緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 聖剣
アーサーはそう言って、
どういうわけか「鞘をはめたまま」その剣の柄を両手で握り締めた。
両手剣か!?
確かにそれなら防御性能及びパワーは増加する。
だがスピードと攻撃範囲に限りができる。
いや、ルドラの鎧に覆われたタケルを攻撃するにはこの方法こそが望ましいのかもしれない。
それにしたって鞘つきって・・・。
「おい! 緊張してるのか!?
そんなもん、はめたままオレを笑い殺す気かよ!?」
だが、アーサーの構えに迷いはない・・・。
ゆっくり、ゆっくりと間合いを詰めてくる・・・。
この野郎、本気なのかよ!?
タケルも歴戦の経験を積み上げてきた今、
敵の攻撃のタイミング・本気度はある程度読める。
コイツ、何の迷いもねぇ・・・!
そしてもったいつけるわけでもなく、その男アーサーは、まるイノシシが突進でもするかのようにタケルに襲いかかった!
強大な突破力!
生半可な技術では流すこともできそうにない!
だがタケルのパワーなら受け止められるはず・・・。
ガシィッ!!
事実、タケルの天叢雲剣は、
その鞘に包まれた剣を防ぎとめた!!
恐ろしいパワーだが、ガワンを越えるものではない!
すぐにアーサーは剣を戻し激しく打ちかかるが、そのスピードはランスロットの神速には敵わないっ!
剣の技術だってライラックには及ばないだろう、確かにバランスはいいが、それだけだ。
タケルは自らの勝利を確信する。
味方のはずのガラハッドも同様の観測だ。
どう見たってアーサーより、タケルの方が上である。
我らの新しい指導者は、自分と敵の技量の差もわからないのか!?
「不安か、ガラハッド・・・。」
ガラハッドに胸の傷を応急処置されるも、
ランスロットの視界には周り全ての状況が映っていた。
勿論、実弟の不安げな表情も。
「兄さん、しかしこのままじゃ・・・!」
「待て、ガラハッド、アーサー様の顔つきを見ろ・・・。」
「・・・えっ!?」
「いいか、あの剣は・・・
誰にも引き抜けなかった剣を、今あの方が手にしているということは・・・。」
「ランスロット兄さん、いったい何の話を!?」
「いいから、見ていろガラハッド・・・。
お前にも信じられないモノが見れるはずだ!」
数合、打ちあった後、アーサーがたまらず後ろに距離を取った。
タケルは追い詰めても良かったのだが、
鎧を着込んでいる自分の方が体力の消耗が激しい。
イノシシのように突っ込んで来るのなら、
祓いの剣でケリをつけられる・・・!
そうタケルが作戦を練っていると、
その、少し離れた場所でアーサーが大きな声で笑い始めた。
「ハハハハハ!
さすがだな、多くの騎士たちが倒されるわけだ、
まだオレには勝ち目がなさそうだ。」
タケルは呆れるばかりだ。
「・・・お前、頭、大丈夫なのか?
次でケリつけるぞ?
覚悟はいいか!?」
それでもアーサーの自信は揺らぐ気配がない、
むしろさらに・・・。
「安心しろ、緒沢タケル・・・、
なぜ、オレがこんなにも強気でいられるか、
その理由を教えてやる・・・。」
場の雰囲気が変わった・・・、
いや、これは辺りの空気そのものが変わったと言うべきだろうか?
タケルは敏感に感じ取る・・・。
何かがおかしい・・・!
一方アーサーは、
その右手の剣を自らの正面にかざすや否や、そのまま横に傾け、
度々の剣の激突により、ボロボロになった麻布の鞘に左手をかけた。
「緒沢タケル・・・行くぞ・・・!」
「!?」
ゆっくり・・・
ゆっくりとその鞘から抜き身の白い剣本体が・・・
白い!?
・・・いや、これは光!?
アーサーは大気を震わす大声を放つ!
「聖剣エクスカリバー・・・!
穿てっ 光よッ!!」
辺りがまばゆいばかりの光に覆われたっ!!
何も見えないっ!?
何が起きたか分からぬうちにタケルのみぞおちに激痛が・・・!
「ぐぉっ!?」
そして態勢を整えるヒマさえなく、
続いて左の顔面に拳で殴られたかのような一撃!!
さすがのタケルもすっ転んで尻もちをついた。
目が見えないながらも、とっさに跳び起きて次の攻撃を警戒するが、アーサーの追撃はない・・・。
その内にようやく視界が開けてきたが、いまだその視力は完全には回復できない。
おぼろげなその景色の中に、一人の男が立っている・・・。
アーサーか!?
「な、何だ今のはぁ・・・!?」
アーサーは追撃をしかける事もなく、
タケルに向かって堂々と剣を振りかざしている。
「今のは予告だ・・・、
さっきの攻撃でお前の命を奪うことは容易かった・・・。
わかるな、緒沢タケル・・・!
だが、こちらはすでにお前の天叢雲剣の能力を知っている。
なのに、お前がオレのエクスカリバーの能力を知らないまま命を奪うのは騎士道に反する・・・。
そう考えて、最初の攻撃は打撃だけにしてやった。
お前の天叢雲剣の属性は雷・・・、
だがこの聖剣エクスカリバーの属性は光・・・!
これが神に祝福された者だけが使える能力、
このオレがエクスカリバーを引き抜いた以上、
お前に勝ち目などない!!」
次回、タケル反撃なるか?
なお、この世界には、
出所不明、製造過程不明のアイテムがいくつかあります。
現在、
天叢雲剣、雷
エクスカリバー、光
オロチノアラマサ、火
が明らかになっています、
メリーさんの死神の鎌は闇属性ですね。
他に
闇属性の霊剣、
大地属性の長柄武具が物語ラスト付近で登場する予定です。