表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
431/676

緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 語られない物語~勇敢なる騎士ケイ

今回、分量が少ないので、

前書き部分におまけ部分を挿入します。



「異教の騎士ハロルド・スミス・ピーターガン」


・・・ジリリリリリリン、ジリリリリリリリン


 グス・・・ズビッ

鼻を鳴らした若い男が机に向かう・・・。

すぐに電話を取らずに、まず椅子に座る・・・。

第三者がここにいれば、早く電話を取れと突っ込むところだろう。

机の上は大量の書類やタバコの灰皿などでいっぱいだ、

だが、男は書類など気にも留めずに両足を机の上に投げ出す。

頭は短く刈り揃えられ、限りなく坊主頭に近い。

身長165センチの小柄な男・・・。


いきなり男は片足で電話機の端を蹴り下ろす。

その反動で、受話器が空に舞う。

男はそんな受話器を見もしない、

ただ一瞬の間を置いてから、右手をその受話器の落下する軌道にめがけて繰り出した・・・!

まるで吸い込まれるように、受話器は右手の中に・・・、

そしてこれまた流れるような動きで、男の耳元に受話器があてられる・・・!

天性の勘か修練の賜物か・・・?


 「・・・ハロー? こちらはHSPディテクティブオフィス・・・。」

男はその外見のイメージを裏切らない、乾いた声を受話器に語りかける・・・。

だが電話の向こうの声は聞こえてこない・・・。

 「?」


男はようやく気づいた・・・。

受話器が逆さまになっていることに。

男は眉をしかめながら、受話器を持ち替えた。

 「あー、ハロウ?」

電話を掛けた主は、やや長い時間待たされたことで、相手が不在だと思いかけていたようだ。

もう電話を切ろうかと考えた瞬間、相手の声が聞こえてきたようなので戸惑い気味だ。

 「あ、あの? ミスター? HSPディテクティブオフィスでよろしいのですよね?

 依頼をお願いしたいのですが・・・。」

 「ああ・・・! 依頼ね、人探しから浮気調査まで、手広く扱ってますよ?」

 「あの、それで、非合法な事も扱ってらっしゃるとか・・・?」


電話口の声は中年女性のようだ、・・・しかし様子が穏やかではない。

どうしたものか・・・?

 「それは・・・依頼内容によります、一度事務所にお越し願いませんか・・・?」

 



 

男は電話を切った。

明日、この客が事務所を訪れるらしい・・・、ていうか久しぶりの客だ。

彼は椅子から立ち上がると、

部屋の端のジュークボックスに向かってゆっくりとスイッチを押した。

ディテクティブオフィス・・・すなわち探偵屋・・・、

なのに何故にその事務所にジュークボックスなど入れてあるのか?

まぁ個人の趣味なのだろう。

すぐにノリのいい軽快なサウンドが流れる。

男は、首とカラダを揺すりながら、目をつぶって口パクをはじめた。

目を閉じたりうつむき加減になると、長いまつ毛が目立つ。

逆に、刈り込んだ髪と同じ長さしかない薄い髭が、まつ毛とは対照的だ・・・。


男の名はハロルド・スミス・ピーターガン・・・もちろん偽名だ。

事務所の名は、事業主である彼の名前から取り「HSPディテクティブオフィス」・・・すなわち探偵屋だ。

ゴミゴミした町の一角の薄汚いビルの一室・・・。

その事務所は、ビルの外観同様、いやそれ以上に薄汚い。

ハロルドは最低限度の掃除を始めていた・・・いつから掃除してないんだ?


 今夜は、掃除を終えたらここを出よう、

 ・・・あと二時間はかかるな。


ビルの外は真っ暗闇だ・・・。

確かに道路脇の街灯やビルの看板などはあるが・・・、ほとんどぶっ壊れている。

時々通りかかる車やバイクの明かりの方が確かなものだ。

ハロルドが愛車に乗ろうと、ドアに手をかけたとき、

何か気付いたのか、彼はため息をついて車から離れた。


 「おーい、車には傷つけねーでくれよぉ?」


わらわら・・・

ビルの暗がりから何人もの人相の悪い男たちが・・・。

手にはナイフや拳銃を握り締めて・・・。

その内の一人が、首を曲げたままハロルドに向かって話しかける。

 「身に覚えはあんだろう?

 おめーはやりすぎた・・・、あの世へ旅立たせてやんぜ!」

どうやらこの町のギャングのようだ。

全部で5~6人はいるだろうか?

だが、ハロルドは一向に怯まない・・・彼の体格で?

それどころか、彼は唇の端を吊り上げて歯も見せずにニィっと笑う。

 「おいおい、悪く思うなぁ? 仕事なんだよ、ボスにもそう言っといてくれよ?」

 「それで・・・済む話じゃねぇーんだよぉ!!」

 


一人がハロルドに向かって突っ込んだ!

その手にはナイフが握られている!!

だが、ハロルドは薄い笑みを浮かべたままだ・・・!

  ブァサッ!!

ハロルドのトレンチコートが一瞬、舞い上がる。

ほとんど同時にハロルドの鋭いケリが、ギャングのナイフを弾き飛ばしていた・・・!

 「うおおおおっ!!」

残りのギャングどもが一斉に襲い掛かる。

ナイフや鉄パイプが、容赦なくハロルドのカラダを破壊しようとする・・・のだが、

まるで踊りでも舞うかのように、ハロルドのステップはギャングの攻撃をかわしていく・・・!


 ・・・そして・・・。

 バギッ! ドガッ! ゲスッ!!

それぞれ一発だ・・・。

ハロルドの、目にも留まらぬケリがギャングのカラダの急所に叩き込まれる・・・。

 「てぇ、てめぇぇぇぇぇ!!」

最後のリーダー格の男が、持っていた拳銃をハロルドに向けた時、

獣のような反射神経で、ハロルドは飛び上がり空中で回転!

ただ回転しただけではない、

カラダを曲げている間に懐から一丁のS&Wを・・・!!


夜の街に一発の銃声が響く・・・!

リーダー格のギャングは、いつ自分の銃を弾き飛ばされたのか・・・、

いや、いつハロルドが拳銃を取り出したのか、

全く理解も出来ずに、激痛を発する自分の右手を抑えていた。

 「なっ・・・! て、てめぇ・・・ナニモンだ・・・!?

 ググッ、ただの探偵じゃ・・・!?」

路上には、蹴り飛ばされた手下どもがのた打ち回ってる・・・。

ハロルドだけが、すでに拳銃を胸にしまい、ゆらゆら薄ら笑いを浮かべている。

そして、ハロルドは一度、グスッと、鼻を鳴らして口を開いた。

 「もう一度、言うぜ? あんたらのボスに伝えてくれよ?

 オレはプロだ・・・。

 高度の訓練を受けた『その道』のな・・・!

 オレを殺したきゃ、軍隊でもつれてくんだなあ。」

 

 「ち、ちくしょう! このままで済まさねーぞ!」

ギャングどもは仲間を抱き起こして、もたつきながらもビルの陰へと消えていく。

ハロルドはそれを確認すると、一本のタバコを取り出した。

 「ふぅー・・・。」

ゆっくりと火をつけて肺にニコチンをたっぷりと流し込む。

 「・・・たーのむーぜー?

 寝覚め悪りぃからこれっきりにしてくれよぉぉ?」


こいつを吸い終ったら、家に帰ろう、

ま、家の中もゴミだらけだがな・・・。


 「・・・お?」

その時、ハロルドは頭の後ろの方で何かが動く気配を感じた。

勿論、視界の外だ。

何故、見えないものを認知できるのか?

街灯の光を遮るものを感じたのか、それとも天性の勘なのか?

一つ言えるのは、先ほどギャングに喋ったセリフは嘘ではないと言う事・・・。

彼はこれまでに、特殊部隊並の高度なサバイバル技術と戦闘訓練を積んでいる。

だが、注意深く振り返っても何の異常も見受けられない・・・。

ただの気のせいだったのだろうか?

そしてハロルドは、結論も出さずにタバコを捨て、車に乗り込んだ。

古ぼけたコルベット・・・。

多分、最初はイカした仕様だったのだろうが、・・・今じゃ中古屋でも買い叩かれそうな・・・。

いや、彼はそこが気に入ってるのだ、まだちゃんと走るし・・・!


 グロロロロロロ・・・バスン、バスン

ホントに大丈夫か?

・・・ハロルドはいつものように、そんな細かい事は気にせずに自宅に戻った・・・。


そして、・・・近くのビルの屋上から、その光景を見下ろす一つの影がある・・・。

銀色に光り輝く高貴な髪をなびかせて・・・。

・・・レディ メリーは今、ニューヨークの夜の闇に溶け込んでいた・・・。


☆  ☆  ☆  ☆  ☆ 


その話はいつかまたどこかで・・・。


南欧支部支部長「勇敢なる騎士」ケイの元に、

その悲報が流れたのはおよそ二時間後・・・。


獅子の騎士イヴァンが緒沢タケルに倒されたという一報が・・・。

 「・・・そんな馬鹿な!!

 イヴァンは油断するような男ではない!!」


交信先のランスロットは、

沈痛な声でケイに戦いの様子を伝える・・・。

 「イヴァンに油断も軽視もありません、

 むしろ、緒沢タケルを軽視していたのは我らの方だったかも・・・。

 怪我の影響は確実にありました・・・。

 しかし、それを考慮に入れても、

 ヤツは・・・タケルは更に強くなっています・・・。

 戦えば戦うほど・・・。」

 

ケイはしばらくランスロットの言葉が理解できなかった・・・。

それほど驚愕の事実なのだ。

そして最後にケイは覚悟を決める。

既に前線で戦うには高齢の部類に入る故、ランスロットは制止にかかるが、

今度の戦いで最も重責を担うケイを止めることなどできやしない。


そこでランスロットは条件をつける。

騎士団の正規メンバーではないが、

彼らに勝るとも劣らない実力を有する一人の男・・・、

その男を戦列に加えて戦いに赴くこと。

ケイは驚くも、ランスロットのその提案を飲む ・・・。


アメリカのニューヨークで普段はふらふらしているが、

有事の際には、命をかけて騎士団に協力することを約束したその男の名は、

「異教の騎士」ハロルド・スミス・ピーターガン・・・。

高い迎撃能力を持つ高速小型戦闘機「パロミデス」に乗り込んだハロルドは、

大西洋をとび越えケイのペルセウス部隊に合流する。

 

 

そしてスサと騎士団の戦闘がアラビア湾で繰り広げられる・・・。

反撃能力に特化したペルセウス部隊に、

スサの戦闘部隊を無軌道に引っ掻き回すハロルド。

そのハロルドとケイの二面展開に翻弄されてタケル達は苦戦を強いられる。

だが、ついにペルセウス部隊の結界を破ったタケルは、

ケイの乗り込む母艦に壊滅的なダメージを与え、

彼らの機体は油田の中に落下・・・、

燃え盛る炎の中・・・、

騎士団中最も高位の発言権を有していた男、

「勇敢なる騎士」ケイはその生涯を閉じた・・・。


そして一方ハロルドも、

ガルーダの主力攻撃をたった一人で捌くことへの限界が訪れていた・・・。

機体パロミデスのコントロールは、もはや彼の言うことを効かない。

さらに、ハロルドは戦いの趨勢を理解すると、

乾いた笑い声をあげながら、鼻をすすり、

無謀にもただ一人、

最後の攻撃をかけるべくガルーダに突っ込んでいった・・・。

 




次回、ライラック戦です。


なお、ハロルドは本来、天使シリス編のキャラです。

メリーさん編ではデミゴッド(斐山優一君を狙う組織)のダブルスパイという設定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ