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緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 ランスロットの過去

すいません、ちょっと長めです。


  

  (ランスロット 回想)


 「・・・やけに工事車両が多いな・・、

 この辺一帯を開発するとは聞いていたが・・・。」


いつものように、

私の父は、車で私と愛犬を別荘まで運んでくれた。

当然、父は工事が近くで行われていることぐらい知っているので、

私に当り前の注意をした。

 「ランス、

 お前のカラダはまだ体力がついていないし、

 ダンプやトラックも多そうだ、

 敷地から離れてはいかんぞ。」


ところが所詮、子供さ、

普段まともに外に出れない体だったからね、

親の言うことより冒険心の方が強い。

 「わかってるよ、パパ!

 毎年ここに来てるんだぜ、

 どこで遊べばいいか、わかってるさ!!」


嘘をつくことなんか、へいちゃらさ。

自宅じゃ、いつもベッドに抑えつけられた生活・・・、

窓から見えるのは色のついていない灰色の風景、

自分を解放できるのは、その別荘だけだったんだ。

敷地から離れた所に奇麗な湖があってね、

私はいつもそこにいた・・・。

 

 

愛犬と鬼ごっこをしたり、

昆虫を捕まえたり、魚を釣ったり・・・。

湖に洋服のまま入って、こっぴどく叱られたこともある。

ところがその年は違った・・・。

湖の方角から、大きな騒音が聞こえる。

いつも見慣れているはずの景色も微妙に変化している?

密集した針葉樹の林を抜けると湖が見えるはずなのに、

やけに針葉樹のエリアが少なくなっているように見える。


その林を抜けた景色を、

私は信じることができなかった・・・。

毎年見慣れていた景色が、形容しがたいほどの醜いものに変わっていたからだ。

何台ものブルドーザー、

木々は次々に切り倒され、

湖岸は醜く切り崩され、多くの汚い土砂が運ばれてゆく。

そこには動物も虫たちもいない。

剥き出しのコンクリートが、どんどん流されその湖を侵食していく・・・!

 


 

子供の私には耐えられなかった。

私の・・・僕だけの景色を・・・

僕の生きる場所を返せーってね・・・。


気がつくと愛犬と一緒に走り始めていたよ。

もう、何に向かって走っていたのかも覚えていない。

ただ、その破壊を止めたい一心だった。

最後に聞こえたのは私に向かって叫ばれた大声だった・・・。


 「お・・・おいっ! 坊主!! 危ねぇっ!!

 そっちにはダイナマイトがぁッ!!

 発破やめろーっ!!」




気がついたときは、その工事現場のプレハブの簡易ベッドにいた・・・。

奇跡的に大きな怪我はなかった・・・。

私の・・・愛犬が命を賭けて救ってくれたのかもしれない。

そこに愛犬の姿はなかった・・・。

 


後から現場監督も来たが、

最初、私の傍にいたのは、熟練ぽい黒人男性だった・・・。

 「おっ! 坊主、目が覚めたか!!

 無事で何よりだ!

 痛いところとかはないかっ!?」


愛犬がいなくなってることに気づいたのはしばらくしてからだ・・・。

その時の私は、自分に起きたことよりも、

湖のことしか考えられる状況になかったんだ・・・。


 「・・・ねぇ、 何で湖を潰すの・・・!?

 どうしてこの奇麗な場所を僕から奪うのっ!!」


勿論、その男は困った顔をして見せたよ。

しばらくどうしていいか分からない風だったが、

やがてタバコをふかしてこんな事を言った。

 

 「・・・坊主、オレらはな、

 お前の国に頼まれてここにいる。

 別にオレだって、好きでこんな仕事をしているわけじゃあない。

 この国の事はわからねーが、

 この国は必要があって、この湖を改造してるんだろう、

 それで助かる人たちだっていっぱいいるんだ・・・。」

 「どうしてっ!?

 この湖が誰に迷惑をかけてるのっ!?

 僕が誰かを困らせたことがあるのっ!?」

 「ごめんな坊主、それはオレにはわからん・・・。

 坊主が大きくなったら、お前で答えを見つけてくれよ・・・。

 ただな、これだけは覚えていてくれ・・・。

 オレがこの国で稼いでくる金を、オレの家族が腹を空かせて待っている。

 この工事があるおかげで、

 オレはオレの家族に食事をさせてやることができるんだ・・・。」

 


  

その黒人男性は、遠い目をして言葉を続けた。

 「オレの子供は5人いる。

 でもな、・・・ほんとは6人いたんだ・・・、

 去年な、

 栄養失調で一人死んじまった・・・。

 オレは満足に、子どもに飯を食わせてやることもできなかったんだよ・・・。

 坊主、お前、

 食うものがなくなって、動くこともできなくなったことはあるか?

 自分の体の周りを飛ぶハエすら食べ物に見えたことはあるか?

 いや、悪かった。

 イギリスで育った坊主には考えられねーか・・・?」


最初は言っている意味がわからなかった。

騒ぐだけ騒いで、ボロボロになった愛犬の変わり果てた姿を見て、

私は半狂乱だった。

やがて、父親に迎えに来てもらい・・・、

その後、その別荘に行く事もなくなった。

だが・・・しばらくして・・・、

私が成長するにつれ、

湖や愛犬を失ったことよりも、

その時に会った黒人男性の言葉の方が、

重く私にのしかかるようになっていった。

 

後で調べたが、

湖の改修工事は、利水や災害防止の為にそれなりの理由があった、

自然保護団体の反対の声もあったが、

地元の住民の要望に基づいたものだ。

公共事業なら地元にも大きなお金が落ちるしね。

それがなければ、あの土地に住み続ける事も出来ない人達もいると言う事も知った。

観光としても農業としても、半端な土地だったんで、国の補助金がなければ、土地や家を売るしかなく、時間の問題で住処を追われるしかなかった人達もいたと言う事だ。


しばらくは、どうすれば良かったのか、

どうすればこんな事を避ける事が出来たのか、

誰もが納得出来る手段は無かったのか、

ずっと考えていた。

だがいつまで経っても正解は浮かんで来ない。

何より、私の家自体、そういった経済活動によって支えられているのだから。

父もボランティアや慈善団体への寄付は行なっている。

だが、それが何になる?

恵まれない人達に、私達が稼いできたお金を差し出せば解決するのか?

無駄だろう。

あっという間に蓄えは食い潰され、

経済界から私の家が消える、

それだけだ。

国の仕組みは変わる訳がない。

では?

いったいどうすれば?

私は何をすべきだったのか・・・。

正しいと思える答えは今も見つからない。


 (回想 終了) 

 


 

 「・・・わかるか、タケル・・・。

 誰も・・・人間は、

 誰も責められるべき事などしていないし、

 誰も責める資格など持っていないのだろう・・・。

 だが!

 このままではすべてが手遅れになってしまう。

 この世界は何かが狂っているんだ!!

 私たちは、自分たちを正義だなどと思ってなんかいない!

 だがそれでも、この戦いで私たちが倒れようと、

 その目的を果たせずに、地獄の底へ落されようと!

 ・・・きっと何かが変わると信じて・・・、

 ウーサー様も・・・日浦も・・・私も・・・!」


 「・・・・・。」

平和に育ってきたタケルにも、

この世界に悲しみや不幸が溢れていることぐらいわかっている。

戦争・貧困・差別・虐殺・犯罪・天災・・・

それらに対し、人類史上始まって以来、

どんな人間や政治体制でも、

解決できた事などありもしないということも・・・。

 


 

 美香姉ぇだったら、こいつに説教でもかますだろうか?

 だが、自分にそんな偉そうな事を言える資格があるとも思えない・・・。

 まだぶん殴ってやった方が、よっぽど自分らしい。

もっとも、他に気になることもある。

今の自分は変に冷静だ・・・。


 「・・・なぁ、ランスロット・・・。」

 「何だ・・・。」

ランスロットは鼻をすする。

ギリギリまで涙を堪えていたのだろうか?

さっきまで、自分だって感傷に浸っていたのだから、

そんなことでランスロットを冷やかすつもりもないが・・・。


タケルの視線は黒コゲになったモードレイユにある・・・。

 「あの男・・・モードレイユっつったか・・・?」 

 「・・・ああ。」

 「あいつ、日本人なの?」

 「あいつは・・・母親が日本人だ、

 確か日本姓はカトーだったかな?

 父親は騎士団の人間ではないが、ウーサー様の親族だ。」

 


この物語のプロットを作ったのはかなりの大昔なんですが、

ついこないだ、

っても何年か前ですかね、


ヨーロッパで二酸化炭素削減の為にディーゼル車を導入し続けた結果、

窒素酸化物が増え続け、

中国の空よりも大気汚染が進んでしまったとニュースを見ました。


それを聞いて、

こいつら、本当に滅びた方がいいくらいのバカなんじゃないかと思ったものです。




そして最後の大事なお話です。

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