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緒沢タケル編3 永遠の別れ 美香の願い

 

さっきの青白い光や、

天井を吹き飛ばした電撃のようなものの正体など、今はどうでもいい、

まずはここから・・・


 「美香姉ぇ・・・?」


既に美香の腕には力が入っていない。

その剣も、

彼女の右腕からはこぼれている・・・。


 「おい! 美香姉ぇっ!?」

美香のぐったりした顔がそこにある・・・。

その顔は微笑んでいるかのようにも見えるのだが・・・。


 「・・・うまく、いった・・・?」

 「ああ! 良かった!!

 なんだかわかんねーけど、すげーよっ!!」

 「これが・・・スサが代々伝える、神剣アマノ・・・ムラクモの力よ・・・、

 この剣を持てるのは・・・

 私の首にかかっている『紋章』を身につけれるものだけ・・・。」


まずは危機的な状況を脱したことを喜びたいが、

姉の容体に関しては一刻の猶予もない。

 「美香姉ぇ、い、今は・・・いいよ、

 病院行ったらさ、ちゃんと聞くよ・・・だから・・・。」


先ほどの不思議な奇跡の興奮から、

タケルは再び残酷な現実に引き戻された・・・。

心臓の鼓動が早くなる・・・。


 「もう・・・いいの

 これで・・・あなたには 全て・・・。」

 「まぁっ・・・待てよ!

 何がすべてだよ!?」

 


タケルにも分る・・・、

美香の体からどんどん生気が抜けていくのが・・・。

改めて床を見ると・・・


これは全て美香の血だ・・・。

今も、傷口から・・・

先ほど剣を振り上げた時にムリをしたのだろう、

広がった傷口からどんどん、血があふれ出てくる・・・。

美香の手を・・・

指先を握り締めても反応がない。


ついにタケルの目から熱いものがこぼれ始めた・・・。

 「・・・やめろよ! 冗談やめろよっ!

 オレ、せっかく姉ちゃんの手伝いするって決めたんだぜ!?

 子供の頃からさ、

 姉ちゃんオレのことばっかりで苦労してただろ!?

 だからこれからはさ!

 日浦さんでも誰でもいいから好きな人と一緒になって・・・姉ちゃんっ!?」

 

 

もはや興奮しまくったタケルは、子供の頃そうであったように、

幼い頃の姉への呼び方に戻っていた。

いや、もう、そんな事はどうでもいい。


既に美香の顔に変化はない・・・。

だが、弱々しくも彼女は腕を上げ、

タケルの頬に触れる・・・。

その指がタケルの涙で濡れた・・・。

 「ふふ、泣き虫・・・なおんないね・・・。」


 「そ、そんなこと・・・姉ちゃんが・・・姉ちゃんが・・・。」

タケルは姉の腕を掴むが、もうこれ以上その腕は動かない。


 「・・・聞いて、最後に・・・

 タケル・・・あの人たちを 止めて・・・。

 人間は罪深い存在 かも しれないけど・・・、

 絶望してはダメ・・・

 あなたも・・・彼らも・・・『希望』を・・・

 それこそが・・・

 人間に与えられた 最大の 贈り物 だから・・・。」

 「いーよッ、そんなことぉ!

 頼むから・・・頼むから最後なんて言うなよぉっ!!」

 

そこで美香は、ニコリと笑った・・・気がした。

 

 「 タケル・・・そして あなた が

 私にとって の

 一番の 

 ・・・希望 ・・・ 」


 「姉ちゃんっ お願いだよ!

 オ オレを一人ぼっちにしないでくれよぉ!!

 いっつも二人でやってきただろっ!?

 二人で爺ちゃんの部屋、三日がかりで掃除したよなっ!

 お葬式もてんてこ舞いで・・・

 あはっ、オレが一人で慌ててたんだけどさっ?

 短大の入学式、オレ・・・

 オレついてって、一人だけ浮いてたよな!?

 なぁっ、姉ちゃんっ! 姉ちゃんってばよぉ・・・っ!!

 やだっ やだぁッ・・・!!」



・・・だが、

もう美香に反応はない・・・。

目元は薄く開いてはいるが、瞳孔にも変化はない・・・。

ただ、満足そうに穏やかな笑顔で

美香は・・・永遠の眠りに

つく・・・。

 



 いやだ・・・! 

 いやだ!!

 こんなの・・・こんなの嘘だ!

 全部幻だ!!

 誰か・・・誰か嘘だって・・・



心臓の音はもう聞こえない・・・

まだカラダは暖かいのに。


 どうして?

 なんでオレなんかをかばったんだよ?


 「うぁあああああ、ねえちぁん・・・!

 ねえちゃんっ!

 ちっくしょぉぉぉうっ!

 うあああああああっ・・・

 いやだ・・・いやだよ・・・!

 ねぇぇちゃぁぁぁあああんっ・・・!!」

 



 

野獣の咆哮にも似た叫び声が、

夜の星空に吸い込まれていく・・・。

タケルの服やカラダは、

美香の血と、自分の涙で熱く濡れている・・・。

彼はこの現実を受け入れる事ができず、

いつまでも、・・・いつまでもそのまま、

姉・美香のカラダを抱きしめたまま、

崩壊した緒沢家の瓦礫の中で、

たった一人、うずくまるだけだった・・・。




 「お、おい、地震だ!

 危ない、あの家に近寄るな!」

 「また・・・また地震だよ!?」


このところ頻発する地震が、

またもや、この夜に町を揺らす。

それは、まるでタケルの溢れる感情にあわせたかのような・・・。

しかし、当のタケルにはそんなことはどうでも良かった。

仮に地震で再び、瓦礫に埋もれてしまったとしても、

全てを失った彼には・・・

もはや自分の命すらどうでもよかったのだ・・・。


今は・・・もう・・・。

 


こうして、

タケルは天涯孤独の身の上となりました。

次の章では、

いよいよ秘密結社スサの実態が明らかになります。

天叢雲剣については、以降タケル編では常に使用される戦闘アイテムですが、

シリス編、フラア編では出現しません。

いつの間にか失われてしまったのかもしれませんね。


その代わり、美香から受け継いだ「紋章」が、

その後の世界でも運用されます。

フラア編のランディが身に着けているのがその「紋章」です。

タケルの時代では「無」属性ですが、

天叢雲剣と併用するうちに、「雷」の属性を帯びてゆきます。

また、次の章では同じくランディが纏うことになる「ルドラの鎧」も登場します。


だんだんシリス編やフラア編との繋がり、見えてきましたかね?

まだまだこれからですか?

次章はまだ騎士団との戦闘には突入しませんので、

お気軽に読み飛ばs・・・いえいえ、お読みくださいませ。


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