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緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 アーサー

 

 「・・・まだ喋れるか、ランスロット・・!」


 これで終わる・・・。

 やっと殺し合いから抜け出せる!

 美香姉ぇ・・・、

 オレ・・・美香姉ぇの望みを果たしたぞ!!


タケルの表情は、

長い緊張の戦いで固いままだが、その心は歓喜に満ち溢れていた・・・。

自分自身の手で戦いを終わらせられたこと・・・。

これまで子供扱いされてきた自分の力をみんなに証明できたこと・・・。

これで、

自分が一人の男と成長したことに対する自信と自覚が、初めてタケルに身についたのだ。


城壁から、ガラハッドが駆け足でランスロットの元に駆け寄る。

よもやタケルにリベンジを?

とも警戒されたが、

ガラハッドは兄のカラダを抱き起しに行ったのだ。


 ・・・大丈夫、まだ助かる・・・!

 

 

ランスロットも、一度ガラハッドに視線を送るが、

すぐにタケルを見つめ直した。

何度か口を開けようと試みて・・・

どうやら声はなんとか出るようだ・・・。

 「ふ・・・ふ、私の負けだ・・・。

 完全に・・・私の上をいかれたな・・・。」

 「オレとお前の勝負は二の次だ・・・。

 騎士団の敗北を認めるんだな・・・!?」


ガラハッドが憎しみの炎をタケルに向けるが、

ランスロットは弟の感情など手に取るように分かるのか、

ガラハッドを一瞥もせずに、腕をあげて彼を制する・・・。

 「ああ、・・・そうだな、騎士団の・・・」



 「これが最後の戦いだ!!」


    !?


 今の声はっ!?

その声の方角はアヴァロン城の中から・・・。

その場にいる全員・・・、

スサも、騎士団の部隊も・・・、

タケルも、ランスロットやガラハッドでさえも、

騎士団本部長ランスロットの声を遮った、その全く心当たりのない声の方角に目を向けた・・・。

 


堅い石畳の上を、

一人の男がタケル達の元に歩み寄ってくる・・・。

亜麻色の髪、シルクのゆったりとしたシャツ、革のベスト・・・、

服装はランスロットのそれと近いが、

ベストは胸元の狭いダブルのタイプだ。

スカーフもランスロットのようにシャツの前に垂らすのではなく、

無造作に首に巻いて横に流している・・・。

どこで負傷を負ったのか、その額には結構目立つ刃物傷がある。

恐らくまだ二十歳前後ではないだろうか、

タケルと比べても年の差は感じられない・・・。

だが、その自信に満ちた足取りには威厳がある。

そして彼の左手には、

麻布あさぬので編まれた鞘に納められた幅広の剣が・・・!


ガラハッドは事態が飲み込めず、口を閉じることもできない。

 「あ、あなたは!?」

どうやらガラハッドは初対面のようだ。

その人物の顔も初めて見たかのような反応である。


さすがに騎士団本部長のランスロットは、この新たな人物が誰かは理解していた。

だが、そのランスロットが驚愕したのは、

この場に現れた青年が、その左腕に持っている剣に気付いたからだ。

ランスロットは、一時その剣を凝視した後、震える声で視線を上げた。

 「そ、その手にあるのは、ま、まさか・・・

 引き抜かれたのですね!?

 伝説の聖剣を!!

 ウーサー様の正統なる後継者・・・アーサー様っ!」

 

 

アーサーと呼ばれた男は、

ランスロットの顔を見下ろし、ゆっくりと言葉をかける・・・。

 「今の勝負、お前が緒沢タケルに劣っていたわけではない・・・。

 純粋に剣の強度の差だ・・・。

 条件が一緒なら、ランスロット、お前の勝利だ。」


ランスロットは答え返すことができなかった。

実際、剣の強度の差は確かにあった。

だが、そんな事は百も承知・・・、

その上でタケルに敗れたのである。

だからこそ、正々堂々敗北宣言を行うつもりだったのだ。

だが、騎士団全体での話となるとこれはまた別になる・・・。

何故なら、

今、眼前のアーサーが持つ一振りの剣、


・・・その名を聖剣エクスカリバー!


これこそ騎士団正統なる王が持つべきものとされていたからだ。

長年、アヴァロン城玉座の間に、

巨大な金床に突き立てられていたその剣を、

誰ひとりとして抜くことができなかった。

ウーサーも、ケイもガワンもランスロットでさえも。


その剣を、ウーサーの息子であるこのアーサーが引き抜いたというのなら、

厳正なる騎士団入団審査などする必要もない。

間違いなく、次世代の新しい騎士団を束ねる資格を示すものだ。

 

 

そして、場面の展開を理解するので精一杯なタケルだが、

要はこのアーサーという男に、負けを認めさせなければ戦闘は終結しない、

ということだけは理解できた。

この男がどんな腕を持っているのかわからないが、

今まで戦ってきた男たちより強いとも思えなかった。


 「おい! アーサーっつったか?

 お前がオレと戦うってのか?」

アーサーは静かにタケルに振り向いた。

 「そういうことになる。

 ・・・アーサー・ジャック・ペンドラゴン!

 騎士団の総責任者として、お前に決闘を申し込む!

 オレが負ければ、騎士団の敗北と認めよう。

 ・・・ランスロットもそれでいいな!?」


ガラハッドに抱えられながら、ランスロットが必死に体を起こす。

 「しかし、アーサー様!

 た、タケルの強さは本物です!

 いくらエクスカリバーを引き抜いたあなたと言えど・・・?

 ハッ? アーサー様、ま、まさかその聖剣の能力をも・・・!?」

途切れたランスロットの問いかけに、アーサーは答えなかった。

自信たっぷりな笑みを浮かべた後、タケルと対峙する。

 

 

互いの距離は5メートルほど・・・。

剣で戦うには距離があるのだが・・・。

 「・・・ではいいか、緒沢タケル?

 お前にとっては連戦だが仕方あるまい。

 こちらも後がないんでな・・・!」


どっちにしろ、ここまで来て引ける訳もない。

疲労は極限に近いが、油断さえしなければ今さら負ける気はしなかった。

曰くありげな聖剣とやらは、天叢雲剣より長いし肉厚も太そうだが、

腕力ではタケルの方がどう見ても上だ。

武器強度も天叢雲剣が負けるはずもない。

とっとと勝負をつけるとしよう・・・。


 「話しぶりからすると、アーサー、

 お前は実戦経験なさそうだな、

 いいのか?

 手加減できる保証はねーぞ?」


 「フ、そんな余裕がお前にあるのか? 

 いや、確かに、オレもいきなり現れて、疲れ切ったお前に勝っても嬉しくない。

 緒沢タケル・・・、お前の情報は全て握ってるしな。

 まずは、せめてもの挨拶代りにオレの力を見せてやろう・・・!」

 




次回、「聖剣」


なお、

覚えてらっしゃいますでしょうか、

「南の島のメリーさん達」編でネタバレしてます。

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