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緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 ランスロット急襲

 

 「傷の具合は大丈夫か?」

開口一番、銀髪交じりのサルペドンが確認したのはタケルの体調だ。

何しろ連続で騎士団の支部長二人と戦ったのだ。

正直、ここまで幸先がいいとはサルペドン自身も思っていなかった。

戦闘訓練からのデータ、そして実戦・・・。

緒沢タケルがこれほどまでの活躍をしてゆくとは・・・。


メンバーの誰もが、

新参であるタケルを褒めあげ、持ち上げる中、

組織のナンバー2であるサルペドンは、

相変わらずぶっきらぼうのままだ。

内心の驚きや喜びを、タケル本人の前では一切見せることもない。

今回も、まるで機械の具合でも確かめるかのような、感情のこもっていない質問だ。


タケルもそろそろ慣れてきてるので、

いちいちムカつくこともないが、

相手に合わせ素気なく答えるだけだ。

 「ああ、問題ねーよ、

 打ち身とか切り傷はあるが、次の戦闘に影響を与えるものは何もねー。」

 「そうか、頑丈なカラダだな、

 なら、ちょっと付き合ってくれ。

 技術部門のデン・テスラからの報告がある。」

 「ああ・・・?

 あの垂れ目のおっさんね。」


別にサルペドン以外には害意もないのだが、

自然とこの男の前では言葉使いが乱雑になる。

ただでさえ、今まで平和のぬるま湯に浸かっていた自分が、

いきなりこんな殺し合いを始めてしまったのだ。

精神的に不安定になるのも仕方がない。

「心構え」についてはサルペドンの刺激的なケアがあったのだが、

そう万事が万事、うまくいってるとも言い難い。

・・・いや、これだけでも十分、

適応しているほうだろう。

ただ、それ以上に事態は深刻なままというだけなのだ。

 

 

サルペドンも時々、考えることはある。

 (美香が生きていたら、

 今度の戦いにどのように対応していたであろうか?)


彼女の統率力・判断力は疑うまでもない。

だが、もし日浦義純と彼女が直接、剣を交えたら・・・、

想像するだに恐ろしいが、

たとえ勝てたにしても、彼女への精神的ダメージは計り知れないものとなるだろう。

その場合、一時的な勝利を収めたとしても、

その後の展開が明るいものになるとは言い切れないものがある。

そしてサルペドンはさらに、

在りもしない仮定を考えてみた。


 (生前の美香は・・・

 そんな事も想定して弟のタケルをスサに迎え入れようとしていたのだろうか?)


スサ施設内、タケルと二人だって廊下を歩く途中、

サルペドンは振り返ってタケルの顔をのぞいてみる。

 

 「あ? なんだよ?」

そんなサルペドンの胸中を、

タケルが勿論わかるはずもない・・・。

 「・・・いや、何でもない・・・。」

 「はぁ?」

サルペドンは首を戻し自嘲した。


 らしくない・・・。

 もう、過ぎ去った事、

 確かめもできないことに頭を煩わせるなんて・・・。

 他に考えねばならない事は山のようにあるのだから・・・。




 「ああ、サルペドン様、待ってましたよ。

 具合はどうだい、タケル?」

スサ科学技術部門の総責任者、デン・テスラである。

少しほっそりとした長身の男だ。

スサ独自の防備体制・迎撃システムは彼が開発・管理している。

ここでもタケルは呼び捨てだ。

ちなみに他の殆どのメンバーにタケルは呼び捨てにされている。

最初はなめられているせいもあったのだが、

これまでの活躍と実績が、

侮蔑的な呼ばれ方から、いつの間にやら親しみを込めたものへと変化していたのだ。

もちろん、サルペドンだけは何の変化も見せてはいない。

 


サルペドンは椅子にも座らず、デンへの質問を開始した。

この素っ気なさはタケルに対してだけではなく、

どうやらメンバー全員に対してのもののようだ。

タケルが一々つっかからなくなったのも、

その辺りを把握でき始めたことに他ならない。

 「それでデン、どうなんだ?

 システムの完成具合は・・・?」

 「はい、オデュッセウス部隊とヘクトール部隊に破壊された迎撃態勢は、

 ほぼ復旧を・・・というか、代替体制は終わらせています。

 もう、この国の行政はまともに機能していませんからね、

 今までみたいに隠したり偽装したりする必要もありません、

 そこいらの手間が省けたんで、時間はかかりませんでしたよ。」

 「・・・ということは・・・。」

 「はい、後はこの基地を移動させる・・・

 それの仕上げまでもう一息、というところです。」

ここまで黙って聞いていたタケルが驚いた。

 「へ? この基地を移動?」

 

デンはにっこりとほほ笑んだ。

 「へへ、・・・このままじゃ海を越えて戦いに行けないっしょ?

 守っているだけじゃ何も解決しないしね。

 この基地が出来上がって、

 しばらくしたころから計画は進められてきたんだ。

 もう一息ってとこ。」

 「え…? だって、ここって地下だろ?

 あ、じゃ、他に基地が? 引っ越し?」

 「いいや、この基地からは動かないよ、

 この基地自体が移動するんだ。」

 「そ・・・それってまさか、よくある・・・」


と、タケルが言いかけたところでサルペドンが遮った。

 「詳しくは後でいい、

 今、騎士団はアジア方面への足掛かりを失って、

 しばらく我々に手を出せまい。

 今のうちに完成を急がせてくれ、

 戦闘部隊で動けるものも、手足のように使ってくれて構わん。」


 「りょーかいっす!

 ではフル活動でこの『ガルーダ』を完成させますね!」


話についていけず、タケルは記憶の底を漁るしかない。

 ガルーダ?

 そう言えば、最初この建物に来た時、聞いた覚えが・・・。


その時、タケルは・・・タケル達はデンの眼前のモニターから、

突然、画面の変化とアラーム音が鳴りだすのを耳にした。


 ビーッ! ビーッ! ビーッ!!


サルペドンがいきり立つ。

 「何だとっ!?」

デンは冷静にモニターに向きなおり、

この警告音とレーダーに映ってる物の正体を調べ始めた!


 「北西の方角に・・・無数の飛行物体・・・!」

 「馬鹿な!? 騎士団か!?

 いったいどこの・・・!?」

デンからの答えも待つ暇もなく、サルペドンはこの部屋から、

すべての施設内に緊急連絡を行った。 

 

 「全員に告ぐ!

 レーダーに多数の飛行物体の反応あり!

 全員迎撃態勢を取れ!

 詳細は随時、指示をする!

 繰り返す! 全員持ち場について迎撃態勢を取れ!!」


そしてサルペドンが放送を終えるころには、

デンも分析を終えたようだ・・・。

 「飛行物体は、我々の攻撃兵器の射程外にいます。

 オデュッセウス部隊とヘクトール部隊との戦いでデータを取られたのでしょう、

 彼らは接近を停止し、西北の山の向こう側のふもとで待機しているようです。」

 「では騎士団に間違いないということか!?」


その時コントロールルームからも連絡が入る。

マリアだ。

 『サルペドン! タケルさん、

 そちらにいらっしゃいますか!?

 騎士団から通信が入っております!!』

 


 

三人はそれぞれ顔を見合わせた後、

タケルとサルペドンは急いでコントロールルームへと向かった・・・。


 「通信はまだ繋がっているか!?」

サルペドンがコントロールルームに入ると同時に大声で怒鳴る。

マリアはサルペドンとタケルの顔を確認すると、

一度うなずいた後、

通信用モニターのマイクに向かって、

冷静にその通信先に向かって話しかけた・・・。


 「・・・お待たせしました。

 われらの代表が戻りましたので・・・。」

そしてマリアは、その立ち位置をサルペドンとタケルに明け渡す。


そこで、タケルはモニターに映っている男の顔を見た・・・。

長い金髪の優男・・・。

向こうからもこちらの顔は見えているのだろう、

その男・・・ランスロットは口を開いた・・・。

 


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