緒沢タケル編3 永遠の別れ タケル見抜く!
それから数日も過ぎただろうか?
平和な日々が続いていた。
つい先日、
外国人のチンピラ達に襲われた事とかも忘れかけていたし、
製薬工場で暴れまわった事も、過ぎた日の記憶になりかけていた。
相変わらずタケルのバイトも決まってないし、
スサで何か動きがあったということもない。
来週には、スサ毎月定例の集会があるという事なので、
少なくとも美香は、また一日外出する事にはなるだろう。
そんなある日の晩、
たまたま、タケルはスサの集会の日の話題が出た時に、
調査・・・いや、諜報活動も得意な日浦の事も思い出していた。
「ああ、そうだ、美香姉ぇ?
スサの毎月の集会って極秘なんだろ?」
「え? ん~、極秘っていうか、
集会そのものは、会場に名前入りで案内板出してるからねぇ?
もちろん部外者お断りだから、内容が他人に知られることはないわよ?」
「オレは今までてっきり、
お祈りとか儀式みたいなのを想像してたけど、
会議みたいな事もやるの?」
「あら? もしかしてタケルも興味出てきた?
タケルのことも来週の集まりで、
議題に加えようかとも思ってたから丁度いいわね?」
「うぇ・・・それは・・・その。」
「まぁ取って食われるわけじゃないから落ち着きなさい、
それで、お祈りとか儀式みたいな事はやらないわ。
あなたの言うとおり、発表や会議が中心よ。」
「イメージ的には秘密組織に近いんだよな・・・、
他に漏れるとヤバイ事なんかもあるの?」
「・・・あるわよ。
別に私たちが犯罪を犯しているわけじゃないけどね・・・。」
美香の目が厳しくなってきた。
タケルは何を言いたいのだ?
「じゃあさ、例えばこう、盗聴器とか仕掛けられたり、
隠しカメラとかなんて仕掛けられたりとかってないの?」
「・・・会場全体のセキュリティーは完璧に張り巡らされているわ。
言っておくけど・・・スサの科学技術はあなたの想像以上よ、
それより何を気にしているの?」
美香の反撃タイムである。
「あ、いや、こないだの探偵さんみたいな人がいるくらいだから、
いろいろ調べられたりする事はないのかなぁ、と、単純に思っただけ。」
「その心配はないわ、
誰かさんがペラペラ喋ったりしなければ、外部には漏れないわよ?」
ジト目で返す美香。
「まぁるでオレが口軽いみたいだな!?
・・・大丈夫だよ、しゃべんないよ。」
「それに日浦さんは今、海外にいるはずよ、
あの人の団体以外に、
私たちの存在を知ってる人間なんて、皆無に等しいだろうしね・・・。」
「え? 日浦さん旅行にでも行ってるの?」
「騎士団本部よ、
緊急で召集がかかったらしいわ・・・。
内容までは当然、私達には分らないけど・・・。」
「本部ってどこにあるんだ?」
「イギリス・・・、
彼らの最高責任者は軍の中枢に就いてる人物だからね、
メンバーも貴族やら格式高い人間で構成されてるわ。」
「へっぇえ?
・・・てかそれよりも・・・、
美香姉ぇ、そんな事も連絡しあえるんだ?」
「・・・たまたまね、情報交換する時もあるの・・・!」
おっと・・・この雲行きは・・・。
めずらしく美香の目が泳いでいる。
まんざらタケルの勘もバカにできたもんじゃない。
「ほー? そーだったんだー(棒読み)。」
「あ、あなたねぇ、何か変な事想像してない!?」
「いーえー、
とーんーでーもーなーいーでーすー、うわっ!!」
タケルにスリッパが投げられた。
スピードが乗ったナイスな一撃だ。
「なにすんだよ!
女がそんな下品なマネすんなよ!」
「うるさいの!
あなたこそ、そういうのを下種の勘ぐりというのよ!」
「いいじゃあん?
別に嫌いな人ってわけじゃねーんだろ?
美香姉ぇだって女なんだから、
男の一人や二人ぐらい、いたって大騒ぎする事もないだろう?」
そしてそれはタケルの本音である。
姉が品行方正なのは結構だが、
それよりも、普通の女の子同様の人生も歩んで欲しい。
緒沢家の伝統やらのせいで、みすみす青春を浪費させたくもない。
「それとこれとは話が別!
タケル、そういうあなただって彼女がいるわけでもないんでしょ!?
今日子ちゃんはあなたの彼女!?」
うわ、やぶへびだ!
「・・・え、いや、
あれは腐れ縁で、別に彼女とかそーゆー・・・。」
「だったら、人のこともほっときなさい!?」
「いや、悪かったよ、別にからかうつもりじゃなくて、
純粋に姉の幸せを願う弟としての・・・。」
美香の口から溜め息が出る。
「よくもまぁ白々しいことを・・・。」
だがそれはタケルが常日頃から考えている事である。
この機会に伝えておくべきだとタケルは思った。
「いや、本気でさ・・・!
美香姉ぇは、オレにスサの重荷を背負うの手伝って、って言っただろう?
だったらさ、
軽くなった分、自分の羽のばしゃあいいじゃん?」
「あのね? 私はそんなつもりで言ったんじゃないのよ?」
「わかってるよ、でもいーじゃん!?
美香姉ぇは自分で自分を雁字搦めにすんなよ、
勿論、誰と付き合うかは美香姉ぇの自由だけどさ。
みすみす女としての自分の幸せを手放すこともないだろ?」
「タケル、気持ちはありがたいけど、
今のところ、そんなつもりは全くないから・・・!」
「もったいねぇなぁ、でも相手としては不満ないんだろ?」
「まぁた・・・!
年が離れてるし、向こうの都合も考えなさいよ?
だいたい、お互いの立場ってものがあるでしょ・・・!」
「ほー? やっぱり不満なさそうじゃん。
・・・年だって、美香姉ぇも二十歳過ぎればたいした障害にはならねぇぜ?
後は、・・・立場か・・・。」
「いーかげんにするの!
そんな話、絶対に日浦さんにしちゃダメよ!
・・・今のままで十分なんだからっ・・・(あ!)」
タケル
「あ、これは決まりですわ。」
美香
「な・な・な何のことだかさ・さ・さっぱりかしらっ!?」