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緒沢タケル編7 標の神ヘルメス 弄ばれるタケル


勿論、タケルもサルペドンの言葉には全て同調だ。

戦いたくなどないが、他に手はありそうもない。

・・・ならば、

せめて・・・泥沼の戦いだけには陥らぬように・・・、

最小限の被害と悲劇で全てを終わらせなければ・・・!


 バチィッ!


タケルは天叢雲剣を抜く!

暗闇の中で、青白い筋状の光がタケルの右腕からほとばしる!

天叢雲剣の能力を知らないミィナを除くスサ全員、身の危険を感じて後ずさった。

途端にサルペドンがタケルを制す。

 「止せ! タケル、今はまだ・・・!」


だが、タケルにしたって、別に殺意と敵意を剥き出しにしている訳ではない。

彼の決意が天叢雲剣を発現させただけなのだ。

 「大丈夫だ、サルペドン・・・。

 脅かしてやるだけだ・・・!」

その、不思議なほど落ち着いたタケルの声に、

サルペドンはゆっくりと身を引く。


 こいつ・・・成長しているのか・・・。

 


タケルは2、3歩ヘルメスの傍に近寄ると、

高い所から見下したままのヘルメスに向かって顔を見上げた。

 「・・・戦うと言う事は、

 お前たちにも相応の犠牲を生むことになるんだぞ?」


タケルの言葉はサルペドンがヘルメスに伝える。

だが、そのタケルの思いはオリオン神群に届くことはない。

 「・・・はっ、戦いになんかなるかよ?

 どんな武器を手にしたところで、

 お前ら下等生物は我らオリオン神群の足元にも及ばない。

 いいぜ?

 オレ達の世界・・・地下王国ピュロスはこの先だ。

 殺されにやってくるんだな?

 案内は残しておいてやる。

 ・・・それと、いい事をおしえてやるぜ、

 お前ら・・・アトランティスって言うのか?

 運命の女神モイラが予言したぜ?

 ピュロスにやってきたアトランティスの人間のうち、

 最後まで生きていられるのはたった一人だけだってな!?」

 

その言葉に衝撃を受けたのはサルペドンとマリア・・・。

普通ならただの戯言かとも考えるのであろうが、

地上の人間の理解を上回る能力持つ、オリオン神群の言葉は無視できない。

・・・しかし、それを仲間に言うわけにもいかないのだ・・・。

すぐにサルペドンは、

ヘルメスの言葉の後半以外を伝えた。

どんな形か知らないが、案内があるなら遭難することもないだろう。

・・・勿論、罠でなければの話だが・・・。


どうやら、ヘルメスはこの場で戦うつもりはないようだ。

話の流れでタケルもそれは理解した。

最悪の状況も想定したが、

自分より年上だろうが、子供の姿をしたヘルメスと戦うことは何としても避けたかった。

ましてや、どんな能力を持っているか知らないが、

相手は武器とも思えない杖一本しか持っていないのだ。

自分の背丈の3分の2しかない相手に、

切れ味鋭い剣を振りかぶる姿は想定したくもない。

 

 「案内?

 なら先を誘導してくれるのか?」


タケルの疑問に、さらに見下した目線を送るヘルメス。

 「はぁ? バカ言うなよ、

 お前らと同じ空気なんか、これ以上吸えるか、低能、害虫。」


・・・冷静なはずのタケルだったが、2、3秒の間の後、

彼の天叢雲剣の放電が強まった。

反射的にタケルの腕が構えに入ったその瞬間、

それに合わせるようにヘルメスの右腕が振りかざされる・・・!


 !?

その時、全員の視界から・・・

何とヘルメスの姿が消え去ってしまったのだ。


 「あっ!?

 どこ行きやがった!?」

タケルは勿論、全ての人間が辺りを見回す。

だがどこにもヘルメスは・・・。


 「・・・お前の後ろだよ、ばぁか・・・!」

 

一体何をしたのか、

いつの間にか、タケルの腰骨にヘルメスの杖が当てられている・・・。

 そんな・・・どうやって背後に・・・!?


今度は同じ足場に立っているせいか、

ヘルメスの憎たらしい視線は、タケルを見上げる形になる。

・・・どっからどう見ても、ひねた小僧にしか見えない。

いや、それより、もしこの小僧が握っていた物が杖なんかじゃなく、

ナイフや剣だったら・・・。

ヘルメスは、固まって動けないタケルの無様な姿に満足すると、

ゆっくりその場を離れ、

先ほど自分がいた筈の岩場の上へと、よじ登って行く。

完全に戦意を持ってないようなので、安心は安心のようだが・・・。

だが、岩場の上に完全に立ち上がると、

ヘルメスはもう一度タケル達を見下し、別れの言葉を告げた。

 

 「わかったか?

 お前らなんて捻りつぶすのは簡単なんだ、

 オレだけじゃねぇ、

 他にもお前らの想像もできねぇような力を持った神々が、この先、大勢控えてるんだ、

 とっとと尻尾丸めて逃げ帰るんだな!

 じゃあな、・・・ハァッハッハッハっー!!」


ヘルメスがまたも杖を振りかざすと、

次の瞬間、再び彼の姿が消えた。

超スピード? 何らかのトリック?

いや、違う、

ヘルメスの姿が消えて数秒後、サルペドンが静かに口を開いた・・・。

 「瞬間移動・・・テレポーテーションか・・・。」


思わずタケルが振り返る。

 「はああああああっ!?

 ちょ、嘘! そんなSFじゃあるまいし・・・!?」

だが、サルペドンは大まじめだ。

いつもの厳しい無表情に戻っている。

 「・・・大体、理解できたろう、

 これがオリオン神群が持っている能力なのだ。

 それぞれが、自らの象徴に即した能力を持っている・・・。」

 




ヘルメス編はあと少しで終わりです。


戦闘は次の章からです。

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