緒沢タケル編4 スサ 白鳥邸にて
前回の流れから
白鳥さん
「お、オレも活躍できるのかな?」
うりぃ
「・・・名前は目立っとるんやけどなぁ、
特にキャラ立っとるわけでもないしぃ、
やっぱ、ヒャッハー路線で行くしかないんと違うかぁ?」
優一
「ただの引き立て役だよ。」
うりぃ
「なんであんたがこっちに来るん!?」
優一
「息子ともども世話になったからね。」
うりぃ&白鳥さん
「「ええっ!?」」
この辺りは、裏道を走ればそんなに不都合はない。
ナビなど既に役には立たないが、
慣れ親しんだ道・・・白鳥はタケルを乗せて車を走らせる。
「・・・いい子みたいだな、あの子・・・。」
ギャル系の女性は苦手な白
鳥だが、
その分、立派と思える言動には素直に感心している。
まあ、ギャップの効果だろうけども。
そしてタケルは元より今日子の性格を知っている。
・・・昔からあいつはそういう奴だ・・・。
「ええ、アイツは口が悪いだけですよ、
真面目に物事を考えるヤツです・・・。」
話のきっかけとしては丁度いいだろう・・・、
白鳥は、
二人っきりで真剣な話をするとしたら、この車中しかないと考えていた。
「それで・・・タケル・・・。」
「はい・・・?」
「おまえ・・・大丈夫・・・なのか?
カラダのことじゃない・・・
オレが何を言いたいか、・・・分るな?」
タケルはしばらく無言だった。
勿論、白鳥が何を聞きたいのかはわかっている。
ただ、自分の精神状態は、
落ち着いて考えてみても、まともな状態なのかどうか自信がない。
「姉貴のことは・・・
なるべく考えないようにしてるんです・・・。
家のこととか、昔の思い出とか・・・。
白鳥さんは・・・?」
「え? オレ?」
「姉貴の事、本気だったんですか・・・?」
「ちょ、ちょっと待て!
オレの事は・・・!
・・・ああ、勿論、悲しいよ!
知らせを聞いて泣いたよ!
でも・・・オレは美香と付き合ってたわけでもないし、
それこそここ何日かは、
スサとの連絡や報告でカラダを休めるヒマもなかったし・・・、
それに何よりも、一番つらいのは・・・
おまえだろう・・・て考えてたからな、
お前よりかは・・・。」
タケルが白鳥の精神状態を聞いたのは、
あくまで自分の参考程度に過ぎない。
白鳥の心情までも思いやる余裕などどこにもないのだ。
「・・・とりあえず、
誰かと一緒にいる時なら大丈夫っす・・・。
普通に会話してたりして、気を紛らわせていれば・・・。」
ホントに大丈夫なのかよ?
「タケル、
・・・つまり一人きりになると、
何しでかすか、わからなくなるってことか?」
「いやぁ、そんなすぐには・・・。
でも一度暴れだしたら、止まらなくなるかもしれません・・・。
今なら家の一つや二つ、
潰さないと気が治まらないぐらいですよ・・・。」
白鳥は、どう言葉を投げかけていいかわからなかった。
ただ、再び黙って運転を続けるしかない。
どうしたものか悩んでいると、
次はタケルが先に口を開いた。
「白鳥さん、途中でウチに寄ってくれませんか?」
「あ?
爆発で吹き飛んだおまえの家にか?
なにか探し物でもあるのか?」
「姉貴の形見が・・・。」
「何だって? ・・・あ、まさか!
わかった、すぐ行こう!」
そこにあったはずの、
大きい家は消えてしまっている。
替わりに青いシートが張られ、
「立ち入り禁止」の看板も見える。
車から降りたタケルは、コソコソしながら、
張られたロープをくぐって、かつての自分の家の庭に向かった。
気が弱い部分は変わらずだ、
隣近所にも迷惑をかけたことを気にしてるのだろう。
近隣住民にあわせる顔がない、ということらしい。
庭の隅にある物置き小屋にも、
破壊の跡や焦げ目がくっきり残っている。
だが、小屋そのものはしっかりと残っており、
扉は・・・うまく開かないが、
タケルも気にはしていない、
強引にこじあける。
白鳥が小屋の外で待っていると、
小汚いボロキレに包んだ何かを抱えてタケルが出てくる。
・・・その細長い形状は・・・。
「タケル、それ、まさかあの・・・?」
「天叢雲剣・・・、
姉貴はコレを使って、オレを助けてくれました・・・。」
「そいつは無事だったのか!?
それを使ったってことは・・・
ツルギの本当の力を発現させたってことだよな!?
さすが美香だ・・・、
資格があったって、そいつの能力を引き出すのは至難の技なのに・・・
あ、じゃあ紋章は?」
タケルは無言で包みの中に手を這わせる。
すぐにジャラリという鎖の音とともに、
無機質の金属が現われた・・・。
円形の真ん中に十字の浮き彫り・・・。
だが、十字の頭頂部はスペードマークのように変形している。
いや、
このカタチはスペードというよりも、男性のシンボル・・・?
とにもかくにも、白鳥は一度、胸を撫で下ろした。
これがあれば、事態がいい方向に進展するとでも言うのだろうか?
いや、それだけこの剣が、
スサやそれに関係する人間達の間で、
とても重要な存在であると言うことなのだろう。
「・・・よし、これで条件は整った、
後はタケル、・・・今日はゆっくり休もう、
明日、おまえをスサに連れて行く!」
・・・だが、はやる白鳥を他所に、
タケルの反応は薄い・・・。
「・・・どうした? 何か気になるのか?」
タケルは白鳥の顔を数秒見つめてから、ようやく口を開く。
「あの、白鳥さん、
病院でもテレビは見れなかったけど、
ラジオや噂である程度は聞いてますよ・・・。
いま、日本や外国で起きてること・・・。
大変な事になってるんですよね?」
「・・・そうだ! その通りだ! 」
「それは・・・
スサや騎士団が関係しているんですか?」
タケルの声は静かだ・・・、
だがその響きに、明確な警戒心と疑念の感情が込められている。
ようやく白鳥は気づいた、
タケルはまだ何も聞かされていないという事に。
そして・・・これは無理ない事なのだが、
白鳥は、騎士団幹部日浦義純とタケルに交流があったことを知らない。
故に、タケルが何を気にかけているのか、
白鳥が気づいたのは、
現時点では半分程度だったと言うしかない・・・。
「そうか、タケル、
・・・今度の事件はいきなりだったもんな、
詳しくはスサに着いて、そこの責任者に説明してもらうのが筋だと思ってたんだが、
オレの口から説明できることだけ・・・今、言おうか?」
「ええ、お願いします・・・
できれば場所を変えて・・・。」
「ああ、そうだな。」
タケルが気にしたのは近所の目だけではない。
ついこないだまで住んでたこの家の・・・、
美香との思い出がつまったこの場所で、
「恐らく怒りに打ち震える事になるだろう」衝撃的な話を聞きたくなかったのだ。
それこそ、自分の感情を抑えきれる自信がない・・・。
タケルがそう考えたのも無理はないだろう。
さて、車は白鳥家に到着した。
白鳥家も、
緒沢家に負けず劣らずの旧家だ。
けれど、しっかり時代に合わせるところは合わせていて、
ソーラー発電で、ある程度の電力は賄える。
庭には古井戸もある。
質素な生活をする分には困らない。
街のインフラが破壊されていたとしても・・・。
白鳥
「そういえば、よくこんなとこに隠せたな?」
タケル
「救助のドサクサに紛れて・・・」