緒沢タケル編6 オリオン神群編序章 残された視線
3人の会話を、息を潜めて監視する一つの視線・・・。
「おお、タケル元気そうだな!」
「ああ、酒田さん、クリシュナさん、
こんにちわ、
いま、サルペドンが出て行ったよ。」
「ああ、今すれ違った、
ところで、来週ダイアナの郷里に行くってホントか?」
いきなり気が重くなる話から始まったか・・・。
「・・・話、早いですね、
今、サルペドンに言われたばかりですよ・・・、
はぁ、どんな顔していけば・・・。」
クリシュナは立ったままだが、
酒田のオッサンは品なく、その辺の椅子にドッカと座る。
「・・・まぁ、オレらも幹部として同行するさ、
今、デン達が必死にガルーダの機体を修復してるからな、
それまでには間に合わせると言っている。
ダイアナの家族はどうだかわからんが、
彼女の村には、スサの血族が多いから、日本語を学んでるヤツも多い。
素直に自分の言葉でしゃべればいいだろう。」
タケルはますます気が重くなった。
「ええ・・・?
却って日本語わかんねーほうがいいんじゃないっすかね、この場合・・・。
ダイアナの郷里って確か・・・
中央アジアの奥深くって聞いてましたけど、
どの辺りなんですか?」
「そんなもんも知らねーのか?
って無理ないか、
戦闘の連続だったしな、
ロシアと中国の国境付近だよ、一応は中国領だ。
名前はウィグルって村だ。」
「また凄いところだな・・・、
確かにガルーダじゃないといろんな意味で危なそうですね・・・。」
そこへクリシュナが割って入ってきた。
「タケル殿。」
「ん、なんだい、クリシュナさん?」
クリシュナは一度戸口を見返した・・・、
何か気になることでも?
「あなたとアーサーとの戦いの後、
どのように戦いが終結したか聞いておられますか?」
ん?
そういえば、その辺は誰からも・・・
タケルは特に何も考えずに、記憶の糸を辿る・・・。
「・・・いや、あんまり気にしなかったし・・・
自然な流れじゃなくて?」
「ええ、まぁ、形としては、
あなたとアーサーは引き分けのような形で倒れましたからね・・・。
確かに最後の一撃を放った、という意味ではあなたの方が優勢に終わりました。」
「ああ・・・そうだね、
そういうことになるわけね。」
クリシュナは何を言いたいのだろうか?
「そこでですな、・・・ゴホン、
その時サルペドン様が、
その威厳を以て、戦闘終了の宣言をなされたのです。」
「へぇ、そうなんだ?」
へぇ、とは言ったが成り行きでは自然な話だと思う。
その時、
クリシュナは何かためらっているように見えたが、見かねて酒田のおっさんが説明を代わった。
「ん、でな、それはいいんだ、
実際、他に適任もいないし、事実戦闘も終わった。
ただな、その時、ドンピシャのタイミングで・・・。」
「はぁ。」
「地震が起こった・・・。
それも震度5か6クラスの強い揺れが・・・。」
「えっ、あの時に?」
さすがにそれは驚いた。
気を失っていたタケルに、そんな事は勿論知るはずもないわけで、
タケルの反応は、酒田達も当然、予想を超えるものではない。
それでも彼らは何かを確かめたいらしい。
「だがな、その後の調べで、
あの時、アヴァロン城付近で起きた地震は、
かなり浅い震源地の・・・
しかも地殻断層として起こり得ない規模のモノだそうだ。」
「へぇ!?
・・・って、え?
何がどういうことなんです?」
クリシュナと酒田のオッサンは一度顔を見合わせたが、
どうにも結論は出ないらしい。
再びタケルに口を開く。
「・・・まぁ、オレらにもわからんし、
お前もわからないんならしょうがない。
サルペドンにもマリアにも聞いたが、
ただの偶然だろうってことで片づけられた。
あの時サルペドンは、
騎士団に『神の意志』による地震だとか言ってたが、
オレらには、うまく演説に組み入れることができて助かったなんて、後でぬかしてやがったしな。
確かに、戦闘を終わらせるにはちょうどいいタイミングだったよ。」
地震か・・・
「あ。」
タケルは何か思い出したようだ。
「どうした、タケル?」
「い、いえ、何でもないです、
そう言えば、最近地震が多いなぁとは思ってたんですけど、
良く考えたら、日本の東京での事だし・・・イギリスは・・・。」
それを聞いて酒田のオッサンは意外そうな表情をした。
「東京?
そんなに地震多かったっけか?」
「ええ、ニュースで一々、確かめてないっすけどね、
美香姉ぇが亡くなる前後、結構、頻発してたような・・・。」
逆に酒田は何でそんな事にこだわるのだろうか?
この時、タケルは酒田とクリシュナのヒソヒソ話を聞いてしまう。
(なぁ、クリシュナ、
当時、サルペドンってしばらく信州のスサ基地から離れてねーよな?)
(やはり考えすぎですよ、酒田殿。)
何の話をしているのか、最後までタケルにはチンプンカンプンだ。
「あ、あの、酒田さん、何か?」
慌てて両手を振ってごまかす酒田。
「いいやあああ、なんでもない、
なんでもないぞお、タケル、
悪かった、邪魔したな、すぐに帰るぜぇっ!」
そのまま、作り笑いを消さないうちに酒田とクリシュナは病室を離れて行った。
まだ、何か懸念でもあるのだろうか?
まぁ、いいや、
今はどうでもいいだろう、
そんな暇があったら、
もう少し、なまった体を鍛え直したいし、
ベッドの上でも腹筋とか腕立て伏せとk・・・
あ、
まだアベ先生がこっち睨んでたぁっ!!
何回ぐらい地震、起きてましたかね?
さあ、次回から中央アジア奥深く、ウィグルに向かいます!!
斐山優一君やエリナちゃんの故郷ですよ!!