緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 語られない物語~剛勇の騎士ガワンその1
前回までの裏方
マーゴ
「うわぁぁん、パパに続いてケイ叔父様やライラックもぉぉ~っ
ううう・・・」 パタン
騎士団の皆さん
「おい! マーゴお嬢様が倒れられたぞ! 早く医務室に運べ!!」」
シェリー
「いやああああっ!! ライラック様ぁぁぁっ!?
嘘っ! ・・・こ、こんな事、ありえない・・・っ!
そうよ、うふふふふ、こんな現実デタラメだわ!!
うふふ、そうよ夢よ、これは夢! だからなんだってできるっ!
何でも私の自由っ!!あはははははっ!!」
騎士団の皆さん
「おい・・・こっちはもっとヤバいぞ・・・。」
アキレウス部隊急襲!
これまでなんとか善戦と言えるレベルで耐えてきたスサにも被害が続出!
あまりの騎士団の猛攻になす術もない。
何の手も打てないタケルに、
反撃の契機を与えたのは白鳥亮!
元々スサの人間でない彼は、高速飛行バイク・マルトを乗りこなす機会すら与えられていなかったが、
市街戦に突入したことにより戦闘に参加することが可能となった。
彼の手には、異様に長い柄を特徴とする魔剣・蛇之麁正がある。
この剣にも何か曰くがありそうだが、
今、タケルがそれに構っている暇はない。
そしてタケルはその眼を守りから攻撃へと転ずる。
ガルーダ内部からの無線報告で、
特定の方向に相手の本陣があることは認識できた!
場所は、あの高いビルの屋上・・・!
そこにアキレウス部隊の司令官、
剛勇の騎士ガワンが存在する・・・。
吹き飛ばされそうな向かい風や、敵部隊の猛攻をくぐり抜け、
タケルがその、
眩し過ぎるビルのヘリポートに到達したとき、
長いマントに覆われた巨漢・・・
南洋支部支部長ガワンの姿を目撃する・・・!
強すぎる日差しを背にし、
ガワンは後ろに控えさせていた二人の部下から、
余りにも巨大な・・・
その凶悪な両刃斧を手にした・・・!
なんだ、あの馬鹿でけぇ斧は!?
そしてガワンは嬉しそうにタケルを迎える・・。
「よくここまで辿り着いたな、緒沢タケル!
今、このビルの屋上へ、
という意味ではない。
他の騎士団幹部を撃破して私の下へ・・・という意味だ。
嬉しいぞ・・・
この私自ら、戦いの幕を引けることがな・・・!」
一目で分かる・・・。
この男は今までタケルが戦った騎士たちとは全く異質・・・!
日浦にしてもライラックにしても、
・・・ランスロットですら、
どこか線の細い・・・その信念にも迷いが感じられた。
だが、この重量級の男からは、
その精神的脆弱性など微塵も受け取ることはできない・・・!
身長はタケルが完全に上回るが、
その横と縦の体格・・・、恐らく体重はガワンの方が上だろう。
スピードに優れていない事は容易に判断できるが、そのパワーは果たして・・・。
そしてその経験値も覚悟も・・・!!
ガワンはその巨大な斧を構えつつ、
ゆっくり・・・ゆっくりと間合いを詰める・・・。
タケルの戦術としては、
目にも留らぬ突進で、ガワンの反応が間に合わないうちに勝敗を決するか、
或いは敵の一撃を誘い、その攻撃の隙を狙うかどちらかかというところか。
いずれにしても、
あの凶悪な重量の斧と打ちあったら、確実にこっちの腕が持っていかれる。
それだけは避けなければならない。
未だ互いに間合いの外のせいか、ガワンは戦闘前だというのに口を開いた。
「・・・禍々しい姿だな・・・。」
「あ?」
「その鎧だよ、
黒光りするその異様な材質に加え、
兜から伸びる獣の角・・・全身に彫り込まれた気味の悪い蛇・・・、
そして、両脇の人面・・・。
スサの本質がその鎧に現れている・・・。
邪神の末裔・・・。
それがお前に、こんなにもよく似合っているとはな・・・。
確かに我ら騎士団は壊滅寸前だが・・・、
それでこそ我らの討ち滅ぼすべき相手だ。
何の躊躇いもなく貴様を地獄に送れる・・・!」
短慮なタケルはその挑発に簡単に乗せられた。
勿論、ガワンのセリフは本音でもあるが。
「・・・言いてぇことはそれだけかっ!?
戦争に使う鎧なんて相手をビビらせてナンボだろうがっ!
自分の行動に酔ってんじゃねーよっ!!
思い知らせてやんよっ!!」
そしてタケルは獣のように一気に飛び跳ねるっ!
・・・もはやタケルは未熟な一兵卒ではない!
相次ぐ豪傑との戦闘で、そのレベルは格段に跳ね上がっていた!!
ガワン左肩への袈裟切りと思わせるや否や、
受けに回ろうとするガワンの虚を突き、
神速の速さで切り返し左下段から脇腹を掬いあげるように・・・
ガギィッ!!
そんなバカな・・・!?
ガワンはそのタケルの奇襲にもうろたえることはなかった・・・!
これまた、信じられない程の反応の速さで、
タケルの攻撃を両手斧の柄で受け止めている!
そして・・・。
「ヌオォォオオオッ!!」
そのままタケルの剣はかちあげられた!
タケルの腕は硬化し、脇腹や脇の下が無防備となる。
ニィ・・・ッ!
ガワンの口元が歪む。
ガワンの凶悪な斧の攻撃・・・もはや受け止めることは不可能・・・!!
地面を揺するような鋭い踏み込みから、ガワンの悲劇的な一振りが・・・。
だがタケルもここでその才覚を発揮する。
既に死に体となった上半身はあきらめ、
動ける片足を即座にガワンの攻撃に合わせ、
幅広斧の刃の面の部分に、その足を添え当てる。
残った片足の踵を軸に、ひらりと回転すると、
巨体の二人のカラダが交差した。
さすがにこれだけの重量を持つ斧の攻撃だ、
勢いあまってガワンのカラダは二、三メートル先の空を泳ぐ。
・・・そしてすぐに、
ガワンは何事もなかったかのように振り返った・・・。
「さすがに李袞やイヴァンを倒しただけの事はあるな・・・!」
冗談じゃない、
なんていう踏み込みと斧の勢いだ。
無敵の硬度を誇るルドラの鎧さえ真っ二つにされそうだ・・・、
タケルは、
今まで自分を越えるパワーの持ち主になど会ったこともないが、
この男との戦いは、タケルにとって衝撃的な体験であった。
そしてその本当の恐怖を味わうのは、まさにこれからなのだ・・・。
だが、タケルに臆する余裕すらありもしない。
それに、スピードで自分が上回ることは明らかなはず、
ならばその速さで翻弄すれば、
確実にガワンはついてこれないはずなのだ!
特に両手斧なら、近距離に持ち込んでしまえば、
その怖さは半減する。
・・・そこまで考えておきながら、
何を思ったか、タケルはいきなりダッシュでガワンから離れ始めた。
「むっ!? 何のつもりだ!?」
なんとタケルは、
ビル屋上の施設の配管やら壁やら破壊し始めたのだ。
そうかと思うと、
地面に散らばったそれらの破片を集め、再びダッシュでガワンとの距離10メートル程へ・・・。
「まさか、貴様・・・!」
「へっ、卑怯とか言うな!?
オレのパワーも大したもんだぜ!!」
やっぱり飛び道具だっ!!
タケルは拾ってきたそれらを思いっきり、ガワンに向かって投げつけたのだ。
・・・考えてみてほしい、
身長2メートルの大男が、
そのパワー全開で既に凶器に等しい物体を一斉に投げつける姿を。
ましてやタケルの四肢は、同じ体格の者と比べても異様に長いのだ。
そのバネと、しなった鞭のような腕からは、
メジャーリーグクラスの脅威的なスピードが生み出される。
一発二発ならともかく、それら全てをガワンに避けることはできない、
その大斧で防ぐにしても、無傷でいられるはずもない。
・・・ならば・・・!
ガワンが纏う特注の鋼線入りマント・・・!
それでもかなりの衝撃が・・・!!
だが、もともとタケルの狙いは、
そんな事でダメージを与える事ではない。
そのガワンに生じた隙に向かって突進・・・、
その両手斧の間合いの中に入ることが真の狙い。
だからこその10メートルの距離だ。
そしてそれは成功する!!
ガギッィ!!
二人の武器が激しく打ち合う!
遠心力のないこの距離なら、斧とぶつかったって怖くもない。
二人は真正面から力比べに陥った。
タケル
「下は白鳥さんたちに任せて大丈夫かな、
しかし、なんだよ、あの炎の剣って・・・。
白鳥さん、汚物でも消毒するみたいに生き生きしてたから大丈夫だよな・・・。」
白鳥さん
「ヒャッハーッ!!」
ダイジェスト版にも関わらず、結構長くなりそうです。
なお、ガワンには「剛勇の騎士」と「太陽の騎士」と二つ称号があります。