緒沢タケル編4 スサ カール・サルペドン
前回、小タイトル付け忘れちゃいました。
「カール・・・サルペドン?
副官?」
・・・タケルの顔に緊張が走る。
副官ってことは、美香姉ぇの補佐官・・・ってことか?
いったい、どんなヤツなのか?
一度、タケルは後ろの白鳥を振り返ったが、
白鳥も、何か助言もできるわけでもなく、
意味も無しに顎を傾け、「行けよ」と合図を送る。
周りがバタバタしているのを尻目にタケルはマリアの後をついていった。
・・・途中、働いているスタッフの一人が後ろを振り返って目配せしてくる。
日本人のようだ・・・、
どっちかっというと、体育会っぽい、おっさんだったが、
悪気もなさそうに笑みを浮かべて手をふる。
タケルは恥ずかしそうに挨拶する。
・・・もう一人、メガネをかけた大陸顔の女性も、
振り返ってタケルに笑顔を見せる。
20代後半くらいに見える胸が目立つ女性だ。
どこの国の人だろう?
見ると、この場の女性はマリアと彼女だけだ。
少しタケルの緊張がほどけた・・・。
もっとも、ほんの一時だけなのだが・・・。
部屋の奥には大きな机が二つある・・・。
一つは空席・・・、
そしてもう一つには、かなりの上背の男が座っていた。
うつむいて書類でも見ているせいか、
顔ははっきり見えない・・・。
髪は・・・白髪・・・ではない、
銀髪と黒髪が混じりあっている。
年齢はかなり上のようだ。
マリアはその男の机の目前まで歩き、
柔らかい声でその男に話しかけた・・・。
「サルペドン?
タケルさんが到着しましたわ。」
男は無言で首をもたげると、
・・・室内だというのにサングラスをかけているのが分かった・・・。
書類の文字を読むのに見辛くないのだろうか?
サルペドンと呼ばれた男は、
しばらくタケルの方を見つめていたようだが、そのうち、ゆっくりと立ち上がった・・・。
・・・いかつい彫りの深い顔立ち・・・、
身長も180は越えるだろう、
分厚い胸板・・・年も50は過ぎているようにも見える。
男は右手をゆっくりとタケルに差し出した・・・。
「ようこそ、タケル君、
・・・私がこのスサの副官、カール・サルペドンだ・・・。」
誘われるまま握手をするタケルだが、
この男からは何の感情も読み取れない。
自分を歓迎しているかどうかもわからない。
顔の表情にも、いっさい変化が見られないのだ。
本当にこんな男が美香の補佐役だったのだろうか?
美香は本当に、こんな男たちを信用していたのであろうか?
「ああ、・・・えっと・・・。」
タケルが口ごもっている事など、どうでもいいかのように、
サルペドンはマリアに指示を出す。
「ここでは落ち着かないだろう、
後ろの部屋を使おう。」
その立ち居振る舞いは、
完全に権力を手中にしている者の行動だ。
美香が総代を務めている時から、この男はそうなのだろうか?
・・・タケルの胸中に疑念が渦巻く・・・。
奥のミーティングルームに4人の男女が座る。
真っ先にマリアがサルペドンに話しかけた。
「先ほど、タケルさんの話を伺って来ました・・・。」
サルペドンはイスに背中をもたれかけて、ぶっきらぼうに答える。
「ああ、聞いていたよ・・・。」
思わずタケルが反応した。
「聞いていた!?」
「・・・ん? 集音器付きのカメラぐらいあるさ、
あそこはこの拠点への入り口の一つだからな、
誰が侵入してきても分るようにするのは当然だろう?」
サルペドンの冷静すぎる態度がタケルの神経を昂ぶらせる。
「・・・そんなことを聞いてんじゃないすよ・・・!
自分の姿を見せず、
人の会話を盗み聞きするなんてどういう趣味をしてるんです!?
・・・それに今も・・・!
姉貴は礼儀にうるさかったはずだ!
人前でサングラスぐらい取ったらどうなんスか!!」
驚いたのは白鳥だ。
普段、大人しいはずのタケルが、
初対面の人間に向かってこれだけの態度を取るなんて・・・。
勿論、タケルの言い分はもっともだ、
白鳥自身は、そんな事をいえる立場ではないので、気分を害するほどのものではないのだが・・・。
一方サルペドンは、
タケルの怒気を含んだ言葉にきょとんとしていたようだが、
すぐに、クックック、と小さな笑い声をあげた。
「何がおかしいんだ!?」
「いや、ハハ、済まない、
・・・そうだな、君は何も知らないんだったな、
悪かったよ、
一つ一つ説明させてもらうよ・・・。」
「アンタは副官なんだろ!?
・・・だったらその態度は!!」
その瞬間、サルペドンはサングラスを取った・・・。
そこには・・・
「うっ・・・!?」
隻眼・・・
サルペドンの片目は醜く潰されていた・・・。
一体、どんな怪我を負えば、こんな痕に・・・?
「これが普段からサングラスをしている訳だ、
あんまり人様が見て、気持ちがいいものじゃないだろう?」
「あ、・・・ああ、それは・・・。
いったいどうして、そんな傷が・・・、戦争でも?」
「いずれ、話すさ、
今はどうでもいいことだ、
それからな、
マイクの件だが、別に盗聴してたつもりはない、
あそこはプライベートルームでもあるまい?
マリアに質問させたのも私の指示だ。
分ってると思うが、時間が惜しいのだよ。
これから戦争が始まるんだ・・・、
何を優先すべきなのか、
・・・まさか、その判断もつかないのか!?」
キレまくるタケル。
煽るサルペドン。
ヒャッハー?状態の白鳥さん。
なお、
初登場のサルペドンですが、
ギリシア神話では
神々によって三代分の寿命を与えられた人間だそうですが、
名前に関してはただの偶然です。
名前考えた後にその設定を知って、
ニヤリとしたものです。
ゼウスの子とwikiにありますが、
ポセイドンの子という説もあるようですね。
それと、片目のお爺さん設定は、
全ての物語で三人出てきたことになりますか。
もっともニコラ爺さんとサルペドンに繋がりは完全にありません。
もう一人は・・・どうなんでしょうかね?
サルペドン
「その前にそもそもオレは爺さんじゃないぞ?」