表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/676

最終章 解き放たれるレディ メリー

最終章と銘打ってますが、

あくまでレディ メリーを主人公とする物語の最終章です。


 

・・・そこは何もない白い空間だった・・・。


右も左もない・・・、

床はあるが天井もない。

真っ白な世界・・・。

ただ「彼女」のヒールの音だけが、

コンサートホールの中にでもいるかのごとく、コツコツ響く。

気がつくと、

いつの間にか「彼女」の周りに、

いくつかの古めかしい扉が出現していた。

重厚そうでゴシック装飾を思わせる大きな扉・・・。

壁もなく、

柱も何もない広大な空間に、

ただ単に無数の扉だけが立ち尽くす。

「彼女」・・・メリーは首をかしげ、

手近な扉を開けようと試みた。


扉の取っ手に手をかけた瞬間、

どこからか、

気味の悪い子供の声が聞こえてくる・・・。

   「・・・ぁぁぁん・・・。」 

やけに声が低くて、

異様に間の伸びたしゃべりかた・・・。

その声のする方を振り向くと、

少し離れたところの扉の前に、

メリーの記憶にある子供の姿があった・・・。


  「・・・姉ぇちゃああん・・・」

 




 「・・・姉ちゃあぁん、

 こっちだよぉぉぉ、

 こっちにきてよぉぉぉ・・・!」


蝋人形のように青ざめた顔の子供がいる。

生きた人間の顔には見えない。

だが胸からは真っ赤な血がドクドク流れている・・・。

滝のように無尽蔵に赤黒い血液があふれ出して、

まるで児童遊園の噴水溝のようだ。

 「・・・エル・・・マー・・・!?」

自分が「マリー」と呼ばれていた頃の弟が立ち尽くしている・・・。

何故、弟が胸から血を流してここにいるのだろうか?

エルマーは一定の間隔で、

同じ言葉をメリーに向かって話しかけてくる・・・。

それが何を意味しているのか、

今のメリーは、

自らに問いかける事すらもできない・・・。

 


また別の扉の方角から声がする。

 「エミリーィィ!

 晩御飯冷めちまうだろぉぉ?

 ・・・早く家に帰っておいでェェ!」

眉間にしわを寄せた母親だ。

しわを寄せすぎたためか顔がだんだんつぶれていく。

メリーに向かって、

やはり一定の動作で手招きをしている。

 「・・・ママ!?

 ご、ごめんなさいっ・・・!」


今度は男性と女性の声が同時にあがる・・・。

 「「・・・マァリィ~?

 いつまで外で遊んでいるんだぁいぃ?

 暗くなる前にぃ

 戻ぉってきなさぁぁい・・・!」」

くたびれた感じの夫婦・・・、

メリーの記憶にある顔より年をとっている・・・。

いや、というより、

目の前でどんどん年をとっていく・・・、

髪は抜け、

腰が曲がりしわがさらに深くなる・・・。

 「・・・お母さん!? お父さん!?」

 



彼ら全てが、

回転の遅いレコードプレーヤーの様に、

異様にゆっくりとした声でメリーを呼びかける。

 「(ねぇちゃ~んエミリ~ぃぃぃぃまぁりぃ~ねぇちゃ~ん・・・)」

彼らは各々の扉から動こうとはしない。

動きも単調だ・・・、

一定の動作を繰り返しているだけだ。

これは夢の中の光景なのだろうか?


 違う・・・、

 夢ではない・・・。 

 何だか分らないが、

 今、自分は閉じ込められている。

 ここから出なければならない。

 ・・・だけど、

 出口はどこにあるのだろう?


自分の過去の記憶にある顔が、

こっちに来いと呼びかけてくる・・・。


 その声に従えば良いのだろうか? 

 彼らのいる場所の扉を開けば・・・

 もとの世界に自分は帰れるのだろうか?

 私はどこへ行けばいいと言うのだろう・・・?

 






・・・汚くてゴミゴミした街・・・、

建物や家は古いが同時に汚い。

空き缶や粗大ゴミが溢れている。

一人のくたびれた老人が、

何かから逃げるように、

足を引きずりながら、その町の片隅を走っていた。

杖を片手に、

白いひげを生やした老人は、

息も絶え絶えに必死に何かから逃げている。

見れば、この老人、

片目がつぶれている。

いったいどんな過去を持っているのだろうか・・・。


突如、老人の前方の視界に、

長身痩躯の男が現れた。

この街には場違いな上等の黒いスーツを着ている。

ウェーブのかかった赤毛の男は、

老人に向かって語りかけた・・・。

 「どちらへ・・・お急ぎですか?」


・・・老人はそれに答えず慌てて後ろを振り向く。

すぐさま、もと来た道を戻ろうとしたが、

またもやその動きを阻まれた・・・。

曲がり角の端から、

やはり高級そうなスーツを着た金髪の青年が現れたのである。

 「失礼します・・・、

 ブレーリー・レッスル様ですね?」

 


老人は立ち止まったままキョロキョロ辺りを見回す。

 ・・・逃げ道は他に・・・。

だが、すぐにあきらめたようだ。

さらに新手の男が、

近くのビルの入り口の影から現れたからである。

 「あなたに危害を加えるつもりはありませんよ。

 ただ、私たちと一緒に来て頂きたいだけなのです・・・。」


最後に現れた男は、

三人の中で一番年上の感じがする。

恐らく彼らのリーダー格であろう。

老人は息を整えながら観念したようだ。

 「・・・金なら持っとらんぞ、

 身寄りもない・・・、

 わしに何の用があるんじゃ・・・?」

年上の男が答える・・・。

 「ある方があなたに会って話を聞きたいと仰っています。

 ・・・宜しいですかな?」

老人は、

この男達に拒否しても無駄だと悟ったのか、

険しい顔をしたまま、

威嚇用に持ち上げていた杖をおろした・・・。

 

 

 「我らの無礼な願いをお聞きいただきありがとうございます。

 どうぞ、こちらへ・・・。」

もと来た道には、

一台のリムジンが用意されていた。

金髪の若者に案内されて、

老人は不快そうに黙って乗り込む。

全員が乗り込むと、

車はゆっくりとその汚い街から離れていった。

老人とリーダー格の男は後部座席に、

金髪の若者は運転を、

そして赤毛の男は助手席にいた。


 「ライラック。」 

リーダー格とみられる男が助手席に向かって声をかけると、

 「はい?」 

ライラックと呼ばれた赤毛の男が後ろを振り向いた。

 「・・・お嬢様に連絡してくれ・・・、

 ご依頼の老紳士をこれからお連れする・・・とな。」

その言葉に赤毛の男はちょっと戸惑ったようだ。

 「えっ?

 私が・・・ですかっ?」 


年上の男は一度、彼をにらみつける。

 「何か不満でもあるか?」

 「いっ、いえ、別に何も不満というか・・・。

 ただ、

 直接お嬢様に依頼を受けたのはサー・ケイ・・・、

 あなたなのですから、

 報告するのはやはり・・・。」

 「べ、別に深く考える必要はない!

 お嬢様の扱いは・・・ライラック、

 おまえさんの方がうまいだろう!?

 ただそれだけの事だ!」

 「・・・わかりました、はぁ(ため息)、

 ・・・おい! ガラハッド、おまえ今、笑ったろう?」

ライラックは運転席の青年をにらむ。

 「えッ? 気のせいですよ!

 やだなぁ、わたしは、

 ホラ、運転に集中して・・・。」

 「はぁぁ~・・・。」 

よっぽどかけたくないのだろう、

ライラックはもう一度ため息をついて、

車内電話に手をかけた。

 「あー、もしもし、

 北欧支部のライラックだ。

  ・・・マーゴお嬢様に替わってくれ・・・。」

 


今回は初っ端から重要人物バシバシ出します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ