緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 語られない物語~獅子の騎士イヴァン
ガルーダ発進!!
スサの科学技術の粋を結集した超大型飛行要塞ガルーダが、
ついに日本の地を離れ、騎士団の本拠地イギリスへと飛び立った。
だが、露西亜支部のイヴァン率いるイアソン部隊がそれを向かい撃つ!
・・・そしてその戦況はもちろん、
騎士団の中枢、古城アヴァロンで傷を癒しているランスロットも、
目を離すことなく見つめている。
勝算はある!
あの緒沢タケルがいない今ならば・・・!
だが、ランスロットはすぐに自分の見通しの甘さを悔いることになる・・・、
いいや、誰が想像できよう、
これだけの負傷を負ったランスロットより、
さらに重傷の筈の緒沢タケルが、
何事もなかったかのように出陣しているのを!
「ば、バカな!
あのケガで戦えるというのか!?」
勿論タケルは万全ではない。
自分でもかなり無理しているのがわかる。
だが、ここでひっこんだままでいれる訳もない。
スサにしてみれば、
逆にランスロットがいない今こそ反撃のチャンスなのだ!
一方、当のイヴァンは震え立つ!
李袞や日浦義純を退けた敵、
緒沢タケルと、真正面からぶつかり合えることを彼は純粋に喜んだ!
敵が万全ではないであろうことは予想できるが、
彼の俗称「獅子の騎士」が示すがごとく、
いったん戦場に出た相手に、容赦することも油断することもあり得ない。
アヴァロンでは、慎重なるガラハッドが、
自らの兄でもあるランスロットに戦況を問う。
「まさか大怪我している緒沢タケルに、
イヴァンが遅れを取ることはありませんよね?」
「・・・普通に考えればな、
例えタケルの体調が完全だとしても、6・4でイヴァンの方が上だろう、
日浦義純のように私情に流さるならともかく、
真正面から戦って、我らが騎士団の幹部が遅れを取ることなどない!」
「ですが、それは、あの神剣を使わなければ・・・
という前提でもありますよね?」
「ああ、そうだな、あれで戦況を変えられる恐れがある。
不安要因としてはそれだけだ。
だが、天叢雲剣を使えると言っても、一度に何回も使えまい。
まだヤツは剣も使いこなしていないはずだし・・・。」
そして砂漠の荒野において、ついにイヴァンとタケルがぶつかり合う。
これまでのように地上戦となったが、
タケルが面食らったのは、
イヴァンの脇に仕える一頭のライオン!
激しい咆哮の後にとびかかってくる猛獣に、
今まで人間としか戦っていなかったタケルの勝手があわない。
ほとんど全身を覆うルドラの鎧のおかげで、爪やその牙から逃れてはいるが、
強烈な野生のパワーに押されるばかり。
・・・それにその争いを黙って見ているイヴァンでもない。
タケルが怯んだ隙に、容赦なくその剣を振り下ろすのだ、
反撃できるチャンスすら見いだせない。
そしてついにタケルはライオンに組み伏せられてしまう!
絶体絶命だ、
今にもその鋭い牙が、むき出しのタケルの顔面に向けれたとき、
大量のアドレナリンがタケルのカラダに流れ始める・・・!
こんなところでぇ・・・っ!
「う・・・っ! ウォォォオオオオオッ!!」
その時、タケルの眼の光が変わる!
タケルの雄たけび・・・いや、
彼のカラダ全身から発せられると錯覚するかのような叫び声が、
荒野の戦場に響き渡った!
追い詰めていたはずのライオンでさえも怯むほどの気迫。
その瞬間、タケルは危地を脱す。
イヴァンは休む間も与えまいと追撃を狙うが、タケルの雰囲気がおかしい・・・。
「何が」とは言い切れないのだが、
まるでこれは人間を相手にしているというよりも、
一匹の猛獣を・・・。
そしてイヴァンの印象は正しかった。
ライオンと格闘したことにより、
タケルに内在する戦闘本能の中に、まさしく獣の血が呼び起こされたのだ!
・・・2メートルもの長身のタケルが、
身をかがめ、黒く禍々しい塊となり、
まるで四足獣のように荒野の地を這う!
剣や拳に頼る攻撃ですらなく・・・、
それは獣と獣の激突だ!
そう、タケルが攻撃方法に選んだのは、身に纏うルドラの角!
まるでカモシカやガゼルが肉食獣に反撃するかのように・・・!
吹き飛んだのはライオンの方だ!
イヴァンは目を疑う!
ただでさえ、普通の人間なら、接近戦でライオンに立ち向かうことを考える者などあり得ない。
ましてや獣と同化するような戦いなど誰が選ぶというのか!?
だがタケルの戦い方には迷いすらない!
そのまま起きあがったライオンに追撃を加えるべく、
まさに獣のような形相で、
廻りこんだライオンの背後からその首を絞めにかかったのだ!
激しく抵抗するライオンの爪はタケルの鎧に全て弾かれる。
イヴァンが助けに入ろうにも、
ライオンの巨体とタケルの燃えるような激しい眼光に、付け入る隙が見出せない。
ついに、ライオンの体から力が抜けていく・・・!
だがタケルは不可解にも、最後で手を放した・・・。
彼はその殺気に漲る戦いのうちにも思い出していたのだ。
あの時、
あの、日本の製薬工場で、
自分と日浦の身代わりになるかのように死んでいった哀れなライオンを・・・。
野生の生命力か、落ちる寸前にありながらでも、
ライオンはすぐに敏捷さを取り戻していたが、
その獣は、もはやタケルの瞳の中に既に戦意がないことを感じ取っていた・・・。
いや、そのライオンが感じ取ったのは、
さらに別の・・・、
この「存在」には逆らってはならないという、何らかの「本能」だったのかもしれない。
その場にいる三者全てが、この戦いに転機が訪れた事を理解した・・・。
何故、ライオンがタケルとの戦いを放棄したのか、
それを考えることはイヴァンにとっても無意味だ。
与えられた使命はタケルを倒すのみ!
そしてタケルも理解する。
ライオンはこの勝負をもう、邪魔しない。
後はイヴァンと自分の一騎打ち・・・!
負けるわけにはいかない!!
いま、二人の獅子が激突する・・・!
次回、対戦相手は「勇敢なる騎士」ケイと・・・もう一人、初登場「異教の騎士」参戦!