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緒沢タケル編6 オリオン神群編序章 ウィグルへ

今回の説明と、

天使シリス編でのエリナちゃんの説明、

同じ話も違う話もあります。


そしてそれはパラレルワールドだからではなく、

どちらかというと意図的なものです。


 「上から見るとミニュチュアのおもちゃみてーだな・・・。」


スサ移動型戦闘基地ガルーダは、

翼を広げ、広大な中国タクラマカン砂漠を横断していた。

どこまでいっても砂砂砂・・・。

変わる景色は砂の風紋と空の雲・・・。

改めて地球の広さが認識される。

それでもさすがに高速の機動力を誇るガルーダだ、

やがて景色に変化があらわれ、

塊のような緑や、人口の建造物も見えてくる。

デン・テスラの説明では、あと30分ほどで砂漠地帯は完全に抜け、森林・山地のエリアに入るようだ。

肝心のウィグルという村は、そこから更に奥地らしい。


 「そもそもウィグルってどんな所なんだい?」

タケルは頭の回転そのものは、そんなに悪い方じゃない。

「勉強は苦手だ」と思い込むことで、

あまり学力的な知的好奇心を伸ばしてこなかっただけである。

それよりバカな友人たちと遊んでた方が楽しかった。

勉強なんてする時間は惜しくてたまらない。

 

だから、彼があまり世間的な常識を知らなくても、それほど不自然なものでもない。

今回の説明はマリアに任そう。


 「タケルさん、

 まず、ウィグルという土地は二つの場所があります。」

 「二つ? へぇ?」

 「まずは有名な中国の新疆。

 新疆ウィグル自治区と呼ばれ、中国内でも最大級の少数民族が住んでます。

 少数民族と言っても1000万近い人口です。

 ウィグル人はモンゴロイドとコーカソイドの混血とされていて、

 言語的にはトルコ人とかなり近い遊牧系の民族です。

 日本語とは文法が一緒ですから、日本に来る留学生も多いそうですよ。」

 「ふむふむ。」


 「それとこれから私たちが向かうのは、

 そのウィグルとはまったく別種の・・・、

 人種的には完全にアーリア系のようですが、長い間、隔絶された地域に閉じ込められていたために、他の民族と融和する機会が全くなかった幻の民・・・、

 数万年前の古代王朝の子孫を自認する一族の築き上げた村・・・、

 それがこれから向かうウィグルです。」

 


 「数万年前の古代王朝?

 その辺りで、スサと絡んでくるのか・・・。」

 「ええ、そうです、

 ウィグルという村が発見されたのは第二次世界大戦前ですが、

 その後の混乱で、一時は中国共産党に飲み込まれる危険もありました。

 タケルさん、あなたのお爺様が、

 彼らウィグルの民を説得し、やがて志を一つにすることができたのです。

 貧しい村ではありますが、レアメタルの産出と、外からの侵入を拒む特殊な立地に恵まれ、血なまぐさい政治の世界からは、比較的独立性を保って今に至ってます。」


 「ダイアナはその・・・

 スサの・・・やっぱり、古代の神とやらの血筋に当たるの?」

 「そうですね、

 直系というわけではないようです。

 基本的に一族の長が、その正統性を保持するわけですけども、

 ダイアナはその長の親戚だそうです。

 彼女は高い知能を持ってましたので、長の推薦でスサに入ってきたのです。」

 


 ・・・はぁ、

 ダイアナの家族にどんな顔をすればいいのか・・・


恐らく、その村やダイアナの生家には、

彼女の生きてきた痕跡を見ることもできるはずだ。

自分自身、それを見ちまえば涙を堪えることもできないかもしれない。

だが、一番悲しいのは自分ではなく・・・。


考え込んでいるのを見かねてか、

マリアはさらに、興味深い話もしてくれた。

 「タケルさん、

 これから向かうウィグルの伝説は、少し緒沢家のものとは趣を異にしますよ。」

 「え? 伝説?

 復活するって言うスサノヲの神様のことかい?」

 「ええ、

 ウィグルの村の伝説では、

 やがて『生誕』するのは天使だということです。」


その時タケルは、これまででは聞きなれない表現に気づいた。

 「『生誕』? 『復活』じゃないんだ?」

マリアはにっこり笑う。

 「そうです、

 ウィグルでは『かつて王国が栄えていた』物語はあっても、

 それが滅びた原因についての伝承は一切ありません。

 そのせいか、やがて現れる『神』も、

 『復活』というニュアンスでは整合性が取れないのかもしれません。」


 なるほど、そういうことか。

 

マリアは話を続ける。

 「でも、その現れた天使がウィグルを繁栄に導くという意味では、スサのそれと近しい物語だと認識されています。

 それゆえ、ウィグルは当初からスサに協力的だったのです。」


ここまで聞いた上で、タケルに違和感は生じなかった。

無論、今はそんなことより、

ダイアナの家族に会うことに心を奪われていたせいもあるのだが、


これまで誰も・・・、


マリアやサルペドンや・・・美香やタケルの父・祖父母までも、

スサにまつわる伝説の奥深くを精査できていたとは言えなかった・・・。


このウィグルの伝説がいったい何を意味しているのか・・・、

この時点では、まだ誰も知り得る立場になかったのである・・・。




どうやら目的地に着いたのだろうか、

デンからウィグル着陸準備の内線を受ける。

ウィグルの周りは、

確かに崖や急勾配の山岳ばっかりだ。

この地形が、

周りからの容易な接近を拒んでいるという説明は、タケルにもよく理解できた。

 

しかも、辺りは常に強風が吹き荒れ、

ヘリぐらいでは吹き飛ばされてしまうという。

このガルーダでさえも、接近時にかなりの揺れを感じる。

それでも、一度山岳地帯を越えると、かなりの広さの平原が見え、

眼下にいくつもの民家や工場のような施設も視界に飛び込んでくる。

 ・・・エアポートみたいな広場もあるぞ?

あそこにガルーダを着陸させるのだろう。



ガルーダの管制室には周りの景色の要所要所を写すモニターがある。

その内の幾つかには、

真下の村の景色が映し出されているのだが・・・、

タケルの目には、

村のあちこちに、不自然なほどのカラフルな物体が映っていることに気づいた・・・。


同じことを気づいていたインディアン、グログロンガが先に口を開く。

 「・・・何か様子が変だ?」

その言葉に、管制室全員がモニターに釘づけになった。

 「あの色のついてるのはなんだ?」

 





村の様子が変です・・・。


次回、ようやく新キャラ登場。

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