緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 天叢雲剣再び
ぶっくまありがとんです!!
途中で切ろうと思いましたけど分量が半端だったので一気に決着へ!
「なっ!? なにぃぃぃっ!!
世界侵攻をオレたちのせいにするぅっ!?」
驚くタケルを他所に、モードレイユは高らかに笑う。
「な?
そうすればオレたち騎士団は世界を救った英雄だぜ?
その後の世界を主導することだって難しくはない。
失う人の命も最小限で済む。
なんでお前らはそんな簡単な考えも思いつかないの?」
タケルの中でメラメラと激しいものが燃え上がった。
今まで、日浦や李袞・・・
そしてこのランスロットと戦っても、相手を純粋に憎いと思ったことはない。
・・・日浦の時には憎しみもあったが同時に迷いもあった・・・。
だが、この相手は・・・!
「安心しろ、タケル君、
お前もランスロットを倒したことになるんだ。
一時的にはだけど、スサ内部じゃ英雄になれるだろ?
・・・さて、
あんまり長話もしてられないな、
いま、こいつでランスロットに止め刺したら、この銃を君にあげよう。
なに? そこら辺で手に入る一般的な銃さ。
君を撃つのは、オレの愛銃でやってあげるからね。
ちゃんと硝煙反応とかも工作してあげる。
心おきなく死んでくれ。」
「て・・・てめぇふざけんな!!
誰が・・・グアッ!!」
喋っている途中で、タケルまでもモードレイユに撃ち抜かれる・・・。
鎧から露出している左の太もも・・・。
モードレイユが、
いつホルスターから外したのかわからないほどの、
素早く、そして正確な腕前だ・・・。
それも空いている左腕で自らの愛銃を掴んで・・・。
モードレイユにしてみれば、
頭の固いわからず屋に、親切に説明しているつもりなのだろうか、
タケルをまるで慰めでもするかのように優しく話す。
「だからぁ、オレとお前らは考え方が近いんだってば。
おとなしくしててくれよ、
オレが騎士団トップになったら、人間を必要以上に殺したりしないって・・・。」
「く・・・く、この野郎~ッ!」
だがもう、撃たれるまでもなく、
ランスロットもタケルもどうしようもないのだ。
これでは先ほどと状況は全く変わっていない。
確かにモードレイユの言い分は、騎士団のそれよりマシかもしれない。
だが、ここまでこの戦いを汚されて・・・、
ましてや美香や父親たちが継いできたこのスサに、
汚名をかぶせるとまで聞かされて・・・。
いや、先ほどまでの状況とただ一つ違うことがある・・・。
それはいま、タケルの心の奥底に沸々と湧き上がる怒り・・・。
ドックン!
もう口を開く必要はなかった・・・。
自らのカラダの中を何かが蠢いていくのが判ったから・・・。
それは自分の怒り・・・エネルギー・・・
そう、それはいつだったか、
日浦に連れて行かれた製薬工場で感じたものと同じものだ。
まるで自分が別の何かに変わっていくような・・・!
隣でそれに気づいたランスロットは驚愕する。
・・・もう動けないはずなのに、タケルはまだ眼の光が衰えていない!
いや、むしろそれはこれから戦いに向かう者の・・・!
そしてその眼の光に本能的に危険を感じたのか、
モードレイユは、さらにタケルの右腕をも撃ち抜いてしまう。
「お前・・・うざいな・・・。
先にお前から消してやるよ・・・。」
もはや手足もまともに動かせないタケルは這いつくばるのみだ。
だが、彼の右手は未だ、天叢雲剣を握りしめている。
もう、それを投げつけることすらできないのに・・・。
ただ、何かにすがるように握りしめているだけの剣を・・・。
今やタケルは、その眼光のみをモードレイユにぶつけているが、
それはモードレイユにしてみれば、剥き出しのターゲットである。
その額を撃ってくださいと言ってるようなもんだ。
何故か「ルドラの鎧」の兜部分には、
額の場所が隙間となっているせいもあるし・・・。
そこでモードレイユはタケルの額に照準を合わす。
的は小さいが、この距離なら問題ない。
もはや自分の計画の成功を確信したのだろう、
モードレイユは、
ついに恐ろしい事実を口にした・・・。
「祈ってやる・・・、
『二人とも』オレの手にかかって死ねるんだ、
お前が大切にしていた姉と・・・
せめて、向こうで会えるようにな・・・。」
そのセリフを聞いた瞬間、タケルの目の色が変わった!
タケルの全身の細胞が沸騰する。
「まさか・・・て、め、ぇ、かぁ ッ!?」
「彼女の存在が一番厄介だと思った・・・、
一番まずいのは、
騎士団の暴走を彼女が食い止めてしまうかもしれなかった事。
・・・ほんと、オレっていい仕事をするよ。
ん? おいおい、・・・どうせいきがったって何もできまい?
もう攻撃する手段は残ってないだろ?」
ドックン ドックン ドックンッ!!
心臓の音?
いや、それはタケルのカラダから聞こえてくるが、
何か別のものだ・・・。
パリ・・・パリパリ・・・
たった今、モードレイユの放った一言は、
ランスロットでさえも驚くべき衝撃の事実であった。
まさか、最大の敵と認識していた緒沢美香までも、
既にこの男の手にかかっていたなど・・・!
だが、それと共にさらに驚くことがある・・・!
緒沢タケルのところから異様な気配・・・!?
異音?
いや・・・青白い光が・・・!!
ランスロットは自らの目を疑う!
獣のようなタケルの瞳・・・
いや、もうそのカラダは猛獣のようなそれと見紛うばかり・・・。
そのカラダが、青白い光にうっすらと包まれ始めたのだ!!
「てめぇが・・・姉貴を・・・美香姉ぇを・・・っ!!」
その異変はモードレイユにもわかった。
いったい、こいつに何が起きている!?
何がなんだかわからない・・・!
その戸惑いが拳銃の発射に狂いを生じさせた。
ズギューン!!
焦って撃ったのだろう、
モードレイユの弾丸は狙いがそれて兜に弾かれる!
彼が狙いを外す瞬間など、見たのはランスロットも初めてだ。
だがそれ以上に、
タケルが全く動じていないことに魅入られるばかり・・・。
もうタケルには眼前の男しか目に入っていない・・・!
既にタケルはこれから起こり得ることを理解している!
後は自分のすべき目的を果たせるかどうかだ!
「・・・美香姉ぇ・・・
オレに力を貸してくれ・・・、
コイツを・・・、
美香姉ぇを死なせたコイツを倒す力を!!」
現象に変化が現れた・・・!
タケルのカラダを包んでいた光は、
さらに右手の天叢雲剣に集約されていく!
・・・そう、
これはあの時と・・・、
美香がタケルに全てを託した時・・・、
彼女の「希望」を、
愛する弟に繋ぎ残した時と同じことが起きようとしていた・・・。
たった一つの純粋なる感情を爆発させる時、
緒沢家が代々伝えし神剣・天叢雲剣は、
・・・その隠されていた力を解放させるのだ!!
もはやタケルに考える必要などないっ!
カラダが覚えている、
カラダが理解している!
あの夜の事を忘れることなんかないッ!!
かろうじて振り上げた右手は震えていようが問題はない!
まるで周波数が、
どんどん高くなっていくかのように、
キィィィンという音があたりを包む!
天叢雲剣の放電が激しさを増す・・・。
バリバリバリリッ・・・!
タケルの怒りを・・・思いを・・・
全て吸い取って・・・
「 ・ ・ ・ ぉ お お お お お お 叫 べ っ !
い か づ ち っ ! ! 」
その瞬間、目も眩むばかりの閃光っ!
鼓膜を破壊しかねない炸裂音!!
・・・辺りは光の奔流と、空が破れたかのような轟音に包まれる!
そして・・・
その世界が、
永劫に続くかのように思える錯覚が、
今や傍観者・・・、
「湖の騎士」ランスロットをも飲み込んでいた・・・。
実はこの章の大事な部分はこの後です。
姉の死に一区切りつけたこと、
天叢雲剣を発動したのも大事ですが、それ以上に・・・