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緒沢タケル編2 タケルと愚者の騎士 交戦

ぶっくまありがとんです!!

 

 ダダッ!


まさにあっという間の出来事だ。

タケルがポカンと口を開けて立ち尽くしている内に、

日浦は壁を駆け登り、気がついたときには、

もう壁の向こう側に消えてしまったのだ。

タケルは次の自分の行動を決断できない。

まごまごしていると、壁の上から先ほどのロープが投げられた。

早く来いということだろう、確かに迷ってる暇はない。

夜中とはいえ 近隣の住民が通りかかる事だってあるのだ。


 ええいっ、しょーがねぇっ!!

すぐにタケルはロープを掴み、

たった今、日浦が駆け登ったように壁を蹴り上げる。

難しいことはない、あとは塀を越えて、

 (そういや、3メートルの高さだったか・・・!)

落下に伴う強烈な向かい風がタケルを歓迎する。

  ドガァァッ!!


 「・・・っってぇぇぇ~っ!」

 


足がじんじん痺れている、

タケルの巨体が3メートルの高さから落下したのだ。

その衝撃はハンパないはず。

日浦が心配そうに寄って来る。

 「おいおい、だいじょうかい?

 落下する前にロープを掴んだ腕で一度、体重を支えるんだよ、

 ・・・て、もう遅いか。」

 「おーそーいーっすよー・・・、あーいてて・・・。」

 「骨とかは異常は・・・?」

 「あー、それは大丈夫っす、この程度!」


タケルは足首や膝を屈伸させてカラダを確かめる。

・・・カラダの頑丈さも並みではない。

本人はそれほど自覚しているわけではないのだが・・・。

一方、日浦はタケルのカラダを確認した後、建物の内部へと意識を向けた。


 「それじゃあ、タケル君・・・、さっきも言ったが、

 セキュリティシステムの一部は外部から操作が可能になっているんだが、

 監視カメラ、ドアロック、一部のセンサーは全く干渉できない。

 第一、そのセキュリティは常に監視員にチェックされている。

 ・・・だから先に監視員から片付ける。」

  

 「でも、監視カメラとかビデオ記録が残ったら?」

 「残ってもいいんだ、

 でもサングラス位はかけときなよ?

 さっきも言ったが、

 証拠を世間に晒せば、やつらはこの日本で非合法の活動は二度とできなくなる。

 犯人探しなんてやってる余裕はなくなるよ、

 僕らもそれで仕事はお終いだ、

 この件には二度と関わらない。

 ・・・不安なら警察に押収されるであろう、証拠となる僕らの記録だけ消滅させとくよ。」

 「そんなことできるんですか!?」

 「内緒だよ。」


日浦はちょっと笑って壁に沿って歩き始める。

研究施設の庭は、眩しい照明に照らされている。

確かに、庭の真ん中を突っ切って行ったら目立つだろう。

改めて敷地への入り口を見ると、

レールのついた物々しい扉と監視所がある。

中には監視員がいるのだろうが、

一度敷地の中に入ってしまえば、

そうそう注意をこちらに向けることはあるまい。

 


 

敷地には大きな工場と、いくつかの小さな建物、

そしてこじんまりしているが、

中央に、最も新しく建てられたと思われる三階建ての建物がある。

日浦の視線はそこに向けられている。

 「あれが研究棟だよ。」

 「監視員はあそこにもいるんですか?」

 「ああ、建物の入り口に、

 従業員の出入りをチェックする詰め所、

 その後ろに中央監視室、

 間取りは分っているんだが、目的のものがどこにあるかが・・・。」

 「監視員は何人ぐらいなんすか?

 さっき片付けるって・・・?」

 「さて?」

 「・・・さてって!?」

そう言いながら、日浦は研究棟の入り口に真っ直ぐ歩いていく。

 正面突破はしないんじゃ・・・!?


入り口には、

カードキーと暗証番号を入力する操作パネルがある。

日浦は何の躊躇いもせず、

懐から出したカードを通し、暗証番号を入力している。

偽造カードか、どこからか入手したのか?

騎士団の技術や諜報力は果たしてどれほどのものなのだろう?

 


 「タケル君、すぐ警備員がでてくるはずだ、気を張っておけよ?」

 えっ・・・。


建物の中は薄暗いが、所々電気がついている。

入ってすぐ右手に、明るいガラス張りの部屋があるようだ。

案の定、日浦が言ったとおり、中には制服姿の警備員がいた。

日浦達の姿を確認すると、

すぐさま、怪訝そうな顔をして警備員が出てきた。

いくらセキュリティーカードで入館したとはいえ、

何の事前連絡もなく、見たこともない人間が入ってきたら誰だって警戒するだろう。

 「あ、あの、ナンですか、あなた方!?」

タケルは戦闘態勢をとるべきかと思ったが、日浦が落ち着いている。

 何か策でも・・・!?


日浦はにっこり笑って胸から何かを取り出した。

 「夜分にすいません、僕らはこういうものです。」

と言いつつ、突然胸元から白いスプレーが噴出!

 「うっ! きさ・・・ 」

あっという間に警備員の体が床に沈みこんだ・・・。

クロロホルムとかその手の類か・・・?

  

 「タケル君、彼のカラダを部屋の中に入れてくれないか?

 ああ、そうだ、

 一応マスターキーもらっておこうか、

 肝心の部屋には役には立たないかもしれないけ・・・。」

   バタン!!

突然、奥の部屋から屈強なガードマンが出てきた。

手には警棒が握られている。

 「さっ、行くぞ! タケル君!!」


言うが早いか日浦のカラダが風のように疾走する。

さすがに反応が速い。

警備員のカラダと交差したかと思うと、

当身でも入れたのか、あっという間に警備員は崩れ落ちる。

だが相手は一人ではない、奥の部屋は三人体制だったようだ。

ターゲットは残り二人・・・!

日浦が目でタケルを促すと、タケルもぼーっとはしていられない。

 もう覚悟を決めるか・・・!


仲間が、あっという間に気絶させられたシーンを間近で見た他のガードマンの顔には、

既に怯えの色がありありと見える。

・・・しかもその後ろからは、

獣のような巨体のタケルが突っ込んでくるのだ。

第三者が見れば誰もがこの警備員に同情を禁じえまい。 


 

一人の警備員はヤケ気味にタケルに向かい、もう一人は部屋にUターンする。

警報装置を鳴らすつもりなのだろうか?

もちろん、そんなマネは日浦が許さない。

警備員が操作盤の前に立つか立たないか、

その寸でのところで、背後から日浦の手が伸びて・・・

 ぷしゅう~

・・・またもや先ほどのスプレーガスを浴びせてしまう。


可哀想なのはタケルに向かった警備員だ。

狭い部屋では武器を持っていようと、その攻撃の軌道は限られる。

大声をあげて振りかぶった警備員の攻撃も、

タケルがそれをかわすのは何の造作もない。

難なく相手の腕を捌き、

がら空きのわき腹にタケル得意の八極拳頂心肘!

片手で敵の腕を跳ね上げ、同時にカラダを相手の懐に沈みこませ、

残る片手の肘で目の前の標的のボディをえぐる・・・。

その三つの動作は全て同時に行うために、相手がそれを防ぐ術はない!



・・・一撃で相手はのた打ち回る・・・。

日浦が様子を見に戻ったが、

タケルのあまりの容赦のなさに驚いたようだ。

タケルもその日浦の反応は見て取れたので、急いで言い訳する。

 「あ、あ、だっていきなり襲い掛かられてオレもびびってるんすよ!

 手加減する余裕もなかったし・・・!」

そうは言うが、一応これでもタケルは手加減している。

単に手加減の度合いが足りなかっただけだ。

彼が本気でこの技を使えば、間違いなく内臓破裂で相手は死に至る。

 

とりあえず、日浦はスプレーを浴びせて男を気絶させた。

別にタケルをなじるつもりもない、

ただ、驚くのみだ・・・。

 (やはり彼も天賦の才を持っているようだ、

 これで、プロの戦闘経験を積ませたらどんな戦士になるんだろうか・・・?)


騎士団の中でも異色の才を放つ、「愚者の騎士」と呼ばれた日浦義純・・・。

彼の思考パターンは、

他の平均的な騎士からすれば常識外と思われるような事が多い。

そのことは、その実力は買われていても、

本部から距離を置いた、こんな極東の島国に派遣された事からも窺える。

だが、時として日浦義純の判断は、本部で下されるものよりも、

正当であったり、有益である事もしばしばある。

ゆえに騎士団内での彼の地位は、

高くはないけれども、誰もが彼の存在価値を認めている。

組織においては彼のような存在も必要という事だろう。

日浦もそれでいいと思っている。


・・・だが、その彼ですら、

いや、

人間らしい誰からも好感の持てる性格だからこそか・・・、

いつの間にか判断を誤り、

悲劇の幕を開ける事になる・・・。

まだこの段階では、誰も予想できない事ではあるのだが。

 

 

次回建物の地下へ・・・。

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