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緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 魔女の祝福

アーサー登場シーンで言及しましたが、

彼の額には目立つ刀傷が刻まれています。


物語には直接関係ないので、

後書きにその詳細を。


アーサーは握っている剣を下し、視線をタケルから外した・・・。

これは独り言だろうか・・・。

 「ハァ、ハァ・・・痛ぇ・・・っ、

 血が出ていない・・・、

 マーゴ姉さんの言ってた通りか・・・、

 だが・・・痛みはハンパねぇ・・・!

 ちくしょう・・・!

 だからって痛すぎるぞ・・・!!」

この言葉は、アーサーによって吐かれたものだ・・・。

一方、タケルは必死に痛みと戦いながら、

アーサーの言葉を解釈しようと試みる。

 何の話だ?

 姉さん?

 血が出ていない・・・?

 そういえばあれだけ斬り合って、

 アーサーの野郎、これまでどこからも出血が・・・ない?


天叢雲剣を握ったまま、

必死に自らの傷を抑えようとする不格好の姿のタケルを見下し、

アーサーはようやく、タケルの信じられないという表情に反応しようとした。

 


 「い、イテテテテ!

 な、何が起こったか分からないってツラだなっ、緒沢タケル・・・!

 いや、オレ自身半信半疑だったんだ・・・。

 ふ、実は・・・っていうか、オレの体はな、

 剣による怪我じゃ血が出ないようになってんだと・・・。

 カラクリはオレにも分からん、

 ただオレは、この戦いに参加する前、

 姉に・・・今やたった一人の肉親となった姉に、このカラダをいじくられた・・・。

 『神の加護』とか『妖精の祝福』とか訳のわからない事をほざいていたが、

 『ウェールズの魔女』という名が相応しい胡散臭い姉だよ。

 痛みは・・・ご覧のとおり、通常となんら変わらないから、

 今もオレの痛覚神経をビンビン刺激しやがるが、

 出血による体力消耗はあり得ない・・・!

 ・・・全く、オレの姉はとんでもない女だ・・・、

 弟ながら恐ろしい・・・。

 そういや、緒沢タケル、

 お前にも姉さんいたんだよな・・・、

 怒ると怖かったんだってな、

 お前も大変な少年時代を送ってたのか?」

 

勝負が決したと思い込んだのか、アーサーはいきなり多弁になった。

いや、誰が見ても明らかだろう、

左腕を落とされて戦いを続行などできるわけもない。

勿論、タケル自身も戦意を喪失してしまっている。

かといって、アーサーの問いかけに返す余裕すらなく、

虚ろな目を開いたままアーサーをぽかんと見送るだけだ。

アーサーは構わず話を続ける。

 「・・・まぁ互いの身の上話は今度にした方がいいな。

 だが、これだけは聞いてくれ、

 オレも無駄に命は奪いたくない。

 わざわざ互いの家族の事を話したのは、

 タケル、オレはお前を尊敬しているからだ。

 シンパシーを感じていると言ってもいい、

 似たような家族構成で、

 違うのは与えられた役割が、姉と弟で異なっていたというわけだが、

 オレも、お前の姉のように、物心ついた時から騎士団の精神やら家柄やら、

 余計な物を背負わされ続けてきた。

 ・・・お前の姉の苦しみは大体、想像もつく。」

 

アーサーは歯を食いしばりながら言葉を続ける。

 「そしてお前はその姉の意志を継ぐと決めて、戦いの世界に飛び込んだんだよな?

 オレは父・ウーサーの意志を・・・、

 だがな!

 オレも新たに騎士団のトップになる以上、

 今までの騎士団とは異なる道を選んでみせる!

 ・・・正直、この先は荊の道だ、

 考えるだけで気が重い・・・。

 だがこれだけは約束する。

 無駄に命は奪わない・・・!

 タケル、お前もだ・・・

 お前は良く戦った!

 今なら、その腕もくっつくはずだ・・・。

 ここでお前が負けても誰も責めやしないだろう。

 それどころか、お前たちスサが我らに協力してくれるなら、

 お前他スサ全員、できうる限りの待遇を保証する・・・

 答えてくれ・・・!」

 

まだ若き青年の言葉と言えど、

アーサーの主張は、騎士団・スサ、ともに戦いに疲れた兵士たちの心を打った・・・。

騎士団に屈してはならないと考えるサルペドンすら、

その問いにタケルが降伏したとしても無理はない、とまで覚悟させるに至った。


そしてタケル自身も・・・。


 オ、オレの腕がない!?

 血が止まらねぇ・・・!

 早く止めなきゃ死んじまうんじゃないのか!?

 負けを認める?

 そうすればオレは助かる!?


 戦いが  終わる  ?


これ以上、人が死なない・・・。

ならば、自分がそれこそ死ぬ思いで戦い続けることに何の意味がある?

 

 

その沸き起こった考えを非難できるものは誰もいない・・・。

一度、自分の傷口・・・失った左腕・・・

それらを確かめるために、視線を落としたタケル・・・。

その時彼は、

図らずも、自分の胸元から垂れる首飾り・・・『紋章』を視界に入れていた・・・。


 美香姉ぇ・・・。


すでに意識が朦朧としかけてきたのか、

タケルの脳裏には、なじみ深い一人の女性の声が響いていた・・・。

幻聴なのか・・・、

それとも


 タケル・・・あなたが決めなさい・・・



タケルの目に光が戻る・・・。

 まだだ!

ルドラの鎧に覆われた巨体が動き始めた!

ガクガクと膝を揺らしながら、

タケルは歯を食いしばって立ち上がる!

驚いたのはアーサー・・・

いや、その場にいる全員!

 「タケル・・・!

 これ以上はお前の命にかかわるぞ!?」

 「ああ、け、けどな!

 アーサー、お前が教えてくれた・・・、

 まだオレは戦える・・・!

 あともう一度・・・勝負だ!!」




マーゴ

「きゃああああっ!

どうしたのアーサー!? 顔が血だらけじゃないっ!?」

アーサー

「ああ、剣の修行でやっちまった・・・。

派手に流血してるけど、骨にまでは達してないから安心してよ。」

マーゴ

「安心って何馬鹿なこと言ってるのよ!?

はっ、早く治療! とにかく止血よね!!」


アーサー

「心配性だなぁ・・・まぁ父さんのこともあるから無理もないけど・・・。

・・・て、あれ? 姉さん? なんでオレ縛られてるの?」


マーゴ

「フ、フフフフフ! あなたにはこの妖精術のじっけ・・・いえ、

そんな危なっかし貴方に『妖精の祝福』を授けるわ!

うまくいけば、刀剣による負傷では一切血が出ないようにできるらしいのよ!?」

アーサー

「ちょ! え!? なに!?

今、実験って言いかけた!?

らしいって何!? 待って!! それ安全なのっ!?」

マーゴ

「さぁ、行くわよぉ~? ハイ、体の力抜いて~!」

アーサー

「いや! ちょっと! 普通の治療にして!! あああああっ!!」


ピカッ!!



天使シリス編では本物の魔女として彼女は登場します。

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