緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 アヴァロン城緊急会議
とある事情で
もしかしたら後で修正するかも・・・。
ここはイギリス・・・、
湖のほとりに立つ古城アヴァロン・・・。
その城の奥深くにある重厚な装飾を施された一室、
そう、騎士団の象徴たる大円卓を置く会議室。
円卓の周りには13の椅子が並べられ、
各々の席に逞しい体躯の男たちが座っている・・・。
・・・いや、空席がある。
その数は3つ・・・。
騎士団極東支部日浦義純・・・、
騎士団亜細亜支部李袞、
そして、上座に当たる大きな椅子にも誰も座る者がいない、
騎士団総司令官ウーサー・ペンドラゴンが座っていた席・・・。
そして埋まっている席についても、
そのほとんどがホログラフィによる遠隔地からの出席だ。
なにしろ騎士団は総出で世界各地に侵攻しているのだ。
いまさら、緊急会議とて本部に戻れる筈もない・・・。
そして今日の緊急議題とは・・・。
「・・・義純に続いて李袞も敗れたそうだな・・・。」
「義純が敗れた理由は、なんとなく想像がついていたが、
李袞までともなると、これはまぐれとも考えられん・・・。」
「監視対象外と思われていたが・・・やはり緒沢家の血筋、
侮る事はできないという事か・・・?」
「緒沢美香が『事故死』したと聞いた時は、しめたものだと思ったのだがな・・・。」
「『事故死』なのか?
スサ同士の内ゲバという話ではなかったのか?」
「確実な事は何も言えん、
・・・タケルがそのまま総代の地位に就いているからには、
内部の者による暗殺の線は薄いだろう。」
「そんなことより・・・!」
南欧支部支部長ケイが重い口を開く。
「次はどうする・・・。 誰が行く!?」
ガターンッ!!
激しい音とともに、一つの椅子から、紅い髪の男が立ち上がった。
長身痩躯の「豪剣の騎士」北欧支部支部長ライラックだ。
「俺が行く!
・・・オレと義純は兄弟のように育った・・・!
ヤツの仇はオレが取る!!」
騎士団内でも1、2を争う実力の男・・・、
この男ならばスサなど一溜まりもないはず・・・。
ほとんどの支部長がそう思ったが、
この会議場に、たった一つの静かな言葉がライラックを諌めた。
「『豪剣の騎士』ライラックよ・・・。
キミの実力はここにいる誰もが疑いを持たない・・・。
だが、キミはまだ担当区域の制圧が済んではいないはずだ、
その任務をおろそかにする訳にはいかない・・・。」
その声の主は、
この会議場で最も小柄で、長いウェーブの金髪を持つ青年のものだった。
小柄と言っても、世間の平均的な体格といったところだろう、
まわりの支部長達の体格が大きすぎるだけだ。
そして、この男が、
今や、騎士団内で最高の発言権を持つ騎士団長、
「湖の騎士」ランスロットだ。
また、今のこのランスロットの発言は正論であり、
その事は、他の支部長から異論も起きるはずもなかった・・・。
ただ一人、ライラックだけが唇を噛み、ランスロットに向かって口答えをする。
「グッ・・・! で、では他に誰を!?」
ブロンドの前髪を片目まで垂らした男、ランスロットはしばらく答えない。
そして・・・両手を組んで熟考した後、顔をあげて一際大きな声を放ったのだ。
「私が行く・・・!」
これまでにないどよめきが会場を包んだ・・・。
誰しもが予想できなかった選択肢だったからだ。
この場で最も年長たるケイが慌てて制止する。
「待ちたまえ、ランスロット!
ではここの守りはどうする気だ!?」
「私のヘラクレス部隊を置いていきます。
一線を退かれた長老達に監督していただきましょうか?
・・・ガラハッド!
お前のカッサンドラ部隊を借りたい。
スサ侵攻にお前の部隊を使わせてくれ。」
反対側の席から若い金髪の青年が立ち上がる。
「わかりました!
私もお供させていただけるのですか!?」
ガラハッドはこの円卓に、最も新しく座ることを許された新米騎士であるため、
いまだ、責任ある戦いは任されていない。
自他共に、ここで経験を積むいい機会と認識しているはずである。
・・・だがランスロットの答えは違う。
「いや、ガラハッドは後方で待機してもらいたい、
・・・私の行動には、
東欧支部支部長『栄誉ある騎士』モードレイユ!
・・・君と君のアケローン部隊を同時展開として共同行動をとる!」
さらなるどよめきが会場を覆う・・・。
スサの制圧に最強の男と言われるランスロット自ら出向き、
なおかつ支部長クラスを二人も用意して・・・。
ランスロットは一気にスサを潰す気だ。
まさに、兎を狩るにも全力で襲い掛かる最強の騎士に相応しい行動といえよう。
そして指名を受けた男、
ガラハッドに次ぐ若さだが、薄くヒゲをはやし、短い黒髪の物静かな男、
東欧支部支部長モードレイユは返事もせず、
ただ、ランスロットに頷いてみせた・・・。
ランスロットはそれを確認すると、
次々とその後の作戦を各支部長に指示をする。
まだ齢30台半ばだがその行動力・統率力は紛れもなく、
騎士団トップに相応しいものといえる。
剣技では互角の実力を持つライラックでも、
組織内においての実行力となると、ランスロットには及ぶべくもない。
「・・・サー・ケイ!
あなたには、空白となる東欧地域を一時的に見ていただけますか?
既にモードレイユがほとんどの地域を無力化していますが、
何らかの動きがあったときは、
あなたの判断で行動を起こしてもらいたいのですが?」
「問題ない、任せてもらおう・・・!」
「ありがとうございます、
露西亜支部イヴァン・・・!
君もいざという時は協力してくれ。」
白い手の男・・・「獅子の騎士」イヴァンも異存はない。
「了解しました、
お任せ下さい・・・!」
他の案件も早々にケリをつけ、
いくつかのホログラムは光を失い、
ランスロット、ガラハッド、そしてモードレイユが席を立つ。
彼らは次々に部屋を出るが、
最後に若きモードレイユは部屋の奥を一度振り返った・・・。
ウーサーがかつて座っていた玉座の更に奥・・・。
部屋のほとんど壁際にしつらえた壇上、
そこに一筋の光が・・・。
モードレイユはウーサーの甥にあたり、
あのウェールズの魔女マーゴとも血縁関係にある。
顔つきはどことなく彼らの面影もあるが、
一見すると彼の顔つきは東洋人にも見える・・・。
「栄誉ある騎士」と呼ばれる彼の技能は、射撃面において最高クラスの腕を誇るが、
本人に言わせれば、人並み外れた視力の賜物だそうだ。
そして彼はその猛禽類のような目で、部屋の奥の光を凝視する・・・。
そこにあるのは一台の巨大な金床・・・。
そして、その金床に垂直に・・・
一本の光り輝く剣が突きたてられていた・・・。
本当の剣はどちらが正しいのか。
誰にも引き抜けない金床に刺さった剣、
湖の妖精から受け取った剣か・・・。
私は後者が好きですが・・・。