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緒沢タケル編5 騎士団戦最終章 ダイジェスト版 亜細亜支部「忠節の騎士」李袞(りこん)との戦い

日浦戦は以前述べましたので前書き部分に再掲します。



緒沢タケルは、正式に秘密結社「スサ」の総代の地位に迎えられる。

「スサ」とは、

世界各地に伝わる古代の英雄神の末裔達が、

共通の価値観を共にして集合した明治時代からの比較的新しい組織・・・。

だが、その殆どのメンバーは、

王族出身であったり、強大な権力を手にしていたり・・・、

騎士団とは組織の性格自体が違うが、

騎士団に優るとも劣らない経済力と、

侮ることのできない政治的影響力を有していた。

・・・だが、たった一人の家族、

姉・美香の死のショック・・・、

及び、騎士団極東支部長・日浦が推測した、

美香殺害の「スサ内部犯行説」をも捨てきれないまま、

タケルはスサ総代の地位に就いてしまった。


・・・本当なら、

もっと時間をかけて組織になじむのだろうが、

タケルは、

自分がどうしていいかわからないうちに、

騎士団が世界に宣戦布告をしてしまう。

時間はない。


・・・そして、ついに、

「愚者の騎士」日浦義純との対決は避けられないものとなっていく。

インドのクリシュナ家が伝える呪われた防具「ルドラの鎧」と、

緒沢家門外不出の剣、

神剣天叢雲剣を手に入れたタケルは、

「スサ」の戦闘部隊の最前線に就いた・・・。

自衛隊、及び在日米軍の主力を破壊した騎士団オデュッセウス部隊と、

スサの全面激突・・・。


そして・・・

最後に日浦義純とタケルの一騎打ちが・・・。


経験で優る日浦だが、

タケルのパワー・スピード・戦闘センスに次第に押されていく・・・。

そして何よりも、

騎士団の決定に最後まで反対していた日浦には、

・・・タケルを倒そうと言う気概すらもない。

一方、

都市や多くの人命を奪った騎士団に、

やはり姉の殺害への疑いを強めたタケルの怒りは凄まじく、

もはや、誰にも彼を止める術はなかった・・・!


 「てめぇは気づいていたのか!?

 姉貴がてめぇに、

 どんな気持ちを抱いていたのかっ!?」



日浦は反論すらしなかった・・・。

そしてついに、

タケルの剣が日浦の胸を貫く・・・。

「スサ」の勝利・・・

騎士団極東支部オデュッセウス部隊は降伏した・・・。

だが、日浦の部下は、

戦闘終了後タケルに告白する・・・。


 「・・・支部長こそ、

 美香殿に特別な気持ちを抱いていました。

 あなたはご存知ないかもしれませんが、

 支部長は美香殿にかつて命を救われたのです・・・。

 その時からか、いつからかはわかりませんが、

 お二人が、

 互いに特別な感情を抱いていたのは我々も知ってました・・・。

 ですが、二人の立場であれば、

 それは決して結ばれることのない運命。

 みんな・・・敢えて、

 その件には触れないようにしていたのです・・・。

 そして、

 今度の世界侵攻にも、

 最後まで反対していたのが日浦支部長です・・・。

 あなたと・・・戦う事を

 本当に、つらそうに、していました・・・。」


タケルがその話を理解するにはかなりの時間を要した。

無理もない。

もしかしたら、姉を幸せにしてくれたかもしれない男を、

たった今、自分の手で息の根を止めたばかりなのだから。


 「は、はぁ?

 そ、そんな・・・なんで、

 なんでそんな事を一言も言わねぇんだっ!!

 だったら、オレ、

 ・・・オレ達・・・戦わなくても!?」


 「いえ、タケル殿・・・、

 支部長は、

 もしかしたらあなたに・・・

 殺されるために・・・

 わざと・・・。」


だが、

全ては手遅れだった・・・。

もう、失った命は戻ってこない・・・。

日浦総合リサーチの事務所に、

もう、

マンデリンの芳しい香りが漂う事は・・・

ない。


騎士団極東支部支部長・・・

「愚者の騎士」日浦義純・・・

戦死・・・。



ネクストバトル・・・

騎士団亜細亜支部支部長

「忠節の騎士」李袞 対 緒沢タケル・・・


 

日浦義純率いる騎士団オデュッセウス部隊を倒したスサの前に、

いよいよ亜細亜支部支部長、「忠節なる騎士」李袞りこんのヘクトール部隊が現われる。

白兵戦・接近戦においては、騎士団の中でも絶対的な実力を持つ彼らに、

当初、スサは対応できない。

だが、元々数々の中国拳法を身につけるタケルの反撃に、スサは徐々に勢力を盛り返す。

タケルの快進撃に目を見張った李袞は、自らタケルの前に姿を現わした。


 「・・・見事だ。

 日浦を倒しただけの事はある・・・。

 しかもそんな若さで、どうやってこれほどまでの力をつけたのか?

 この私、自ら相手をさせてもらおう・・・!

 だが、その重苦しい鎧をつけたままでいいのかね?

 キミがつけているその鎧・・・刀や銃弾はいっさい受け付けないようだが、

 修練を積んだ拳法家の前では役に立たない・・・。

 キミも拳法を習得しているなら、

 私の言うことの意味が分ると思うが?」

 


見れば、李袞はタケルより二まわりもカラダが小さい。

勿論、それはタケルが大きすぎるだけなのだが、

誰がどう見ても、まともにぶつかればタケルの方が有利なはずである。

だが、対峙するタケルには全てが分った。

 この男は本物の実力者だ!

この「ルドラの鎧」が役に立たないというその理由も・・・!

修練を積んだ拳法家の打撃は、

波のようにその衝撃を全身に浸透させる事が出来る。

その威力は鎧など無関係に肉体にダメージを与えるのだ。

 

 

・・・相手が素手で戦うという・・・。

通常の戦闘であれば、

拳銃でもあればあっという間にケリがつくかもしれないが、

この近距離では、狙いなど簡単に外されてしまう・・・、

何しろ、タケルは戦闘訓練の日も浅い。

射撃技術など、まだ満足なレベルには達していないのだ。

それよりも・・・剣術・・・

いや、自らの拳を使った肉弾戦こそ、

タケルの最も得意な戦い方だ。

自分も拳法なら誰にも負けない自信もあった。


 ・・・オレの腕は本物の達人に通用するのか・・・!?

自分の腕を試してみたい・・・。

今まで、誰もタケルに敵う者がいなかった・・・

ということは、自分の力が計れないことでもある。

若きタケルが、「自分の力を知りたい」という欲求に抗えるはずもない。

 「そこまで言ってくれるからには、

 オレが鎧を外す時間をくれるのか・・・!?」

この場にサルペドンでもいれば、

「生き死にがかかってるのに何をくだらないことを!」とでも言うだろう。

だが、互いに拳の道に入った者同士、

その世界のルールを踏み外す事はなかった・・・。

 

そして二人はついにぶつかり合う!

「山東の虎」とまで称えられた李袞の名はタケルも知っていた。

騎士団の関係者である事は、

この時まで勿論、タケルに知る術はなかったが、

拳法界の最高峰に名前を連ねる李袞と戦えることは、

男のタケルにとって、この上ない悦びであるのだ!


得意の形意拳から構えに入る李袞!

対するタケルは一般的な太極拳を使う・・・。

・・・しばしの対峙の後・・・

李袞が動く、


一気に猛馬のような突進!

攻撃を放つ李袞、

その攻撃をタケルは捌きつつ、同時に李袞の顔面に掌手を繰り出す!

勿論、李袞の受けも完璧だ、

難なくその手を弾きながら李袞は粉膝脚・・・喰らえば膝の皿は割れる!

 


「避け」のパターンは種々あれど、

タケルは膝の角度を微妙にずらせ膝への攻撃を無力化する。

・・・この間、刹那の攻防、

目にも止まらぬ連続攻撃の応酬だ。

李袞はタケルの長い手足を丸太のように感じ、

タケルはその李袞の腕を鋼鉄のように感じる。

互いに勁が全身に張り巡らされているからこその感覚だ。


ここに第三者がいても理解は出来ないであろう。

プロレスラーにも匹敵するタケルの体格とパワーに、

何故に中量級の李袞が抗し得るのか・・・。

いや、恐らく握力や背筋力・・・

それぞれ個々の筋力は圧倒的にタケルが上回るはずだ。

 

 

だが勁の極意は体内の気を循環させる事・・・

そして長い修練によって、

全ての力を逃がすことなく効率的に、全身に連動させる事によって、

日常生活ではありえないパワーをその動きに与えるのだ。

それは天賦の才や環境だけで身につけられる物ではない。

長い年月を経た地道な型の練習の繰り返しのみでしか、

得られる力ではないのだ・・・!


李袞は言う。

 「体格の違う私の実力に驚く風でもないな・・・?

 それにキミの拳・・・、

 単純なパワーに頼っているものでないのもわかる・・・。

 ちゃんと拳法の考え方や修練の仕方を理解しているのだな。

 その若さでどうやって、ここまでその技術を積み上げた・・・?」

 「・・・中国拳法に走ったのはここ数年だが、

 オレはガキの頃から緒沢の剣術訓練をさせられていたんだ・・・、

 姉貴の相手もな・・・!

 『力』の乗せ方・技の受け方なんか基本に通じる所は似てる部分もある・・・。

 少なくともオレは武術を覚えたばかりの素人じゃねぇ・・・!」

 

 

なるほど・・・とは思った李袞だが、

すぐにその考えを打ち消した・・・。

 (あり得ない。)

確かに別の武術をある程度マスターしていることによって、

覚えが早くなることはある。

だが、直接カラダをぶちあてる拳法と、

剣先で打ち合う技術とは次元が違う感覚だ。

理屈は一緒だとしても、それを実践できるとしたら、

いったい、このタケルという男はどれだけの資質を秘めているのか・・・!?


李袞はいよいよ本気の実力を発揮する。

彼の拳、形意拳は別名象形十二形拳、

動物の形を真似、変幻自在の攻撃で敵を翻弄する。

あっという間に劣勢に追い込まれるタケル、

まだ致命傷こそ入れられていないが、

カラダ中、皮膚が破られ肉を切り裂かれている。

 「やっ、野郎っ!!」

だが、次に驚愕するのは李袞の番だ。

タケルの動き・・・技の動作が完全に別な物に変化したのだ!

 

 「こ! これは!?」

それまで太極拳をベースにしていたタケルが、

全く別の攻撃パターンを使い始めたのである。

 八極拳・・・蟷螂拳・・・八卦掌・・・、通臂拳!


タケルが門をたたいた拳法はたった一つではない。

現代中国との文化交流が盛んな日本で、

彼はありとあらゆる武術を身につけていたのだ。

特に手足の長いタケルの通臂拳は、ムチのように李袞のカラダを襲う。

それをその他の拳法とあわせ、遠近両方の間合いから攻撃をかけるのだ。


 これが緒沢家のおちこぼれと言われた男なのかっ!?


李袞は、

騎士団に広まっている彼への認識が、完全な間違いである事を思い知らされた。

 何故、我々は彼にそんな甘い評価を下していたのか!?

そして同時に李袞は一つの確信を・・・。

 (この男はここで止めねばならないっ!!)


受ければ即死の李袞の崩拳ポンチェン

近い間合いから半歩の踏み込みでタケルの内臓を破壊できるだろう、

瞬時にタケルはその技の危険さを認識!

考える間もなく反射的にタケルは動く・・・!

崩拳を破るは・・・同じ形意拳の・・・

 

 

ここで初めてタケルは李袞と同じ形意拳を使う!

鉈を振り下ろすかのような動作で、李袞の腕を叩き伏せる!

  劈拳ピーチェン!!

そしてそれは防御ではない。

その証拠にタケルの体は前方に突っ込んだ!

伸びきった李袞の腕を土台に、彼の腕の上を滑りながら、李袞の右胸に・・・!!


タケルの掌手が李袞のカラダを捉える!

次の瞬間、李袞のカラダは宙を舞い、十数メートルもの空中へと弾け飛んだ!!






激しい音と共に硬い床の上に投げ出される李袞・・・!

そして、・・・数秒の静かな間の後、

タケルは倒れている李袞の前に近づく・・・。

警戒は解いていない。

だが、李袞のカラダがもう戦えないという事だけははっきりしている。

それだけの手ごたえがあった。

すぐに李袞は大量の血を吐き、咳き込み始めた。

・・・恐らく・・・。

 


 

李袞の意識はハッキリしているようだ。

その目は驚愕と覚悟の意が浮かんでいるように見える・・・。

タケルはまだ興奮状態が治まらない・・・。

勝負はあったと認識できてはいるが、

自分が勝ったのだと言う自覚がまだ沸かないのだ。

・・・何しろ、あと一瞬、自分の反応が遅かったら・・・、

反対側の壁で身もだえ苦しんでいるのは、恐らく自分の方だったからだ・・・。


先にクチを開いたのは、まともに喋れないはずの李袞・・・。

 「・・・グハッ! み・・・見事だ・・・、

 まさ ハッ!

 ・・・まさか、形意拳で返されるとは・・・な。

 肺が潰れたようだ・・・

 早く止めを 刺せっ・・・!」


 

 潰れた肺は片方だけのはず・・・、

 すぐに治療さえできれば命は・・・。

タケルは李袞を見下ろしつぶやく。

 「勝てたのは運もあるけど・・・

 アンタを殺す必要はない、はずだ・・・。

 戦いを終えよう・・・。」

 「な? なに?

 私たちが憎く・・・ない、のか!?」

 「オレは日浦さんを殺したくはなかった・・・。」



息も絶え絶えの李袞の脳裏に、

あの、「愚者の騎士」とまで言われた日浦の生前の姿が甦る・・・。

騎士団内で最も甘い男と言われた、あの青年・・・。

しばらく沈黙が続いた後、李袞は一人、天に向かって言葉を吐く。

 「フッ、日浦よ・・・

 キ、キミは間違ってなかったみたい・・・だな・・・!」


最後に李袞は腰の小さな無線機を取り出した。

 「全軍、戦闘終了・・・!

 グフッ、 ヘクトール部隊はスサに降伏するっ・・・!」


こうして、タケル率いるスサは、

騎士団極東支部、亜細亜支部を連続で打ち破り、

騎士団本部に重大な脅威を与えるに至ったのだ・・・!


そして、事態を重く見た騎士団本部は、

スサ討伐に騎士団最強の男を送り込む・・・!!

 


次回、騎士団最強の男、ランスロット立つ!


実際ふっとばした方がダメージは拡散すると思うんですよね。

腕を掴んで逃げれないようにして掌底撃ち込んだら、きっと即死・・・。

あと 劈拳ピーチェンは鉈を振り下ろすようにと書きましたが、

実際は腕を捻りながら打ち下ろします(確か)。




そして李袞先生はこの後、山東省に引っ込んで孤児たちを集めて拳法道場を・・・

それは別の世界の物語・・・。

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