヘルメスは、

相変わらずにやけた顔をしつつも、ピュロス内の実力者であるハデスに頭を下げる。  

 「・・・ハデス様、只今ヘルメス戻りました!」


ここでも陰気な顔をした冥界の王ハデスは、

気だるそうにヘルメスを出迎えた。

 「フム・・・、会えたのか、侵入者に?」

 「ええ、見すぼらしい奴らでしたよ。」


冥界の王ハデス・・・

見た目の風貌は、地上の人間でいう50歳前後に見える。

漆黒の黒髪を肩までストレートに垂らし、

その額には古傷が見える。

彼はゆっくり立ち上がり、

ヘルメスに問いかけると言うよりも、

どちらかと言うと、独り言でも始めるかのように呟き始めた。

 「100年以上前に、我々の王国を裏切り地上に出て行った者がいる。

 そいつは私の顔に消えることのない傷をつけながらも、

 ゼウス様に片目を潰され、半死半生で地上へと逃げ延びた。

 その後、その男はアトランティスという伝説を流布し、

 ついに、我々に立ち向かうだけの勢力を創り上げたと、

 かつてモイラが報告したが・・・、

 よもやそいつらと本当に矛を交える日が来るとはな・・・。」

 

ヘルメスは、

まるで「年寄りのたわごとを」とでも言わんげに呆れ顔の表情だ。

 「どんな奴らだろうが、地上の人間になんか何もできないのでは?」

 「フ、まぁそう言うな。

 油断をしないに越したことはない。

 それより目印は置いてきたのか?」

 「ええ、バカでもウジ虫でも分かるようにね。」

 「奴らの侵入地点から最も近いテメノスはどこだ?」

 「狩猟の女神アルテミスのところが一番近い所です。」

 「彼女か・・・、

 獲物を一人占めするなと伝えておけ、

 それと・・・隻眼の男がいたら手を出すなと、な。」

 「隻眼・・・ああ、さっきの話の男ですか、

 ・・・いたかなぁ、そんな奴?」

地上のゴミムシと舐めきっていても、

そこまでヘルメスは無能な少年神ではない。

しっかりスサの有力者たちの姿は目に焼き付けている。

彼が観察した者達の中に、隻眼だと「一目で」わかる者はいなかった。


 「ヤツはゼウス様に任せておくことだ、

 モイラが予知した我々の被害というのは、

 恐らくその男に挑んで返り討ちにあった者の事だろう。

 無理をせず、確実に他の侵入者を削って行けばいいのだ。

 そうすれば・・・我らの勝利は動かない・・・。

 クックック、クックックックックック・・・!」

 


ハデスは見た目の印象通り、陰湿な笑い声を浮かべる。

自分たちの勝利に絶対の自信を持っているのだ。

果たして地上の人間たち、

タケル達に勝利の可能性はあるのだろうか?


だがこの戦い、

ゼウスにも・・・ハデスにも、

ましてやスサのサルペドンにしろ、

誰にも予測する事すらできない別の者の意志が、

この戦いに含まれている事など、

如何にして思いつくことが出来たであろう?


この後、

スサの一団が、オリオン神群の治める「ある」村に辿り着く事により、

事態は少しずつ少しずつ、真実の未来へと近づいていく・・・。


古代神の血脈は、徐々に・・・

そしてはっきりと脈動を始めていくのだ・・・!

「彼」が・・・

再び産声を上げる日は・・・もう目の前に・・・。

 



次章から「狩猟の女神アルテミス」編です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ