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緒沢タケル編4 スサ 騎士団最高責任者の死

 

とりあえず、

二人は白鳥家で食えるだけの食事を腹につめこんだ。

白鳥も、タケルほどではないが、

20歳そこいらの若者だ、まだいくらでも食える年頃である。

食器を下げ、お茶だけ残し、

白鳥はようやく今度の事件のあらましをタケルに伝える。


 「・・・まず、事件だが、

 発端はイギリスで起こった・・・。

 同時多発テロ・・・被害状況は・・・

 推定すら出来ない。

 各都市が破壊され、同時に軍のクーデターまでが発生する。」

 「クーデター!? イギリスで!?」

 「そうだ・・・これを見ろ。」

白鳥はビデオをつけた・・・。


 これは国会中継・・・? 

 いや、そこに日本人は映ってない・・・。

 どこかの外国?

 あ・・・イギリスか。


 「これは民放でも放送されたものを録画したから、そのうち字幕がはいる、

 場所は・・・イギリスの国会だ。」

 


 

 イギリスの国会!?

タケルは目を皿のようにして画面に食い入った・・・。

演説台に、熊をも思わせるような恰幅のいい軍人らしき男が映っている。

 「こいつは?」

 「・・・タケル、そいつが騎士団最高責任者、ウーサー・ペンドラゴンだ・・・!」

 「えっ!? こいつが!!」

画面の字幕には、もっともらしいウーサーの挨拶が映っている。

国民や女王へのお詫び・・・、そして。



 『これら一連の事件はこの私が命令したものであります!』


テロップには、信じられないような演説者の告白が流れた・・・!

騎士団の最高責任者が今度のテロ事件を!?

 「白鳥さん、・・・こ、これ!?」

と言いかけたタケルを白鳥が制する。

 「まだだ! タケル、画面から目を離すな!!」

 「え・・・!?」

 

 

ウーサーは、顔を真っ赤にしながら熱弁を振るう・・・。

そしてそれは、これまで人間が行ってきた過去の所業の告発・・・。

 大量殺戮や

 公害の垂れ流し・・・、

 動物種を絶滅させたり、環境破壊を繰り返したり・・・。


確かにそれは・・・あの時、

製薬研究所で日浦義純が主張していたものと合致する・・・。

では、やはり・・・。

そして、

画面に吸い込まれていたタケルの目は、

さらに信じられないものを目撃した・・・!

演説台にいたウーサーは、

突然、机の下から拳銃を取り出したのだ!

 「あ!」

あまりの出来事に、画面の中の議員達も誰も対応できない。

ウーサーは涙を流した後、

いとも簡単に、自分のこめかみに当てた銃の引き金を弾いてしまったのである。


・・・画面には、

議場に横たわる大柄な男の死体だけが映り、

議会はさらなる混乱で溢れかえっていた・・・。

白鳥はビデオを消す・・・。

 

 

この映像だけでタケルが全てを理解するのは不可能だ。

 「な? これって、

 騎士団の一番お偉いさんが自殺したってこと、ですよね!?

 な・・・なんで!?」

 「タケル、今の演説の中身を聞かなかったのか?

 言ってたろう?

 これから騎士団が犯す罪を、少しでもかぶろうってことなんだよ・・・

 実際、今ヨーロッパはとんでもないことになっている。

 ・・・この日本はまだいいほうさ、

 責任者は騎士団中『最も甘い男』と言われている日浦義純だからな・・・。」


話が飲み込みかけてきた・・・。

筋は通る・・・。

だが、タケルは日浦の人物・人柄を直接知っている。

彼がこんな大それた事をしでかす組織の一員だったなんて・・・。


 「信じらんねぇ・・・、

 騎士団とスサが仲良く出来れば・・・なんて言ってたくせに・・・。」


それこそ白鳥の方が信じられないようだ。

 「はぁ!? タケル、何寝ぼけた事言ってるんだ?

 あいつらは昔からそうなんだよ!

 てめぇ勝手な理想を掲げ、

 それに従わないものは『悪』だとレッテルを貼り続けてきたんだ、

 だからスサと対立してきたんだぞ!?」

 

 

タケルは、いくつかの疑問を白鳥にぶつけてみたかった。

だが、口元まで出掛かって、

なんとかそれを引っ込める事が出来た。

白鳥はスサの人間ではない・・・、

ならば彼に聞くことではない・・・。

タケルの心は既に別のものへと向かっている。

ただ、一つだけ、心の表層部に残した疑問・・・。

 姉・美香は・・・


スサと騎士団の対立は想像以上に根深いようだ・・・。

では・・・美香が日浦に抱いていた仄かな恋情・・・、

あの時、彼女は言った・・・。


 『今のままで十分なんだから・・・!』


なんてことだ・・・

ここまで組織同士が互いに不信感を持っていたならば、

美香の思いなんて、決して報われるわけなどないではないか・・・!

美香の両肩にかかっていた、スサ総代の重みは、

何も知らないタケルの想像の域を遥かに超えていたのだ・・・。

 

美香は、

スサのみんなを信頼している・・・とは言った。

だがそんな彼女の、プライベートな悩みまでも聞いてやれる者がいたなどとはとても思えない。

せめて・・・自分がもっと早く、美香の手助けをしてあげられたならば・・・。

今となっては・・・もう、全てが遅すぎる・・・。

 美香姉ぇ・・・!




・・・ふたりはそれぞれ床についた。

白鳥はここ、二、三日の疲れからすぐに眠ってしまう。

一方タケルは、入院中ずっとベッドの上で安静にしていたのと、

今まで悩み続けていたのがたたって、なかなか眠れない。

客間にあるテレビをつけてもいくつかの放送局は映るが、

ニュースは断片的だ。

恐らく、自家発電で賄えるギリギリの電力で、何とか放送を行っているのだろう、

電波状態も良好ではないため、雑音や画面のちらつきが目立つ。

 


 

この場で知らされたとしても、もうタケルも驚かないだろうが、

スカイツリーも破壊されているのだ。

それでも、画面の中のキャスターやレポーター達は、

健気に放送を続けている。


 「・・・たくましいなぁ・・・。」

タケルは本心からそう思う。

病院の職員や医師やナースもそうだった。

・・・自分たちや家族のことは心配ではないのだろうか?

いや、そんなことはあるはずもない・・・。

それでも、自分達の職務を全うしようとしているのだろう・・・。


タケルはテレビを消し、

再び布団の中にもぐった・・・。

明日はいよいよ・・・スサの本拠地に乗り込むのだ・・・!

 


次回、白鳥邸出発。

いよいよスサ本拠地へ。

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