緒沢タケル編４ スサ 話の核心
最後のセリフでタケルは荒々しく席を立つ！
「戦争！？
・・・なら、その戦争するのに、ここじゃ上下関係もねぇってのか！？
それとも何か！？
美香姉ぇの務めていたスサ総代の座は、
今はアンタのものだとでも言うのかっ！？」
片や白鳥は、この二人の争いに入るスキを見つけられなかった。
・・・それはマリアも一緒だ。
勘の鋭い彼女は、タケルの精神の不安定さを見抜いていたが、
ここまで荒れた席になるなんて・・・。
それでも、「こちら」は年季が違うとでもいうのだろうか？
サルペドンは一向に意に介さない、
再びサングラスをかけ、タケルに向かってたんたんと話を続ける。
「勘違いをしているようだな・・・？」
「勘違いぃぃ！？」
「スサ総代は緒沢家の者が務める・・・、
だが、だからといって、
その血を継いでいる者が全て総代になれるとは限らん・・・。
最後の総会で、タケル・・・お前の参加は認めたが、
誰も、お前が総代になることを承認したわけでもないぞ？」
ガターン！！
ついにタケルの忍耐が限界を迎えた！
思わずタケルは飛び掛ってサルペドンの首元を掴みあげる。
「やめて！」
マリアが懸命に二人を引き離そうとする。
「タケルさん、落ち着いてください！
サルペドンも！
どうしてそんな挑発的な態度を取るのですか！？」
マリアが動いたのにならって、白鳥もタケルを引き離しにかかる。
いったいどうしてこんな事態になったのか？
・・・ようやく二人を分けるのに成功したが、
タケルは完全に敵意をむき出しにしている。
白鳥もこの場を何とかしようと必死だ。
「タケル！ お前らしくねーぞ！？
スサの中でお前が今まで、どんな評価だったかなんて、
最初から知ってたはずだろう！？」
できそこない、と思われていたタケル・・・
それはその通りだ・・・。
タケルも忘れていたわけではない。
しかし、だからといって、
美香が死んだ直後にこんな態度をとられて・・・。
けれども、サルペドンの容赦のない言葉は続く・・・。
「挑発的な、か・・・マリアの言う通り、そうかもな？
だが、この坊やは、これから私たちがどれだけ重要な事をしなければならないのか、
わかっていないようだ、
こんなにすぐ、神経を昂ぶらせて我を忘れるような小僧が、
美香の跡を継げるというのか？
スサ総代として騎士団に立ち向かうのなら、
ここで活動しているスサ全員の命だけではない！
世界中の人々の命もかかっているのだぞ！？
お前には、本当にその覚悟があるのか！？」
「・・・クッ、そりゃ・・・！」
サルペドンはさらに容赦ない。
「美香が死んで、ここにくれば、
勝手にスサのトップになれるとでも思っていたのか？
・・・なめるな！
カラダがでかくなろうが、ケンカに強くなろうが、
おまえ自身の精神は何も変わってない！
お前達姉弟がどういう育ち方をしていたかなど、
スサの副官として常に報告を受けている！
スサ総代の血筋だからとて思い上がるなよ！」
・・・ぐぅの音もでない・・・。
サルペドンの主張は全く以ってその通りだった・・・。
そしてそれ以上に、タケルは口下手だ・・・。
二倍以上も年の開きのある老獪な副官に、理屈で争えるわけもない。
悔しさを誤魔化すために必死でタケルは話題をそらす。
「ほ・・・報告を受けている？
俺たちを監視してたっていうのか！？」
「断っておくが、お前の祖父や父も承知の上だぞ？
フッ、・・・変な自己紹介になってしまうが、
私はお前の祖父の代からこの地位を務めているんだ。
緒沢家に異変があれば、
その善後策を決定できる権限を私は与えられている。
・・・従って・・・！」
ドガァッッシャァァッ！！
タケルが拳を振り上げて机を叩き壊した・・・！
見るも無残に机はぺしゃんこだ・・・、
木製とはいえ、足がボッキリと折れている・・・。
マリアも白鳥も、
その衝撃に驚くばかりで次の行動に移れない・・・。
サルペドンは無言でタケルを見据えているまま。
そして・・・ようやくタケルは、昨晩から心の奥底で溜めていたものを、
ゆっくりと、絞るような声で吐き出したのだ・・・。
「・・・つまり・・・、
美香姉ぇがいなくなれば・・・
このスサを牛耳れるのはアンタか・・・！
このスサを自由に乗っ取れるってことか！？
なら・・・
美香姉ぇを襲う動機は十分にあるってことだよなぁぁぁ！！」
タケルの、あまりの衝撃的な問い詰めにマリアは両手で顔を覆う・・・！
「タケルさん・・・！？」
白鳥もショックは同様だ。
「お前・・・何、言い出すんだ！？」
「オレは日浦さんとこれまでに何度か会った・・・、
あの人が闇討ちや暗殺なんてできるような人間には見えねぇ！
美香姉ぇも、日浦さんを信頼している風だった・・・。
白鳥さん、
アンタだって、日浦さんのことを『最も甘い男』っつったっすよねぇ！？
・・・なら、美香姉ぇが死んで一番、得するのは誰かって・・・、
そういう考えになるだろうっ！！」
「バカを言うなっ！！ ニュースは見たろう！？
騎士団が、この日本や世界中で破壊活動しているのを教えただろう！
だったら、奴らが女性一人の命を奪うのに躊躇するわけもない！！
タケル！ そのぐらい分るだろうがッ！」
白鳥も必死になってタケルを説得するが、タケルは納得しない。
「・・・ニュース？
ニュースのどこに騎士団の名前が出てきたんです？
この世界テロの首謀者の自白や、自殺のシーンは確かに見ましたよ・・・？
でも、その実行部隊が騎士団だという確証は・・・？
それにさっき、このサルペドンとか言うオヤジは、
これから戦争するっつったっすよねぇ！？
なら、このスサにもそれ相応の戦闘力があるってことじゃないすか！？」
サルペドンとマリアはスサ内において、
その地位は、ナンバー２、ナンバー３と考えていただいて結構です。
（断言はしない）
