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緒沢タケル編6 オリオン神群編序章 超常能力


いきなり話を振られた少女は、

戸惑いながら・・・いや、視線をあげることもできずに、

この一両日中に起きた惨劇を思い出そうとしていた・・・。

その心の中では、

思い出さねばならないという義務感と、

それを頑なに拒否する心の弱い部分とでせめぎ合っていた・・・。


マリアが気を使うが・・・。

 「サルペドン、そんな彼女に・・・、

 ねぇ、あなた、無理に思い出さなくてもいいのよ・・・?」


だが、それを横目で見るタケルには、

もう少女の意志は予測できていた・・・。


 ・・・この子はきっと真正面から辛い事実に向き合うだろう・・・


そして少女は、

タケルの判断通りに少しずつ口を開いてゆく・・・。

 「あたしの・・・目撃したものでは、

 山から大勢の動物・・・、

 狼、大鹿やイノシシ・・・、

 クマも現れた・・・、

 そいつらが一気に村人たちを襲ったかと思えば・・・、

 半狂乱になって自分たちで家族を殺し始めた者たちもいた・・・。

 パパやママも・・・、

 他には・・・、

 見えない何かに向かって暴れて・・・

 突然倒れて死を迎えた人や・・・、

 自分で自分の喉に刃物を突き刺した人もいた・・・。」

 


苦しそうに顔を歪ませながら、少女は必死に言葉を絞り出す。

傍で見ている方が辛くなる程に。


 「こいつらは・・・

 ここで縛られてる奴と同じ服をしていたそいつらは・・・、

 どこからともなく現れたかと思うと、村人たちの惨劇をそばで笑いながら見ていやがったんだ!!

 コイツらだけが、誰にも襲われずに・・・

 まるで演劇やショーでも見てるかのように!

 あたしの村の人間たちが死んでいくのをせせら笑っていたんだ!!」


心を痛める証言ではあるが、そこにいた酒田達は違和感を覚える。

 「え!?

 ちょっと待ってくれ、お嬢チャン・・・、

 じゃあこのオリオンって奴らは村人を直接殺したわけじゃ・・・!?」


 だからどうしたっ!


少女はまるでケンカでも売るかのように反論する。

 「コイツラが何かした事だけははっきりしてるだろ!!」

 「あ、いや、そ、そうなんだろうけど・・・。」


話のきっかけを作ったサルペドンが申し訳なさそうに二人をわける。

 「済まない、落ち着いてくれ・・・、

 今の彼女の話を聞くと・・・、

 誰がこの村を襲ったのか、ギリシア神話を多少なりとも知っている私なら大体想像できる・・・。」

 

 えっ!? たったこれだけで!?


その言葉に驚かぬ者などいないだろう。

それはサルペドンも理解しているようで、ゆっくりと話を続ける。


 「そうだ・・・、

 それが彼らの能力なのだ・・・、

 何故なら、彼らは曲がりなりにも神を名乗っている・・・。

 そしてそれらは・・・その神の名にちなんだ超常現象を操る力なのだ・・・。

 動物が襲いかかってきたってことは・・・、

 獣神パンか・・・もしくは森の神シルヴァヌスだろう。

 村人を錯乱させたのは・・・、

 争いの女神エリスか暴力の女神ビアでも連れていたか・・・。

 もしかしたら死の神ハデスもいたのかもしれない。


 他に例えば・・・

 鍛治の神ヘファイストスなど連れていれば、炎を操る能力でこの村は焼き払われていただろう・・・。

 いわゆる・・・精神力・・・

 凄まじい観念動力や精神感応によって、この村の人たちは殺されていったんだ・・・。」

 



あまりの荒唐無稽な話に、タケルの顔から失笑が漏れる。

 「は・・・はっ、バカ言うなよ、

 いくらなんだってそんな無茶な話・・・あるかよ?」

 「何を言ってる、タケル、

 お前の口からそんな言葉は出せないはずだ。」

 「はぁ!? どういうことだよ!?」

 「お前はアーサーやモードレイユをどうやって倒した?

 美香が緒沢家の崩れた屋根や柱をどうやって吹き飛ばした?」


 「えっ!?

 そ、それはバカだな、それは天叢雲剣の・・・。」

 「天叢雲剣? それは金属の塊だぞ。

 お前が首にぶら下げてる紋章も天叢雲剣も、その使い手の精神能力を増大させ、そのエネルギーを形にしているだけで、それらだけではただの物体なんだ。

 わかるか?

 能力の原理は一緒だ。

 強大すぎる精神エネルギーが、これだけの惨劇を生み出したんだ・・・。

 わかりやすく現代用語でいえば・・・、

 彼らは全て恐ろしい力を持った超能力者なのだ・・・!」

 

タケル一同息を飲む・・・。

そんな話を信じられるか、という拒否感もあるのだが、確かに天叢雲剣で発現させる雷電とて、他人から見れば考えられもしない超能力・・・。

だが逆に、もしそれらの能力が真実だとすれば・・・、

タケルのように器物や媒介に頼らずそれだけのパワーなんて、一体どれだけの・・・。


そしてタケルはもう一つの事実に気づく。

 「ちょ、ちょっと待ってくれよ、サルペドン、

 オレがさっき倒したトモロスってハゲ頭も・・・、

 もしかして『能力』とやらを使って、オレに何かしようとしてたのか・・・?」

 「そうだろうな、

 実際、何をするつもりだったのかは分からんが、お前の攻撃の方が早かったのが幸いしたな、

 ・・・全くお前には神経を使わされる・・・。」

 


一同は静まり返っていた。

疑問は後から後から湧いてくるのだが、

今の状況では何をこれ以上、どう聞けばいいか判断しようもないのだ。

そして、そんな周りの状況を全て理解した上でサルペドンは逆に問う。

 「・・・さて、大体私が聞き出したこと、知っている事はそんなとこだ・・・。

 それで、スサの総代たるタケルよ、

 どうするつもりだ?」

 「なっ!?

 ここでオレかよ!」

 「今さら何言ってる。

 まさか、ここで『何もしない』とか、騎士団の時のような発言をするつもりか?」

 「ちょっと待て、

 あんときゃ、戦い終わった後のセリフじゃねーか!

 一緒にすんなよ!!」

 「・・・そうだな、済まない。」


 ん? やけに素直だな・・・、

 今日に限って言えば・・・。


いつも偉そうなサルペドンの態度に違和感を覚えつつも、タケルは目の前の問題をまた決断しなければならなくなった。

ようやく、

騎士団との苦しい戦いが終わったばかりだと言うのに・・・。

 

というわけで、オリオン神群戦は主に超能力バトルとなります。


主にです。



タケルと天叢雲剣に頼りきりではありませんのでそこはご安心を。

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