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緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 語られない物語~豪剣の騎士ライラック

今回、ちょい長めです。

 

もはや騎士団は完全に死に体となっていた・・・。

急きょ、南洋支部の剛勇の騎士ガワンを呼び寄せるも、

途中、インド・パキスタン両国の戦闘の影響で、わずかに到着が遅れてしまう。

その間、ほぼ独断とも言える勝手な行動で、

北欧支部・豪剣の騎士ライラックが出陣。

ヨーロッパのど真ん中の森林地帯で、

スサとライラック率いるテーセウス部隊の激突。


騎士団最強の称号を与えられているランスロット・ガワン・ライラック・・・。

その三人のうちの一人、

まさしくその強さはタケルの実力を上回る。

・・・ましてや、兄弟のように長年苦楽を共にした、日浦義純を殺されたライラックの怒りは大きい・・・。


 「義純をやったお前だけは許すわけにはいかない!!」


致命傷はかろうじて避けることができてはいたが、既にタケルは満身創痍、

ランスロットを相手にした時のように、

「どうしても勝てないのか」という、弱い心がタケルに芽生え始めた時、

同じタイミングで耳にするライラックの怒りの声が、

タケルの心情に、別の・・・、

それまでになかった別の感情を湧き上がらせ始めた・・・。

 

 友人を殺されて・・・許せない・・・だと・・・!?


態勢を崩したタケルに、

ライラックが追撃の一打を加えようとしたまさにその時、

渾身の力を振ってタケルはその攻撃を弾き飛ばす!

 「・・・もういっぺん言ってみろっ! ライラック!!」

 「なんだとぉっ!?」


天叢雲剣を握るタケルの怒りが増幅していく・・・。

 「ライラック・・・騎士団・・・、

 てめぇら、今まで何してきた!?

 友人を殺されて許せないっ・・・?

 今まで、てめぇら世界中の人間に何してきたか忘れたとでも言うのかっ!!

 お前らが殺してきたのは軍人や政治家だけじゃないだろう!!

 何の罪もない・・・普通の民間人、

 直接標的にしてはいないとは言え、その被害は女子供にも及んでいたはずだ!!

 友人を・・・恋人を・・・家族を・・・

 大事な人間を殺されて・・・

 その加害者を許せる人間などいると思うかっ!!

 思いあがるんじゃねぇっ、ライラック!!

 許されないのはお前らの方だッ!!」

 


その言葉と同時に、

信じられないほどの威力の剣撃がライラックを襲う!

敵の剣筋を受け流すテクニックを有するライラックでなければ、その剣ごと命を絶たれていただろう、

それほどの強烈なタケルの一撃・・・!


冷静に考えれば・・・タケルのほうこそ正論を言っている。

ライラックですらそんな事はわかりきっている。

だが、もはや彼らは止まることができなかった・・・。

自分たちの暴走した思想を正当化させるためには、

どんな正論にも耳を貸すことなどできなかったのである・・・。


 「フン、・・・ならどうする?

 お互い相手が許せないんだろう・・・。

 なら結局は強い方が勝つのだ、

 お前がまだこれほどのパワーを持っていることに少しは驚いたが・・・、

 ランスロットやオレに敵わないお前が何を言っても、現状は変えられない!!」


タケルは自分でも十分自覚しているとおり、

頭のめぐりが良くない・・・。

ライラックのこの一言を聞いて、

何がその怒りをさらに沸騰させたのか・・・、

自分でもよく分からないまま、

むかっ腹が立ってライラックに突進する。

 


二人の剣が交錯するも、

タケルはハナからライラックを斬ろうとしたわけではなかった。

剣を受け流すライラックの動きなど無視して、

片手を放し、その激重の拳を遠慮なくライラックの顔面に叩きこんでやったのだ!

 「グフッ! ・・・なっ!?」


辛うじてダウンすることを免れたライラック、

しかし一体、タケルは何の意図があってわざわざこんな・・・!?

ライラックの息の根を止めるなら、

態勢を崩した今がチャンスのはず・・・、

だがタケルは殴り終わった後、長身のライラックを睨みつけるだけ。

 「な・・・何のつもりだっ!?」


荒い息を吐きながら、

ようやくタケルは自分の怒りの原因を特定できたようだ・・・。

 「ライラック・・・てめぇ・・・

 日浦さんの親友だと言ったな・・・!」

 「? それがどうしたっ!?」

 「なら、アンタは・・・

 日浦さんの本当の気持ちを・・・どれだけ理解していたんだっ!?」 

 

 

ライラックの紅い髪が揺れる・・・。

 「義純の気持ち・・・だと?」

 「あの人がこの戦いに反対していたのはアンタが良く知ってるはずだろ!?

 姉貴・・・美香姉ぇにどんな気持ちを持っていたか、

 アンタは知らねぇっていうのかっ!?

 ・・・それじゃあ、

 あの人がどんな気持ちでオレに殺されたのか・・・、

 その気になれば、隙を見せたオレを倒すことだってあの人にはできたんだっ!!

 なのにあの人はオレにわざと斬らせたんだぞっ!?

 ・・・あの時はオレも興奮していて気のせいかと思っていた・・・。

 だが戦いが終わって、

 オレの気のせいや錯覚じゃないとわかった・・・。

 あの人は・・・オレに胸を突かれた瞬間、

 確かに笑ったんだ・・・!!

 その気持ちが、自責なのか、

 満足なのか安心からなのか・・・、

 そこまでオレにはわからねーけども・・・、

 あの人が最後まで苦しんでいたのは間違いない!!

 そんな・・・日浦さんの心を・・・

 お前がどれだけ知ってるっつううんだよぉっ!!」

 


動けなかった・・・。

ライラックは、

そのタケルの泣き叫ぶような問いに、答え返すことができなかったのだ・・・。

確かに日浦義純ならそう考えるだろう・・・。

義純が、緒沢美香に惹かれていたことはライラックも薄々感づいていた・・・。

だがここ数年、任務のために、頻繁に連絡しあっていたわけでもなく、

義純がどこまで思いを膨らませていたか・・・、

いや、それはお互いそうなのである・・・。

日浦義純にしたところで、

騎士団本部の暴走を、早い段階で気づくこともできなかったのだから・・・。

そして・・・。


 「緒沢タケル・・・、

 義純がお前に殺される瞬間、笑っていただと・・・?」


タケルはこれ以上、言葉はいらないと判断した。

黙ってライラックを睨みつけることがその答えだ。

・・・ライラックは、ようやく冷静に思考を始めることができた・・・。

我に返ったのだ・・・、

長い夢から覚めるかのように・・・。

 


そしてライラックは、

微動だにせずにタケルに語りかける・・・。

 「緒沢タケル・・・。」

 「あ!?」

 「あいつな・・・、

 最後の騎士団の集まりで・・・、

 お前を・・・騎士団の仲間に迎えたいって言ってたんだ・・・。

 みんな、オレを含めて義純の言うことをバカにしてしまったんだが・・・、

 あいつの見る目は正しかったよ・・・。

 お前は騎士団に入る資格を十分に持っている・・・。」


以前、ランスロットに似たような話は聞いていたが、

騎士団の仲間に推薦していただって!?

いや、今は・・・

今さらそんな話はどうでも・・・。


 「・・・オレのことはどうでもいい、

 ライラック、剣を収めることができるのか・・・!?」


ライラックは静かに首を振る・・・。

 

 「緒沢タケル・・・

 お前の言いたいことはわかった・・・。

 だが、もうオレ達は止まることはできない・・・。

 ここで止まれば、今まで死んでいった者たちの思いや命がさらに無駄になる。

 止めたければ全力で抵抗することだ・・・。

 言っておくがオレは義純ほど甘くない。

 騎士団の意志を貫徹するためお前を倒す。

 覚悟はいいか!?

 ・・・向こうへ行ったら義純によろしく伝えてくれ・・・。」


 「馬鹿野郎っ!!」

やはり自分には・・・

他人の心を変えることはできないのかっ・・・、

戦うことしかできないのか・・・!?

タケルの心に無力感・・・喪失感が広がる・・・。

だが、そんな状態でライラックと戦えるはずもない・・・。

この虚しさ・・・悲しみを怒りに変えるしか、タケルに選択肢はなかった・・・。


 「うぉぉおおおおおおっ!!」


そして・・・最後の激突がっ!!

 


 

その言葉通り、

ライラックには遠慮もためらいもない!

全力でタケルを斬りにかかる!!

まさしく豪剣の騎士の名に恥じぬ最高の一撃が!!

・・・だがタケルは最早、

その精神の境地を、先程とは較べる事すらできぬ高みにまで昇華させていた・・・。

考え抜いてそうしたわけではない。

カラダが自然に動いたのだ、

今まで力任せにしていたタケルの剣が変化を・・・。


 緒沢家秘伝・・・祓い・・・!!


ライラックの鋭い剣先を、

弧を描く神秘的な軌道で払いのけ、

相手が自覚する隙をも与えない刹那の瞬間、自らの剣先を切り返す・・・。


緒沢美香の得意技・・・。

ライラックが気づいた時には、

その胸から大量の血しぶきが噴きあげていた・・・。


そして死をも直感させる熱い感覚・・・。

 

 

彼の長身の隅々から力が失われていく・・・。

 「ふ・・・フフ・・・義純・・・、

 謝るのはオレの方だな・・・、

 お前の気持ち・・・少しはオレにも・・・」


 「・・・ふざけんな、バカ野郎っ!!

 てめぇら・・・人の命を・・・

 自分の命を軽く見すぎなんだよぉっ!!

 ちくしょうっ・・・、ちきしょうっ!!

 いつまで・・・

 いつまでこんなくだらねぇ戦いをしなきゃなんねぇんだっ!!

 美香姉ぇ・・・っ、

 オレ・・・

 オレは美香姉ぇの願いも叶えることなんかできねぇじゃねぇかぁ・・・!」





ついに騎士団・・・

その中核の最高戦力の一つが落ちた・・・。

もう、騎士団も後がない・・・。

その最強にして最後の戦力・・・ヘラクレス部隊がスサを待ち受ける寸出・・・、


かつて「ノーフェイス」をも陥落させたもう一つの最強戦力・・・、

ガワン率いるアキレウス部隊が、スサの背後に追いついていた・・・。

 


次回はガワン戦です。

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